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そうしてお姫様は、

去る人、帰らず

作者: 東亭和子
掲載日:2017/07/13

 明日など永遠に来なければいい。

 そう思っていたら本当になった。

 目覚めても、また同じ日が始まる。

 そう願ったのは私。


 私は毎日、彼のいる病院へと向かう。

 彼は笑顔で私を迎えてくれる。

「おはよう。毎日来なくてもいいんだよ?」

 そう言いながらも、私を歓迎してくれる。

「だって夏休みって暇なんだもん。

 ねぇ、今日は何の本を読んでいるの?」

 昨日と同じやり取り。

 昨日と同じ会話。

 私はまた同じ日を繰り返している。

 そして彼がまだ生きていることに安堵している。

 私の前で笑っている。

 私の前で話している。

 そして私に触れてくれる。

 その当たり前の日常がとても大切なことなのだ。


「…もう、終わりにしない?」

「え?」

「君はこれからも生きていくんだ。

 僕が死んでもね。

 それはもう分かっていることだろう?」

 意味が分からない、と私は首を横に振る。

「もう目覚める時間だよ」

「嫌!」

 目覚めるのは嫌。

 だって、そこには彼はいない。

「生きて。

 僕の分も生きて。

 そうして幸せになって。

 それが僕の願いだ」

 そう言うと彼は私の涙を拭ってくれた。

 大きな彼の手が大好きだった。

 少し低い声が大好きだった。

 彼の全部が大好きだった。

「さようなら」

 彼の言葉が終わりの合図。

 繰り返された日は終わりを告げた。


 目覚めても同じ日はやって来ない。

 彼は逝ってしまった。

 私を置いて、逝ってしまった。

 嘆いても、時間は止まってくれない。

 私は一人で生きている。

 彼の分も生きていくのだ。


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