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異端狩り  作者: 六道 奈々 落々
2/3

——Entrance ceremony——

 プロローグ終わったんで主人公視点でスタート。

何卒よろしくお願いします。何せ久しぶりの女性主人公ですので、語り手が……。


 私の名前は焔斑朱里。

今年で十四歳だ。去年は受験に落ちたので、落第生が一年後に入れるという滑り止め校でありながら異端との最前線を常に保つ七学年制の学園。

 そういえば、なんで落第したんだっけ? まず、中学って落第しないはずなんだけどな……。

目測を誤ったんだっけ? どうでもいいけど。もう学園に行くことになったから。


 落第生を誰彼構わず受け入れるこの学園だが、条件が一つある。

それが異端との戦闘が可能か否かだ。これだけか、と思ったので私はこの学園に来た。


 一般人でも入れるが、私のような異能力者たちなら無条件入学にも等しい。

私は能力を持っている。といってもランク5程度の、この学園で最底辺能力だ。


 身体強化、応用・発展に至らなければ使い道がほとんどない、この学園で私一人かもしれない能力。


 そんな私は現在、入学式のパレードを見ている。

パレード、というか、先輩の入場だ。私たちが後だからか、先輩の後ろ姿を見ることになるらしい。無論、先輩からは見えないようになっているのだが……。


 新入生を除いても六学年。待ち時間が長すぎる。一学年で百を超える人数。六学年なのだから、その6倍、六百人の入場、二列並びだから、三百回のリピート。


 所要時間は二十分ごえ。その末に私たちが入場するのだから、三十分近くだと思う。

その時間をなんとか乗り越え、入場する。


 レッドカーペットを通って座席、椅子へと向かう。

座席は成績順、後ろから成績優良、そして最前列の人は成績底辺、すなわち私だ。晒し者、と思えるが、先輩の中でも同じ人は何人もいる。しかし、私はその中で身体強化、それだけしか持たない、大器晩成型かどうかも怪しい能力者。身分違いがどーだとか言われたら反論のしようもない。悲しい新入生。


 後ろの生徒からはあんな風にはならない、という視線を向けられてレッドカーペットを通るのだ。

屈辱であり、今の私にお似合いだろう。


 本来なら余裕で合格するはずだった学校全てにおいて落第し、この学園に逃げ込んだ、私。

そんな余り物な私は、こうなるのが正しいのだから……。


 剣一本と魔術だけが武器な私の武器なのだ。

しかし、門、ゲートが開いていなければ人は魔術を扱えない。対人戦において、私は剣一本だけなのだ。


 身体強化の密度が上昇すればもっと強くなれるだろうし、それこそ身体強化の密度が上昇すると、一緒に身体の成長限界も強化され、無限と強化される。

それだけがこの能力を一般的に使った際、唯一の良い点だ。裏を返せば、これ以外、何もない、ということだ。


 応用には便利でも、そこまで行き着くことのできる人自体少ない。時間を気にせず永遠と鍛え続けられる、そんな空間がない限りはほぼ何もできないのだ。

私は最弱だ。だから仕方がない。そう自分に言い聞かせる毎日。そうしなければ心は折れ、精神は死んで、自死へと手を伸ばしていただろう。


 レッドカーペットを通って椅子に着くまでの間、ずっと、自分に言い聞かせていた。

少し目が痛い。毎度これだが、もうその痛みも少ない、小さくなってきた。慣れてきたのかもしれない。


 座って、プログラムの書かれた紙を見ていた。

ずっとボーッとしていたのか、気がつけば『校長及び卒業生の代表挨拶』という項目に変わっていた。番号が六個ほど変わっている。どれだけの間、ボケッとしていたのだろうか、そんな疑問を抱いて、捨てて、私はステージの壇上で台を整理していたらしい人が帰っていったのを確認した。


 そして、あとは一瞬であった。


 壇上に突如、二人の男女が現れた。


 片方はゴシックロリータを纏った傲慢で見下すような態度の少女、そして、もう一人は、白髪灼眼の飄々とした好青年。


 服装からして、あの少女が学園長なのだろう。

青年は私たちや先輩たちが着る制服と似通った服装をしている。それが卒業生の服装なのかもしれない。


 この学園では卒業生も在学扱いとなる。つまり、卒業しても生徒となれるのだ。

無論、授業はないし、入れる部活も少ない。一部のことしかできない代わりに、在学できる、いや、させられているのだ。ここは腐っても異端との最前線。一部の卒業生は残留しないようだが、基本的にの凝らされるのだ。


 事情もなく残留組から抜けることはできない。

他の最前線基地に行ったり迷宮攻略組に入ったりといった事情ならば簡単に抜けられるが、危険度はさして変わらない。変わったとしても、それは危険が増しただけだ。安全面ではここに残るのが最もいいのだ。


 それぐらいはバカな私でも少し考えればわかる。


 その残留組が卒業生。


 ()()()()()()()ことを知るまでは、誰も彼も同じだと思っていた。


 目の前の卒業生は明らかにレベルが違う。それこそ学園長と同じレベルで……。


 学園長が何歳かは知らないが、低確率で10代、高確率で20代後半以上。最低でも十五年は修行を積んでいるはずだ。

それに対し、卒業生はそれすらも薄っぺらく見えるほどの歴年程度では表せない何かを感じられる。


 恐怖。


 何年も前に、異端の存在に襲われたアレの何千倍という恐怖を、感じていた。

怖くて、恐ろしくて、息が詰まる。


 そう、私は呼吸を忘れるほど、目を輝かせて、彼を眺めていた。

まるで、自分の憧れを見つけたように……。絶望の中に混じった希望を見つけたように……。


 そんな私を置き去りに、幼い外見のゴスロリ学園長が口を開く。


「やあ諸君、私が学園長だ。名前は教えるつもりはない。知りたくば横のコイツと同レベルにまで成り上がるんだな。まあ、お前らでは絶対に無理だろうがな。去年と比べても質が悪い。歴代最弱なのではないかね? そんなお前らが、コイツと同レベルに至るなんて夢物語以外の何ものでもないさ。努力しても無理だろう。おっと、例外は除せてもらうよ。生憎、隠された才能を見抜く力なんてないものでね」


 開口一番に長々とした訳ではないが、誰もがイラッとくる言葉。

新入生を一瞥しただけで、無能だと決めつけたのだ。そして、覆すのは不可能だ、と言い切ったのだ。静かに殺意を抱く者、立ち上がる者、何も感じない者。三者に分かれた。


 私の直感では、試されていたのだろう。立ち上がった者を見る目だけは、確実に失望していた。

いや、可能性もみてはいるのだろうが、それでも失望の念を抱いていたのは間違いない。その者たちへの評価は一概に、彼我の実力差も見抜けぬ雑魚。


 それ以外の者たちには多少はマシな目を向けていた。


「さて、私がお前たちに告げられるのは一つだけだ」


 殺意を真っ向から受けながら、学園長は言った。


「——好きにやって好きに死ね——」


 本当にそれだけ言うと、学園長は背中に向けられる殺意もそっちのけで、卒業生と場所を変わる。


 学園長とチェンジした卒業生に、立ち上がっていた者たちも椅子に座った。

さすがに次元の違いを悟ったのだろう。事実、私も一、二メートル距離が変わっただけで、倍以上の圧力を感じている。まともに近づいたらどうなるかなんて分からないし、分かりたくもない。


 卒業生は渋々といった様子で壇上に上がり、パチン、と指を弾いた。


 電灯が全て落ちる。

そして戻る。正確には、視覚が戻る。


 そこには先ほどまでとは全く違う場所、というか、教室であった。

そこには、私以外、誰もいなかった。


「ハイハイどうもどうも、卒業八年生、死導司ですよ。君たちにはこの空間で仮想とはいえ、最終試験を受けてもらいます。制限時間は無限。それじゃ、スタート。あ、敵はランダムに出るからね。運も実力のうちだよ」


 その言葉が聞こえた時、私の前には



 純白のローブを身につけた、闇と光を纏う説明不明の庭師のような存在が、異端がいた。

 最初から死にそうな主人公。

全体的に運の悪いタイプか、それとも一度で悪方向の運を消費し切るタイプか、どっちでしょうかね?

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