オーク
モチ食べたいです。
今日の夕方からの開店に合わせて最初に来店したのは、オークのモチ。
身体はデカくて、声もデカい。
繊細さの欠片も無いが、ほんとは良い奴。
「だぁーーっはっはっはぁっ!!!」
フードを脱いでエールを飲みながら、テーブルをダンダン叩いて大笑いしている。
木製だから、モチの力が強すぎて、テーブルがたわんでる。
「あの時のお前の顔!いやー、最っ高だったわー!」
モチが言ってるのは、連れてきたエルフが俺の顔を見て逃げて行った件だ。
エルフを連れてきた常連客ってのが、このモチ。
「だから、俺はヤダったのに」
料理を作りながらモチを睨む。
これだけで、普通の奴は逃げ出すが、モチは気にも止めない。
「お前が、ずっとエルフが好きだって言うから、親友としては願いを叶えてやりたくなるだろーが?」
笑いすぎた涙を拭きながら、ヒーヒー言いながら俺の料理を食べる。
今日の最初のメニューは『ミヤ豚の香草蒸しムロベリー添え』
柔らかく淡白なミヤ豚を3種類の香草で蒸して、ふんわり柔らかく、そして香り付け。
ムロベリーは、わしゃわしゃした赤い葉っぱで見た目はかわいくないが、味は最高。
甘酸っぱさの中に流れる香り高さ。
これをトロトロに煮込んでソースにしたものをミヤ豚に添えれば、見た目も鮮やかな一皿が出来上がる。
「んー!こりゃーいいな。全く、お前はそんな見た目で、よくこんなモンが作れるなー」
感心しながら、パクパク食べてはエールをごくごく飲み干す。
「っぷはぁーーーっ!!美味い!あ、あれ作ってくれよ。この前の串焼き」
俺は、もう用意していたものを、再び火で炙る。
「だからさ、何度も言ってるだろ。俺はエルフと付き合いたい訳じゃないって」
ブフローの串焼きに、ピリッと辛い香辛料をかけて、酸味の強いカラーの実を添える。
「それねー、いまいち良くわかんねぇんだわ。エルフを抱きたいなら分かるけど、自分がエルフになりたいってなぁ」
カラーの果汁をかけたブフローの串焼きにかじりつきながら、俺を見る。
そして
「ぶっふふっあっははっはーっ!無理だろー!どう考えても!オーガのゴリゴリ筋肉ダルマのお前がっ!よりによってーーーー」
ダアンッ!!
新しいエールをモチの前に思い切り強く置いてやる。
中身が零れるのも、ご愛嬌だ。
「黙って飲め」
くっくっくっと笑ってはいるが、ようやく少し黙った。
しかし、タイミングが悪かった。
ムロベリー。
ムロ〇ヨシベリー。