友達作りパーティー一二三編
私との歩幅の違いを考えず、ぐんぐん進む一二三はある程度行ったところで急に立ち止まり、くるっと振り返った。私は息を切らせて、瀕死の状態だった。
「あ・・・ごめん。大丈夫?」
一二三の手が私の頬を触る。大丈夫だよ、と伝えて、息を整えた。
「よく気付いたね。あそこガラスで見えないはずなのに」
ふと浮かんだ疑問だった。ガラスは中からしか見えないようになっている。それなのに、一二三は気付いた。
「ああ、サーモグラフィー」
簡潔に言ったのは、特殊な機械の名前だった。つまり、熱の反応で見つけたと・・・
「あと、携帯のGPS。鍵はピッキング」
不穏な言葉が出てきた気がするぞ?GPSにピッキング?疑問が伝わったのだろう。一二三が自分の指を見せた。指の先がパカッと開いて、細い棒が出てきた。なんだその機能。意味はあるのか。
「最近の技術は凄いんだな・・・」
どういう意図か分からない機能の事を考えるのはやめ、再び先程の千歌の言動について考える。
「先輩は誰でも良いってタイプじゃなかったと思うんだけどな・・・。なんであんなこと・・・」
原因を考える。何故あんな行動をとったのか。
「ストレスかな。欲求不満?なんでも一人で抱え込むからああやって爆発しちゃうんだよ、もう。今度からはきちんと相談するようにしてもらお。自暴自棄はダメだってちゃんと言わなきゃ!」
そんなことを言っていると、一二三が信じられないものを見るような目で見てきた。その目はやがてあわれみに変わり、もはや私を見ていない。
「キスされかけてその思考は・・・どうかと思う」
一二三が静かに言った。それが私の心をえぐる。だが、千歌は顔が良いうえに才能もある将来有望な人物だ。私なんかを相手にするわけがない。
「そうかもね。だけど・・・」
だけど。その言葉をおいて口を閉じた。これは一二三が知るようなことではない。人に見られて良いものではない。弱味を見せては喰われるだけ。
「キスなんて好きじゃなくてもできる人種はいるんだよ。残念ながらね・・・」
目を伏せて言う私に一二三は怪訝な顔をした。言わなかったことを悟ったのだろう。しばらく重い沈黙が続いて、
「なんかあるなら言わなくちゃ分からないから。遠慮なんてしないでね。ボクは・・・ロボットだから。人間みたいに傷付いたりはしないから」
ズシンと言葉が響いた。ロボットだから?人間みたいに傷付いたりはしないから?だから・・・なんだ。
「人間みたいに傷付いたりしねぇならそんな言葉出てくるかよ。じゃあてめぇも遠慮すんな。それで互さまだろ」
私は早口で言い切る。一二三は驚いた顔をしたあとに、
「ごめん、そうだね。ボクも遠慮しないよ」
そう言って行くよ、と歩き出した。私は少し複雑な気持ちになりながらも一二三のあとについていこうとした。
「!?」
「トオル?」
一二三が振り向いたとき、私の姿はもうそこにはなかった。
物騒なことをスラスラと・・・。
作者もキスを軽視するのはいただけないと思います。
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