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リナの反省

 今年最後の投稿をお読みくださり、誠にありがとうございます。


 カイル達が執務室を出た後、アレクシスの執務室ではこんな会話がなされていた。


「あーあーあーあーあー、非常にまずい。」

 リナが額を覆って小さく呟いていた。


「まずいって?ちょいちょい顔を強張らせていた事と関係あるのかしら?」

 ソフィアがリナに尋ねる。


「え、今の声に出てた?っていうか、顔に出ちゃってた?実はね、先日の強盗犯の事件。あれ、ライラの婚約者にカイルが相応しいかを見極める為の審査だったらしいのよ……私、強盗犯を捕まえる事しか聞かされていなかったから、カイルならば絶対にライラを守ってくれると思って、カイルをチェスター伯爵(おじさま)に推薦してしまったの。カイルに婚約の気持ちがないようならば、押し付けてしまったようで申し訳なくて…ライラはとてもいい子だから、私は大好きな2人が結ばれるのは喜ばしいのだけれど……カイルは、常々、俺は一生結婚しないって眉間に皺を寄せて言っているのを知っているから、カイルを裏切ってしまったようで、罪悪感が半端なくて……カイルは、何かあって結婚したくないのかな…それなのに、私は…」


 先程からのリナの挙動不審の態度はそういう理由からだったのかと、アレクシス殿下とソフィアの疑問は解けた。


「リナもまんまと利用されたって訳なのね。」

 ソフィアが可哀相にと同情の声を上げた。


「ええ、恥ずかしながら気が付かなかったわ。だからさっき、カイルへ急いで手紙を渡したのだけれど、思ったより相手の行動が早くて、間に合うかしら?」

 リナは心配そうに話す。


「もう、王妃(母上)も巻き込んでいるみたいだし、外堀は埋められているかもしれないね。カイルの状況は厳しいだろうね、逃げられるかな?」

 アレクシス殿下も信頼する部下だけでない感情をカイルへ持っているようだ。

 この口ぶりは親しい友人として、協力してくれるようだ。


「ちょっと、逃げるって酷くない?まるで我がチェスター伯爵家が悪者みたいじゃない。我が家は財産、領地、特産物、どれをとっても素晴らしい功績があるし、我が妹は最高に、最高峰に可愛いのよ。むしろ世の全ての男共が跪いて薔薇を持ち婚約を願い出てもいいくらいの、素晴らしい令嬢なのよ。」


 カイルを心配するアレクシス殿下の一言が、気に入らなかったようでソフィアの逆鱗に触れた。

 迫力のある妹愛の熱弁を披露した。


「そ、そんなことは言っていない!!私はカイルの気持ちを知っているから、時間を与えてやってほしいという意味で言ったのだ。」

 アレクシスが焦った様子で弁解をする。


「私だってそれくらい知っているわよ。でもその言い方ではチェスター伯爵家に失礼じゃない!!訂正と謝罪を求めるわ。」

 一度振り上げた(ナタ)は下ろせないようだ。

 まだ臨戦態勢だ。

 夫婦の喧嘩は続く。


 だが、喧嘩をしている二人を仲裁しようとリナが割って入る。


「ああああぁ、もう!!2人共、喧嘩しないで。ソフィーも少し落ち着いてよ。チェスター伯爵家が素晴らしいことは全国民が知っていることだわ。ソフィーの結婚の際に国中に知らしめたでしょ!!ところで、カイルの気持ちって何???私、知らないんだけど、何故、みんな知っているの?」


 リナは表面上喧嘩する2人に助け舟を出した後、自分の知らないカイルの気持ちを2人が知っていることに疑問を抱き、質問した。


「何って、カイルは、リ――」

「ソフィィイーーー!!」


 アレクシス殿下がソフィアの名を大声で叫んだあと、口を口で塞いで言いかけた言葉を制止した。

 ソフィアが目を丸くし驚き止まった。


 目の前でキスを見せられたリナは、咄嗟に手で顔を覆う。


 ソフィアが落ち着いたのを確認すると、ソッと口を外し、

「我が忠実なる家臣、カイルの為に一緒に対策を練ろう。」

 と、アレクシス殿下が、静かな口調で誤魔化した。


 ソフィアも自分の言いそびれた言葉を飲み込み、声を出すことなく賛成だと首を縦に振った。


 話は流れてしまい誤魔化されたリナは、気持ちがモヤモヤしていたが、2人がこんな茶番劇までして懸命に隠そうとするのならば、無理矢理聞くべきではないのだと諦めるのであった。



 危なかったです!

カイルの秘密を暴露してしまうところでした。


 作者が蕎麦と餅を食べるため、

大晦日と元旦の投稿は、お休みいたします。


次回の投稿は、1月2日です。


皆さま、良いお年を~♪ 第九♪

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] カイルいい男だなあ、とおもいながらよんでいました そうか……審査だったのか…… まだカイルの気持ちがライラに向いているわけではないと感じるので、周囲はもうちょっと時間かけてあげてほしい…
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