飴玉を一生懸命に拾う子供達の姿は誰が見ても微笑ましい。
子供達の目には飴玉が宝石に見えているのだろうか。
マオ
「 …………凄い食い付き様だな〜 」
セロフィート
「 ふふふ。
奮発した甲斐がありました♪ 」
マオ
「 おい!
『 奮発 』って何だよ! 」
セロフィート
「 はて?
何です? 」
マオ
「 『 何です? 』じゃ、ないよ!
惚けんな!! 」
セロフィート
「 惚けてません。
助手さん、容器のフタを閉めてください 」
マオ
「 …………何度目だよ… 」
文句を言いつつ容器のフタを閉める。
マオ
「 ……なぁ、セロ… 」
セロフィート
「 では、ワタシの代わりにの指を鳴らしてくれる────…… 」
マオの質問にセロフィートは答えず、観客達の中から4人目を指名した。
マオ
「( はぁあ?!
オレ、未だ言い掛けてたのに!!
セロの奴、オレを無視した?! )」
4人目の観客が指を3回鳴らし終えた。
マオはセロフィートに促されて、容器のフタを開ける。
容器の中から先程の飴玉の様な何かが飛び出て来たり、溢れ出て来たりはしなかった。
マオ
「 …………何も出て来ないな?
中身…入ってないのか?? 」
セロフィート
「 ふふふ。
まさか。
中を見てください 」
セロフィートに言われたマオは、容器の中を覗いてみる。
中にはクリームが入っていた。
マオ
「 ──緑色だ…。
ハンドクリームか?? 」
セロフィート
「 どう思います? 」
マオ
「 『 どう思う 』って…… 」
セロフィート
「 皆さん、容器の中を見てください。
ハンドクリームに戻りました 」
マオは容器を持ち上げると中身を観客達に見せた。
容器の中のハンドクリームは、最初に観客達に見せた緑色のハンドクリームと同じものだ。
何故、其が分かるのかと言うと、観客達にハンドクリームを試してもらう為にクリームを指ですくった跡が、其のままの状態で残っていたからだ。
鯔の詰まり、今、此の容器の中に入っているハンドクリームは、最初のハンドクリームと全く同一のハンドクリームと言えるのだ。
マオ
「 ──まっ…本当か?!
本当で初めのハンドクリームなのかよ……?!
で、でも…確かに指でクリームをすくった跡が残ってるし……。
どうやって……?? 」
セロフィート
「 其は企業秘密です♪
ワタシは玄人の手品師ではないです。
此の場で皆さんに種明かしをしてしまっては、レパートリーが無くなってしまいます。
其は非常に困ります 」
マオ
「 ……………… 」
セロフィート
「 其では最後に、此処迄ワタシの手品ショーに付き合ってくださった観客の皆さんへ、感謝の気持ちを込めたワタシの “ とっておきの手品 ” を披露致します 」
マオ
「( 未だ…やるつもりかよ?! )」
セロフィート
「 此処にあるのは茶ちゃ色いろい紙かみ袋ぶくろです。
初はじめから終おわり迄まで、ずっと丸まるテー台だいブルの上うえに置おかれてました。
皆みなさんも御ご存ぞん知じのハンドクリームの容よう器きを入いれていた紙かみ袋ぶくろです。
此この紙かみ袋ぶくろの中なかに何なにが入はいっているか──。
此この場ばに居おられた皆みなさんは既すでに御ご存ぞん知じの筈はずです。
助じょ手しゅさん、念ねんの為ために観かん客きゃくの皆みなさんに紙かみ袋ぶくろの中なかを見みてもらってください 」
マオ
「 あ…あぁ……。
分わかったよ… 」
そう言いわれたマオは、紙かみ袋ぶくろの口くちを開ひらけると素す直なおに紙かみ袋ぶくろを持もち上あげ、紙かみ袋ぶくろの中なか身みを観かん客きゃく達たちに見みせた。
紙かみ袋ぶくろの中なかに入はいっている物ものは、ハンドクリームの容よう器きを包つつんでいた包つつみ紙がみとハンドクリームの口くちに載のせられていた丸まるくて白しろい台だい紙しと剥むき終おえた蜜み柑かんの皮かわといった謂いわば今こん後ごも使つかい道みちの無ないであろうゴミである。
マオ
「 セロ、こんなゴミをどうするっていうんだよ?
ゴミはゴミ箱ばこに瞬しゅん間かん移い動どうでもさせる気きか?? 」
セロフィート
「 ゴミ箱ばこへ瞬しゅん間かん移い動どうです?
其それはあまり面おも白しろくないです 」
マオ
「 は?
『 面おも白しろくない 』って?? 」
セロフィート
「 助じょ手しゅさん、紙かみ袋ぶくろの口くちを折おり畳たたんでください 」
マオ
「 ……何なにするんだよ 」
マオは紙かみ袋ぶくろの口くちを閉とじると中かま身みのゴミが外そとに出でない様ように、上うえから下したへクルクルと折おり畳たたんだ。
セロフィート
「 助じょ手しゅさん、皆みなさんに見みえる様ように紙かみ袋ぶくろを上じょう下げに振ふってください 」
マオ
「 はぁ?
振ふるのか?? 」
セロフィートが何なにをしようとしているのか──、セロフィートの考かんがえが分わからないマオは、取とり敢あえず助じょ手しゅらしく紙かみ袋ぶくろを観かん客きゃく達たちに見みえる様ように持もち上あげると、紙かみ袋ぶくろを上じょう下げにシャカシャカと振ふり始はじめた。
紙かみ袋ぶくろの中なかでゴミがぶつかり合あい音おとが鳴なっている。