モチ
モチが食べたいです。
ヤバいヤバい。
ファンが怒った。
自分がエルフになりたいなんて、特殊な願望の持ち主が面白くて、ついついファンのことをアレコレ言いすぎた。
クウリとは、店を出ると同時に別れた。
散々仲良く喋っていたが、クウリとは店の中だけでの仲だ。
外に出れば、もう親しくは出来ない。
そうせざるを得ない事情がある。
クウリは、泣く子も黙る第一騎士団の団長。
対するこのモチ様は、繊細で頭脳明晰な第一魔術師団の団長。
この二人が仲が良いと思われる訳にはいかないのだ。
常に敵対しながら、お互いに切磋琢磨し、更なる向上を目指す立場にある騎士団と魔術師団。
会議などでは、他の者の目もあるから、やり合わなくてはいけない。
先日も、他国からの侵略について、バチバチと火花を散らしたばかりだ。
まるで、秘密の恋人同士のように、互いに視線でやり取りしながら、周りには敵対していると思わせる。
「ふんっ騎士団というものは、本当に脳みそが無いなぁ、お前たちもそう思うだろ?」
「魔術師なんてのは、根暗がやることだから、戦術も暗くてチマチマしてて、つまらんわ。付き合っておれん」
本当はお互い、そんなこと思ってないが、これも仕事のうち。
互いの団員は、相手を見返すような成果を必ず上げてやろう!と意気込むから。
必要悪だな。
クウリを見遣りながら、今日もファンの店へ行くぞ、とさり気なく合図する。
勿論、の合図が返ってきた。
あんまり食べすぎなければ太らないらしいですね。モチ。