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この乙女ゲーはバグってる。  作者: 江川ショーコ
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友達作りパーティー楽編

 口を塞がれて呼吸ができない。後ろからガッツリ体を押さえ込まれて手足を動かしてもびくともしない。


「静かに」


 私を抱えている男が耳元で囁く。その瞬間に悪寒が走った。しかし、私は抵抗を諦めて、男の言う通りにした。


「・・・。良くできました。柊さん」


 男の名は楽。私のクラスの担任だ。


「ぷはっ・・・きっつ。急になんですか・・・」


 やっと解放されて大きく呼吸をする。楽はニコッと笑って


「何って・・・助けたんですよ。あのままホイホイ付いていったら捕まってましたよ。今はあなたは鬼なんですから」


 そういえばゲーム中だったことを思い出す。千歌の行動でパニックになり忘れていた。


「ありがとう・・・ございます?」


 少し釈然としないが、礼を述べることにした。教室に静寂が流れる。どちらも何も話さない。楽は相変わらずニコニコと笑顔を浮かべているが、夕焼けのせいか少し不気味にうつる。


「僕が怖いか」


 静かな声だった。一二三の声よりももっと無機質な声。薄ら笑いの楽の瞳を見て


「なんですか。(がく)さん」


 そこにいたのは(らく)先生ではない。


「あははっ!やっぱり見分けつくの?お前は凄いね」


 (がく)(らく)のもうひとつの人格。先生より少し強引で、優しくない。もう本当に優しくない。人格が変わるキッカケは分からないが、もう一人いることは前世で承知済みだ。ある日、たまたま見かけたときに(がく)に気付いて、名前を呼んでしまってから、執着されている気がする。


「僕と一緒にいるのが怖い?何かされそうで」


 じりじりと近付いてくる(がく)に対し、私の脳は、逃げろと叫んでいる。だが、簡単に逃げられるならすでにそうしている。


「何を期待してるの?」


 瞳が合い体が強ばる。声が出てこない。怖い。しかし、その感情を悟られてはならない。悟られては相手の悦になるだけだ。


「先生と秘密の共有・・・甘美な響きだよね。このままもっと秘密を増やしてみようか・・・?」


 背中が壁に当たった。いつの間にか壁際に追い込まれている。壁を確認するために後ろを向いて、振り返ったときに後悔をした。(がく)から目を離してしまったことを。


「さあ、特別授業だ」


 にたっと笑う(がく)の顔が目の前にあった。ヤバイ。やられる。その時に


「あっ・・・」


 携帯が鳴った。というか、動いた。携帯で位置がバレないようにバイブ設定にしてあるのだ。


「電話なので出ます!」


 (がく)の方を見ずに携帯を取り出した。その際に距離をとることも忘れない。危なかった。制服の心臓辺りを握りしめながら電話に出た。


『もしもし?先人だけど。大丈夫?』


 幼馴染みの声を聞いて、ホッと安心する。そして違和感を感じた。大丈夫?とは何に対してなのか。


『随分と詰められてるみたいだけど。見えてるよ。向かいの部屋』


 そう言われて窓の向こうに目をやると先人が手を振っていた。今までの出来事が見えていたのか。助けてくれたのか。今は先人が神様に見える。


『ちょっと神野音先生とかわって』


 言われた通り電話を渡す。何か少し話をして、電話は返されることなく切られた。


「迎えに来るって。過保護な幼馴染みだね。それともそれ以上の何かがあるのかな・・・?」


 先ほど先人がいた部屋はもうすでに誰の姿もなく、カーテンも閉められていた。(がく)はうっすら笑みを浮かべている。


「先人は大事な幼馴染みだ。それ以外に何がある?」


 私の言葉に(がく)は更に口角をあげた。私をバカにするような顔をしている。


「お前がそう思っていたとしても、そいつらがそう感じてるかは分からないだろ。僕もやつらも鈍感な奴を想って可哀想だよな」


 最後の方に少し泣きそうな顔をしていたように見えたのは気のせいだったのだろうか。


(がく)・・・」


「ところでお前、天星の匂いがするな?」


 キラキラした笑顔に変わった。目が笑っていないが。


「あ、ああ・・・さっき押し倒され・・・」


 顔が変わった。今までどんな感情の時でも保っていた笑顔が消えた。


「押し倒されたのか、お前。あの野郎に」


「は・・・い・・・」


 瞳の鋭さが増した。そういえば、何故か(らく)は千歌と仲が悪い。放送部部長と放送部顧問なので表面上はそんなことはないように見せている。が、部室はいつも冷えきっている。


「チッ、しっかりマーキングってか」


 小さく(がく)が言った。仲の悪さは(がく)も同じようだ。最初から二人は仲が悪いように見えた。最近、更に仲が悪くなっている気がする。


「お前、天星に隙見せんじゃねぇぞ。その無防備、なんとかしろ」


 なんのことか分からない。


「無防備?何が?」


 そう返すと(がく)は呆れたように大きくため息をついた。大袈裟なため息にイラッとする。


「本当にお前は・・・」


「だからなに?無防備なんて、先輩とおんなじこと言わないでくれる?似てるよね。先輩とあんた」


 先ほど押し倒されたときに似たようなことを言われた事実を思い出す。皆は無防備だと言うが、私は心を許した人にしかこういう態度は取らない。例外はいなくもないが。そんなことを考えていたせいか、(がく)の変化には気付かなかった。(がく)は拳を握りしめて、口を強く噛んでいる。


「あいつと似てる?ふざけるな!」


 いきなり大声で怒鳴られて、私の体がビクッとはねた。なぜ怒ったのか分からない。けど、雰囲気から地雷を踏んでしまったことは分かる。


「あ・・・その・・・」


 (がく)の怒りの感情に圧倒されて萎縮する。謝りたいが、声がでない。ちょうどその時、


「透、迎えに来たぞ」


 先人が教室に入ってきた。先人に目を向けたあと、(がく)に視線を戻すと、すでに先ほどの怒りは見えず、(らく)に戻っていた。


「なんか、怒鳴ってたみたいですけど・・・大丈夫か」


「ああ。大丈夫ですよ。」


 にこやかに笑って返事をする。すると先人は


「あ、神野音先生じゃなくて。お前だよ、お前」


 そう言って頭を撫でようとした先人の手に私はビクッと震えた。その瞬間にやってしまったと思った。


「あー、神野音先生。こいつ、怒鳴られるようなことばっかするくせに、怒鳴られるの苦手なんすよ。あんま怒らないでやってくれますかね。こいつには優しく言う方が効きますんで」


 越前谷兄弟は私の昔を知っている。だから、怒るときはなるべく優しく言ってくれる。勿論感情的になることもある。けれど、それでも。例え私の方が悪かったときでも感情的になったときは先に謝ってくれるのだ。そしてその態度をされると私が後悔し、反省することも知っている。


「え・・・あ、すみません。その・・・天星くんとは一緒にしないでいただけますか」


 シュンと肩を落として(らく)が謝った。私はゴニョゴニョと言葉を濁して返事をする。


「なんか分かりませんけど、こいつ貰っていきますよ。神野音先生、そろそろ壁役でしょ」


 壁役というのはあの通路を塞ぐ役のことだろう。先生が交代して見張ってるのか。


「そうですね・・・。柊さん」


 1度目を閉じて、ゆっくりこちらを見つめ直す(らく)


「注意はしましたからね」


 そう言って、教室を出ていった。

キャラによって話の長さが違うのは何の意味もございません。

贔屓でもありません。

ただ、会話が多かったり、描写を多めにしたりすると長くなるだけです。

ご意見・ご感想、お待ちしております。

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