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カイルの日常

 こちらは兄まずのスピンオフ作品、カイル・モーリス主人公の中世ヨーロッパ風物語になっています。

 あの秘めた恋の裏話も…はじめての方でも読める様にしたのですが、大丈夫かな?

 お楽しみいただけたら、幸いです。

 よろしくお願いします。


  とある国の一室にて、事件は起きていた。


「やい、カイル!お前は、私の近衛騎士だよな。しかも隊長!隊長、お前、隊長だよな?」

「はい、そうでございます。」


「では何故、私を守らずに、そこから動こうとしないのか……話を聞こうか?」

「えっと、そうですね。武器も持たない、たった一人のか弱き女性からもご自分の身が守れない弱い主君ではあってはならないと(あん)じまして、(わたくし)、近衛騎士団 (クロの)隊長カイル・モーリスは、心を鬼にして戦況を見守っている次第であります!!」

「……。」



俺の名前は カイル・モーリス。

 ウェルト王国で近衛騎士団黒隊長をしている者だ。


 俺の任務は、この国の次期王、さっきから俺に意味のない疑問を投げかけてくる御方、アレクシス殿下をお守りするこである。

 そう、お守りすることなのだ……が……。


 現在、どのような状況であるかと言うと、数刻前にアレクシス殿下のもとへ、話を聞きたいと一人の少女がやってきた。


 そいつが、盛大に暴れている。

 少女は殿下の胸ぐらを掴み、睨みつけ、凄んで喚いているところだ。


 その際の戸惑う殿下と騎士である俺の会話が先述のものである。


 先程から全てを諦め、アレクシス殿下も勘弁してくれと、両手を上に挙げて降参を示しているのだが、少女の殿下への罵倒というか愚痴は一向に止まらない。


 正直、関わりたくない!

(あるじ)よ、こっち見るな。

そんな目しても、無理なものは無理。

自分で何とかしてよ。


「はあぁぁ、分かった。カイル、お前は直ぐにリナを呼びに行け。この前の借りを今日返せと伝えろ。急いで、担いで連れてこい。」

「はい、承知しました。」


 これ幸いと、急いで執務室を後にするカイル。


 足早に、アレクシス殿下の弟であるエドワード殿下の離宮へ向かう。


 リナは俺の幼馴染だ。

 さらに俺の姉とリナの兄が結婚しているので、今は義兄妹の仲である。

 さらにさらに、リナは俺の主であるアレクシス殿下の弟、エドワード殿下と結婚し、王子妃となっている。


 エドワード殿下の離宮へ向かい、早急に用件を伝えたい有無を告げると、すぐ中へと通された。

 サロンで仲睦まじくたんぽぽ茶を飲んでいたエドワード殿下とリナが、俺を見て、一緒にお茶を飲もうと着席を促す。


 だが、アレクシス殿下のピンチであるので、早くリナを連れていってあげなければと丁重に断り、用件を話し始めた。


ぶっちゃけ、イチャイチャするコイツらと、のんびりたんぽぽ茶なんて飲んでられるかと、思っただけだけど。


「リナ妃殿下、アレクシス殿下が呼んでおります。この前の借りを返せ、直ぐに来い!だそうです。ブハッ。」

 まずい、先程の殿下の慌てふためく光景を思い出して、つい笑いが出てしまった。


「カイル、私的な空間でのその呼び方は止めて。あなたに妃殿下と呼ばれると体が痒くなるのよ。それより、義兄様(おにいさま)が私を?何だろう……カイルが思い出して噴くって、いったい何!?もしや、またソフィーとのチワ喧嘩の仲裁!?私は全面的にソフィーの味方だから仲裁はしないって何度も言っているんだけど。それとも義理兄(おにいさま)の左脇の下のは腋毛(わきげ)が一本しか生えてないって言うのを令嬢達にバラしたことかしら?」

 顎に手を当てるポーズで真剣に悩むリナ。


「お、お前、なんてこと広めてんだよってか、違うよ。ほら、あの()、チェスター伯爵家の末娘が来ている。可哀相だから、早く対処してあげてくれ。」

「だってソフィーが広めろって言うんだもん。えっ、ライラが来ているの!?分かった。一大事になる前に急ぎましょう。」


 そう言って、リナはお茶をいっきに飲み干すと、席を立ちあがり部屋の奥へ向かい何かを取りに行く。

 ドレスの中に閉まって隠しているようだが、おそらくアレだろう。

 アレを持ったリナは、いつものお惚けではなくなる。

 強硬の冷血戦士と化すのだー!なんって。


「私も行こう!」

 エドワード殿下がいつもの如く当たり前のようについて来ようとするので、


「殿下は急いで執務室へお戻りください。就労の時間ですよ。こんな所で油を売っていたなんて、宰相と内務大臣に告げ口しますよ~。」

いいから、さっさと仕事に行けよ。

 カイルがエドワードに仕事へ戻るように片手を振って促す。


「な、それはダメだ、カイル。俺は少しだけ、ほんの少しだけ休憩に来ていただけであって、決してサボっていたわけではない。直ぐに戻るから黙っていてくれ。リナと少しでも一緒に居たかったんだ。なあ、頼むよ~。」

 殿下は半泣きで、両手を擦り合わせ拝むように頼む。


この人は、本当に……気持ちは分からなくはない。


「貴方のほんの少しは長いですからね。はあ~、分かりましたよ。今回は見逃すので、さっさと執務室へ戻ってください。ハロルドが血相を変えてあなたを探していましたから。」

「何、宰相補佐が!?そ……それならば、もう少しここにいようかなぁ。」


 腰をゆっくり下ろそうとしていたエドワード殿下に、カイルが活を入れる。


「早く!!」

「ハイッ!」


 強い口調のカイルの言葉に飛び上がり、駆けだして部屋を後にするエドワード殿下であった。


 俺とリナも殿下に続いて離宮を後にした。

 状況の説明をしながらアレクシス殿下の執務室へ向かっている。


「リナ、そんなに急ぎすぎなくていい。お腹の子に何かあったら怖いから。」

「フフッ、気づかってくれて、ありがとう。でも、急がないとまずいかもしれないのよ。」

 カイルが妊娠しているリナの体を心配するのだが、リナは悪い予感がするらしく身重の身体なのにドレスの裾を持ち大股で闊歩して歩く。


 こう言ったリナの行動は心配ではあるが、相手に対する強い想いからの行動である為に制止しづらい。

 それと同時に、彼女は実家で英才?教育を受けてきているので、頼もしい存在でもあるのだ。


 目的の扉に近づくにつれて、騒がしい声が聞こえてきた。

 ガシャンやら、ガコッ、バシッと言うような音が聞こえてくる。

 俺が部屋を出る前よりも、少女はかなり暴れているようだ……。

なんか、変な音してないか?


 部屋をとりあえずノックし声を掛けるが、返事は無い。

 そっと覗き込むとそこには、女性が何かを勢いよく振り回し、物にぶつかり散乱する様子と、都合よくあった甲冑が持っていたのであろう大きな盾に身を隠しながら、必死に説得するアレクシス殿下がいた。

相手は鞭を使っているようだ。


うわっ、ヤバいなこれ……。


 それを見るなり、近衛騎士的にも急ぐべき状況になっていると、勢いよくドアを開けて推し入った。




 漸く、兄まず最終話の最後の所に出てくる2つのお話を書くことが出来ました。

 これから、カイルが主人公の短いですが物語が始まります。

 恋愛コメディを目指しています…。

 どうぞ、よろしくお願いします!!!


 ―登場人物メモ—

 カイル・モーリス:主人公、ウェルト王国近衛騎士黒隊長

 アレクシス・ウェルト:ウェルト王国第一王子、次期国王

 エドワード・ウェルト:ウェルト王国第二王子、のちにフォード公爵

 リナ・ウェルト:エドワードの妻、王子妃、主人公の幼馴染、実家はハートフィル侯爵家


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[良い点] カイル!まってました!ありがとうございます! 更新お待ちしております!
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