表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

護れ!!

お読みくださりありがとうございます


食事後、ふたりは満腹になり少しだけ休憩したのち、店を出た。

今は、チェスター伯爵家に帰るために、馬車の停留場まで戻っている途中である。


 カイルは食事をした店を出てから、いや、商会を出てからずっと何者かが自分たちの後を付けてきているのに気がついていた。

 しかし、一定の距離を保ったままで何か仕掛けてくるという事はない。

 もしかしたらチェスター伯爵の指示で俺と彼女を監視しているのかもしれないと考えて泳がせているのだが、不安が残る。


「ライラ、少し急ごう。それから、俺の傍を決して離れないように。」

 どんな可能性があるのか分からないと考え、普段より少し小さな声で粛々と伝えた。


「はい。」

 ライラは顔を強ばらせ答え、カイルへ歩み寄った。


 その時、目の前で幼い少女が転んだ。

 転んだ拍子に少女の持っていた籠に入っていた小さな花束が道に散らかってしまった。


 ライラが心配し、少女に声を掛ける。

 そして手を貸し起上がらせた。

 少女は立ち上がり、スカートの砂を祓うとお礼を言った。


 ライラは小さな花束を拾い集めると、少女に渡した。

 少女はお礼であると、いい匂いの花なのと言って、ライラに一束渡し去っていった。


 貰ったお礼の花束を嬉しそうにライラは眺め、顔に近づけ匂いを吸い込んだ。

「とてもいい香りだわ。」

 ニコニコと笑っていた。


 それからまた2人は歩き出した。


 カイルは周りを警戒しながら歩く、馬車置き場に近づくにつれて人気が無くなってきた。

 雑談している用心棒らしき二人組、座り込んで日中から酔いつぶれた男やこんな所で靴磨きかと小さな箱にちょこんと腰かけ下を向き客を待つ男、それに身なりの汚い庶民の子供が数人居るくらいだ。

 道沿いに並ぶアパート群からは洗濯物は掛かっているが、人々は仕事へと出払っているのか声が聞こえてこない。


 その時、ライラがもたれる様に寄り掛かり、カイルの服にしがみ付いてきた。

 何だ?ライラの様子がおかしい。


「おい、どうしたんだ!?」

「ごめんなさい……体が……瞼が……気持ち悪。」

 と言ってからすぐにライラが崩れ落ちた。


 咄嗟に片腕で受け止める。

 何だ?手の震え?気持ち悪いと言っていた。

食べ過ぎ……ではないな、病気?何か盛られた?何に?

 彼女にいったい何が起こったのか?


 そしてライラは完全に意識を失った。

 ライラの手から花束がパサッと音を立てて落ちる。


 ハッ、もしかして、この花束に何かが……匂い、しびれ薬か!?

 そうならば、マズい。


 そう考えた瞬間、見た目の怖そうな輩が次々にアパートから出てきた。

 そして、カイル達を取り囲む。


やはり、何が目的なんだ?

 クソッ、人数が多い。

 ジリジリと男達が等間隔で囲み間合いを詰めてくる。


 ライラは動けない。


 この人数を相手にこの場で戦ってはライラを危険に晒してしまう。

 どうするか!?

 ……思い出せ、商会までの道のりで使えそうな!

 あ、そうだ!あそこなら、いける!


 俺は思いついた案を実行するために、ごめんと言ってライラのスカートに手を突っ込み、太ももに括られた鞭を出す。

男達が一瞬驚いている隙に、素早く鞄の持ち手に鞭を通してライラにくくりつけライラごと勢いよく左肩に担いで腕を回しガッチリ押さえた。

そして剣を抜き、目指す方向へ駆け出す。


 よし、一点突破を図る!!


 向かっていった先には3人の男達がいた。

 三人ならばなんとかできると剣を構えた時、ライラがずり落ちそうになり、カイルは焦った。

 一人の男が剣を振り下ろす。

 危機一髪でカイルは剣で受け止めた。


 ヤベー、危なかったーー。


 体勢を直し、襲い掛かってくる相手の剣を受け流し、胸に強く蹴りを入れると吹き飛んだ。

倒れて動かないので気絶しているようだ。


あとの2人は……ハッと、周囲を見ると、先程壁に寄り掛かり雑談していた用心棒のような二人組が駆け付けてくれていて、応戦して残りの二人を抑えてくれている。


 たっ、助かった!有難い。


「兄ちゃん、その子を連れて早く逃げな!!」

 男達が声を上げる。

「助かる!!」

 カイルはそう叫ぶと倒した襲撃犯の横を駆け足で通り抜けた。


 武器を持った他の男達が、怒号を飛ばしながら追いかけてくる。

 追いつかれないように、ライラと鞄をしっかり掴み、懸命に走る。


 カイルは少し走った先にある店と店の合間の小さな路地へ、ライラを担ぎ入って行く。

 その先は、袋小路になっていた。


 後を追ってきた男たちは、しめたといった様子で揚々に笑みを浮かべた。

 カイルは行き止まりの壁脇にライラと鞄を下ろすと、すぐさま向き直り、男達へと向かっていった。


 狭い路地の為に大人数が来ようしても通れず、前線は1人か2人、多くて3人でしか戦えない。

 カイルは襲い掛かってくるそいつら一人一人を冷静に対処し、武術と剣術を使い倒していった。


 よし、これならばイケる!!


 そして残りがあと2人といったところで、勝てないと諦めたのか残っていた奴らが後ずさりをして逃げ出した。


 その時、


「逃がすか!!」


 大きく跳ねるハキハキした勇ましい声が細い路地内に響き渡る。



 細い路地を塞ぎ囲むように立って居たのは シオウ・ハディトン団長率いる第二騎士団の面々であった。





カイル、頑張りましたよ~


登場人物メモ

シオウ・ハディントン:第二騎士団の騎士団長



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ