店員
エルフも、好きです。
「ファンさーん!この皿、どうしますーっ?」
唯一の店員、ゴブリンのケニーが俺を呼んでいる。
「あー、それはこっちに置いてくれ。新作の試作に使うから」
常連客はいるけれど、新規の客層も開拓したい。
「今度の新作はなんですか?ファンさんの料理はどれも美味しいから楽しみだなー!」
にこにこと俺に笑いかけてくるケニー。
良い奴なんだが、なんというか、その、、、
「華が無いよな、、、」
思わず呟いていた。
「え?花?そこら辺に咲いてるの取ってきますよー?」
素直で良い奴なんだけど、男でゴブリンだからな。
この店に来るのは、更にむさ苦しい奴らばっかりだし。
「華、一番無いのは俺かー、、、」
ピカピカに磨いたシンクに映る自分を見る。
どう見てもオーガ。
しかも、かなりゴツめの。
「どうせ生まれるならエルフが良かったな、、、」
しかも女の。
先日、珍しくエルフがこの店に来たんだ。
常連客が、気を利かせて連れてきてくれた。
俺がエルフ好きだから。
だけど、、、
「ひっ」
俺の顔を見たら青ざめて、そのままくるっと扉に引き返して、走り去って行った。
連れてきた常連客には、慰められたけど。
そもそも、アイツのせいで俺、何もしてないのに失恋した感じになってんだけど?
エルフ、来ないかなー。家に。