放課後に
「まさかと思うけどいつもあんなことされてるわけ?」
放課後になり放送室を出てから数時間が経った。無駄に広く感じる学園の敷地を案内しているさなか、一二三が聞いてきた。
「あんなことって?」
何を指しているのかが全く分からずに聞き返す。
「セクハラのことだろ。忘れてんの?」
何を言うかと律が答えた。どうやら“あんなこと”というのが分かっていなかったのは私だけだったようだ。
「ああ。まあ、おふざけだし。気にしてないよ。」
そう答えると3人が苦い顔をした。まるで誰かをあわれむような、私に対して何を言っているんだと抗議するような。そんな目を向けてくる。
「・・・バカじゃないの」
「せんぱ~い!」
ボソッと小声で呟いた一二三の言葉は元気な挨拶でかき消された。挨拶をしたのは後輩ポジションの攻略対象、奏夏樹だった。夏樹は駆け寄ってくると思い切り私に抱きついてきた。今日はよく抱きつかれる日だなぁとしみじみ思う。
「センパイ、僕に会いに来てくれたんですか~?」
「いや、転校生を案内してるだけだし、くっつくな。」
口で言おうとも離れやしないので私は力ずくで引き離す。口を尖らせてブーブー言っているがそんなことは無視だ。
「誰?」
一二三が夏樹に指をさして言ってきた。目は私を向かず夏樹を見ている。
「リン、人に指さしちゃダメ。こいつは奏夏樹。後輩。」
指摘されると一二三はすぐに手を引っ込めた。
「よろしくお願いします、リンさん。」
「勝手にリンって呼ばないで。リンって呼んで良いのはトオルだけだから。ボクは鈴一二三。覚えなくても良いから。」
だからもう少し愛想と言うものを・・・と、私に言われたくないであろう注意をしようとしたとき、
「センパイは調理室に行かないんですか?今日はマフィンらしいですよ。」
と、夏樹が言ってきた。どうやら食物部は活動するらしい。
「行きたいけどな~。案内があるし・・・」
そう言いつつ3人に目をやると
「行けば良いんじゃないかい?まだ案内されてないはずだったし。部活動の様子も見てみたいよ。」
ネイロがそう言ってきた。確かネイロはヒロインと同じ食物部に入る。ヒロインから部活を見に来ないかと言われて行っていたはずだ。そのシナリオを変えて良いのか分からないが、早くから食物部を体験させ、ヒロインと交友を深めてもらうのは大事だろう。今のところ私に関わりがなく、ヒロインと仲良くしているのはネイロだけなのだから。律と一二三も特に異論はないようだ。
「じゃあ、承諾も得たということで調理室へレッツゴー!」
そう言って、マフィンを楽しみにしながら調理室へと向かった。
短いですかね。すみません。
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