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アレクシスの趣向

お読みくださりありがとうございます


 勢いよくドアを開けて押し入った。

 次の瞬間、少女から長い鞭がアレクシス殿下へと放たれた。


あっ、危ない!?間に合わない!


 その鞭の先端が縦をすり抜け、アレクシス殿下の顔へ届くかといったところで、鞭の先端が天井へと勢いよく弾かれた。


 パシッと音が響き、強く弾かれた鞭は、少女の持っていた手まで威力を伸ばし、強い力に当てられ手から鞭がすっぽ抜けた。


 それをしたのは、リナである。

 リナの手の中には、細かい細工が施され使い込まれた銀色の鞭が収まっていた。


 リナは、女性とアレクシス殿下のもとへ歩み寄り、話し始める。


「ライラ、私はこんなことに使うために、あなたに鞭を教えているのではないわ。身を守るために使うのよ。無暗に人を攻撃してはいけないわ。」


 それを聞いて冷静を取り戻したのか、ライラと呼ばれる少女が大人しくなった。


「ごめんなさい。もう暴力には使いません。」

 鞭をドレスの中にサッとしまう。


「ライラ、今日は何をしにここへ来たの?アレクシス殿下へ危害を加えるために来たわけではないのでしょう?」

 リナは宥めるようにライラに問いかける。


 すると、ライラは目に涙をためて話し出した。

大姉(だいねぇ)ちゃんがアレクシス殿下から酷い目に遭わされていて、このままだと命に危険が及ぶって、お茶会で噂されているのを聞いたの。居ても経ってもいられなくて、真相を確かめるためにお父様の登城について来たんだけど、離宮に行ったら大姉ちゃんは体調が優れないので会えないと追い払われるし、アレクシス殿下の所へ真相を聞きにいたら、ヘラヘラしているばかりで全然教えてくれないから、大姉ちゃんが苦しんでいるのに、その夫は笑ってふざけいるなんてって、段々腹が立ってきて……」


 ライラの言葉を聞いて、部屋に居る大人は反省する。

 自分達の都合で、幼気な少女の気持ちを傷つけてしまっていたのだと分かったからだ。


それなのに……。

「大丈夫よ、ライラ。ソフィーは私が遠くの領地へ移住する話が出て、離れてしまうのがショックでその場で倒れてしまっただけだから、私が近くに居ればいつも通りよ。今も部屋では元気にしているわ。」

リナが平然とそう囁いた。


 このまま真実を隠し、ライラを味方に取り込む気なのだろう。

 先程の反省モードはいったい何だったのか?


……こいつ、卑劣すぎる。

いつもはマヌケ令嬢なのに、時々現れるハートフィル侯爵家の悪魔の血筋かよ!?

怖いわっ。


 カイルは横目でリナの表面上は優しい笑顔を見つめた。

 コイツもあの恐怖一族の一員であるということを再認識する。


「そうだったのね、良かった!ん?でも、先程の話だと、リナ姉さまがどこか遠くへ行かされてしまうってこと?私もそれは嫌だわ。絶対反対よ!」

 ライラが拳を高く上げ、声高く反対を表明する。


 そんなライラの両手をリナは握り、

「ありがとう。親友の妹が、こんなに優しいレディへと育ってくれていて本当に嬉しいわ。ねえ、そう思うでしょう、義兄様(おにいさま)!」

 振り返り、笑顔で両手を広げ、アレクシス殿下へとリナが話し掛ける。


「ねえ、義兄様も協力してくださらない?私達、同盟組みませんか?その方が、ソフィーも絶対に喜ぶと思うの。」

 リナは飛び切りの笑みを浮かべながら、アレクシス殿下へと提案した。


今のこの状況で、ソフィア妃が喜ぶことを否定するなんて、アレクシス殿下には出来っこないよなぁ~リナ、すげぇな。


「そうだね。もう、その方がよさそうだ。降参するよ。同調しよう。」

 アレクシス殿下がようやくリナ達の仲間に加わった。

チャッチラー♪


 実は、エドワード殿下とリナ妃殿下には、今すぐにでも王都から少し離れた領地へ移住させられる話が彼らの両親たちの陰謀で決まってしまっていたのだ。

 アレクシス殿下もこの決定に一躍絡んでおり、いわば敵であったのだ。


 しかし、この決定事項を覆そうと、リナとアレクシス殿下の妻であるソフィア妃殿下が、仮病作戦を立てて実行した。

 その作戦が功を成し、直ぐに移住と言う話は中断している。

 つまり、先程ライラがお茶会で耳にしたといった悪い噂の真相がこれであった。


 そして、このリナを移住させない大作戦の仲間に、敵側であったアレクシス殿下を取り込む事に、たった今、成功したのだった。


 これでアレクシス殿下の嫁いびりしているという悪評は消えるだろう。


 その快諾を聞き、ソフィアの許へ報告しに行くと言う満足げなリナと共に、ソフィア妃の妹ライラも部屋を後にした。

 リナが一緒ならばソフィアに面会できるようになっているようだ。



「ハハハハッ、とうとう仲間に引き入れられたよ。先日のシュタルク帝国中将の件(※スピンオフ作品その1参照)といい、あいつらはこの王宮で楽しく過ごしているようで、何よりだな~。」


「そう言う、アレクシス殿下も同じ穴の狢ではありませんか。」

「ハハッ、そうだな。あいつらが来てから、さらに楽しくなっただけだなぁ。」

 アレクシス殿下が嬉しそうに笑う。


 笑い終えると、顎に手を当てて考える。

 そして、話し出した。


「それにしても、リナのあの鞭さばきは見事だったな。趣味と聞いてはいたが趣味の域を超えている。まるで体の一部のようなしなやかで、そして剣のような鋭き動きだった。」

アレクシス殿下が珍しく褒めた。


「趣味とは言っているけれど、幼少期から護身用にと母親に厳しく指南を受けていましたからね。おそらく、熟練した兵士でなければ容易に勝つことは難しいでしょう。」

 カイルは自分の事の様に得意げに話す。


「そんなに凄いのか!鞭……ククッ、昔、弟が突然、鞭をコレクションし始めたから、変な趣味の世界へと足を踏み入れたのかと疑ってしまったんだ……まさか女性へのプレゼントであったなんて、その当時は流石の私でも予測が付かなかったから、どうしたものかと悩んだよ。」

 殿下が顎に手を当て、昔を思い出し感慨深く頷く。


「あ~、そのプレゼントの話、リナから聞いていますよ。初めて離宮に連れていかれた日に、部屋に足を踏み入れたら、鞭がズラッと並べられていて、どれがいいかとエドワードが尋ねられたとか。リナがひた隠しにしていた趣味であったから、どうしてエドワードが知っているのかとドン引いたらしいです。今じゃ、開き直って人前でもガンガン使っていますがね。」

 カイルは遠い目をする。


「アハハハ、我が弟は残念なところがとても愛おしいよな~。」

「……俺はアレクシス殿下の趣向を疑いますね。」


 そんな主従での温和な会話をし終え、ようやく本来の仕事へと戻る二人であった。



兄まず であった、リナが殿下の離宮へ行った際のエドワードの行動が明らかに。

リナの秘密の趣味も。


登場人物メモ

ライラ・チェスター:ソフィアの妹、本作のヒロイン??

ソフィア・ウェルト:アレクシス殿下の妻、リナの親友 ライラの姉


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[良い点] >「アハハハ、我が弟は残念なところがとても愛おしいよな~。」 お兄ちゃんwww さいこうですwww
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