♥ 1.噴水公園 6 / クリームはクリームでも…
マオ
「 ………………ん??
クリームっちゃあ、クリームに見えるけど…、やけに色が白いな。
ハンドクリームの色って緑色だったよな? 」
セロフィート
「 おや?
ハンドクリームではないです? 」
マオ
「 …………ん〜〜〜??
何か…甘い匂いがする?? 」
セロフィート
「 そうです?
では、何のクリームでしょう? 」
マオ
「 えぇ?! 」
セロフィート
「 助手さん、容器の中が見える様に容器を傾けてください。
さて──、皆さんは何のクリームか分かります? 」
マオは容器の中身が観客達に見える様に容器の向きを変えた。
セロフィートの問い掛けに観客達は真剣な表情で容器の中を見入っている。
数人の子供がマオの持っている容器に手を伸ばして来た。
マオ
「 ん……どうした? 」
子供:A
「 ねぇ、其のクリーム、触っていい? 」
マオ
「 触りたいのか?
……セロ、いいのか? 」
セロフィート
「 構いません。
好きなだけ触ってください 」
マオの問にセロフィートは嬉しそうに笑顔で答える。
何故セロフィートが其処迄、満面な笑みを浮かべるのかマオには分からない。
マオ
「 好きなだけいいってさ 」
子供:A
「 やった〜〜〜!! 」
喜んだ子供達は嬉しそうに容器の中のクリームに容赦無く指を突っ込んで、クリームをすくい始めた。
子供達は、指ですくったクリームの匂いを嗅いだり、マジマジと見ている。
中にはクリームの口の中に入れて、舌で舐める子供が出て来た。
マオ
「 ──お、おい!
何のクリームか分かんないんだぞ!
むやみに口ん中に入れんな!! 」
子供:B
「 え〜〜〜〜 」
子供:C
「 甘いっ!! 」
子供:D
「 マジ?!
ボクも〜〜〜! 」
マオ
「 あっ!
おい、こらっ!! 」
マオが止めるのも聞かずに、子供達は次々と容器の中に指を突っ込んではクリームをすくい取っていく。
子供:B
「 ──やっべっ!
此、メッチャ美味いっ!! 」
子供:D
「 うんめぇ〜〜〜〜(////)
何此?! 」
子供:E
「 やっべ!
ムッチャやべ!! 」
子供:A
「 此、生クリームだよ! 」
子供:E
「 生クリームぅ?? 」
老人
「 ……あぁ…唯の生クリームじゃないねぇ…。
此は…超の付く高級品の生クリームだねぇ… 」
マオ
「 は?
婆ちゃん、何でそんな事が分かるんだ? 」
老婆
「 ほっほっほっ…。
分かりますよぉ…。
だってねぇ…此の生クリームは────…… 」
老婆の言葉を聞いたマオは驚きを隠せなかった。
マオは思わず顔を上に向けると、セロフィートの整った横顔を見詰める。
セロフィートと目が合ったマオは、ついセロフィートを睨んでしまった。
マオに睨まれたセロフィートだが、マオが自分を睨むのは何時もの事の為、特に気にしない。
寧ろセロフィートは、自分を睨んで来るマオを「 可愛い 」とさえ思っているのだ。
そんな訳で、マオがセロフィートを敵視する一切の行為は、セロフィートを喜ばせる一種の “ 御褒美 ” となる為、逆効果にしかならない。
セロフィートは子供を見守る母性溢れる母親の様な微笑ましい笑顔で、マオを見詰める。
マオ
「 …………セロ 」
セロフィート
「 何です?
助手さん 」
マオ
「 ……後で話たい。
大事な話だから。
逃げんなよ? 」
セロフィート
「 はいはい。
其の代わり、そろそろ容器のフタを閉めてください。
中のクリームが無くなってしまいます 」
マオ
「 ……分かったよ。
──あぁ、ほら。
もう終わりな!
クリーム食べるの止めい! 」
子供:E
「 え〜〜〜!
もっと食べたい〜〜 」
マオ
「 未だ手品の途中だから!
食べるのは手品が終ったらな? 」
子供:B
「 そっか〜!
うん。
じゃあ、そうする〜〜〜! 」
マオの言葉を聞いた子供達は意外と素直に引き下がってくれた。
子供達の引き下がりの良さにマオは少し驚いた。
マオ
「 す…素直だな… 」
言いながら、容器のフタを閉める。
マオ
「 ──で?
次はどうすんだ? 」
セロフィート
「 指を鳴らしてもらいます 」
マオ
「 またか? 」
セロフィート
「 はい。
何方かワタシの代わりに指を鳴らしてくれる──── 」
という訳で、セロフィートが指名した3人目が指を3回鳴らし終えた後、マオは容器のフタを開けた。
其の途端に容器の中から大量の飴玉が、まるで噴水の水の様に勢い良く飛び出して来た。
ハンドクリームの容器は、中ぐらいの蜜柑がギリギリ入る程度の深さしかない。
溢れ出る程の大量な飴玉が容器の中に入る訳がないのだ。
可愛いビニールの包み紙にくるまれた大量の飴玉は、丸台から溢れ落ちている。
子供達は両目をキラキラと輝かせながら、地面に落ちた飴玉や丸台の上に転がっている飴玉を無我夢中で拾い始めた。