♥ 1.噴水公園 5 / みかーーーーーーーーん!!!!
マオ
「 …………オレンジ??
えと……ハンドクリームの色が……緑色からオレンジ色に変わった……って事なのか?? 」
マオも状況を今一、掴めていない様だ。
セロフィート
「 そう思います?
容器を逆さまにしてください 」
マオ
「 はぁあ?!
馬鹿言うなよ!
そんな事したらクリームが落ちて、シーツが汚れてベタベタになるだろ!!
出来るかよ!
誰が洗濯すると思ってんだ!! 」
セロフィート
「 大丈夫です。
ワタシを信じてください。
──助手さん、容器を逆さまにしてください 」
マオ
「 …………分かったよ…。
どうなっても知らないからな!
此のシーツは洗わないからなっ!! 」
セロフィート
「 はいはい 」
ハンドクリームで汚れたベタベタなシーツを洗う事を全力で拒否したマオは、言われた通りに容器を逆さまにした。
────すると、容器の中から落ちて来たのは、オレンジ色をしたハンドクリームではなく、オレンジ色をした美味しそうな蜜柑だった。
マオ
「 …………み……かん?? 」
容器から落ちた蜜柑は、ボテッという音を立てて丸台の上にある。
先程迄は “ オレンジコール ” が連呼されていたのに、蜜柑が出て来た途端に今度は “ 蜜柑コール ” へと変わった。
好い加減に連呼するのを止めてもらいたいと、マオは心の中で切に願う。
マオ
「 …………何で容器から蜜柑が出て来るんだよ??
中に入ってたハンドクリームは何処に消えたんだよ??
なぁ、セロ!! 」
セロフィート
「 其を言っては手品になりません。
助手さん、折角です。
蜜柑の皮を剥いて、皆さんに分けてください 」
マオ
「 ……え?!
た、食べる──のか?? 」
セロフィート
「 はい?
蜜柑は食べる為に買いました。
本物の蜜柑である事を証明するには皆さんに食べて確めてもらうのが1番です 」
マオ
「 …………そ、そうなのか?
そういうもんなのか??
………………本当に食べて大丈夫なんだろうなぁ?! 」
セロフィート
「 安心してください。
昨日買った蜜柑です。
味は青果屋の保証付きです。
{ 良ければマオも食べてください }」
マオ
「 …………いや…(////)
オ…オレはいいよ… 」
やんわりと断りつつ、マオは1個の蜜柑の皮を丁寧に剥き始めた。
剥き終わった蜜柑の皮を茶色い紙袋の中へ入れる。
綺麗に皮が剥けた蜜柑を持ったままのマオは、1房ずつ取ると、食べたいのか前に出されている掌の上にランダムに置いていく。
蜜柑に肖れたラッキーな観客達は、此の上無い極上な笑顔で、1房の蜜柑を口に入れると、じっくりと噛締めて味わっている。
どうやらセロフィートが買って来た蜜柑の味は好評らしい。
セロフィート
「 皆さんに喜んでもらえて、ワタシも嬉しいです 」
周囲に笑顔を惜しみ無く振り撒きながら、そんな事を言う。
セロフィート
「 助手さん、容器のフタを閉めてください 」
マオ
「 え?
あ、あぁ…分かったよ 」
セロフィートに言われて容器のフタを閉める。
セロフィート
「 有り難う、助手さん。
──では、何方かワタシの代わりに指を鳴らしてくださる方、居ません? 」
又々セロフィートの問い掛けに対して、観客達が手を挙げる。
セロフィートが指名した2人目は、そばかすの目立つ元気そうな単髪の少年だ。
セロフィート
「 君の名前をワタシに教えてください 」
そばかす少年
「 グリント!
グリントゥクス・スタッシュだよ! 」
セロフィート
「 有り難う、グリントゥクス君。
ワタシの代わりに指を3回鳴らしてください 」
グリントゥクス
「 うん!
任せてよ!! 」
グリントゥクス・スタッシュは嬉しそうに、ニカッと笑う。
前歯が1本抜けているのが見えたが、其はマイナスではなく、プラスになっている事にマオは気付いてしまった。
前歯が1本抜けている事が逆にグリントゥクス・スタッシュのチャーミングポイントに1役かっている事に、本人と何れだけの周りの人達が気付いているだろうか?
マオが1人で其の様な事を考えている間に、グリントゥクス・スタッシュは指を3回鳴らし終えていた。
セロフィート
「 助手さん、容器のフタを開けてください 」
マオ
「 いいよ… 」
抵抗して、いちいち反発するのを止めたマオは、慣れた手付きで容器のフタを開けた。