転生
第2話です。
「あれ、俺死ななかったっけか?」
ハクは今真っ白な空間に立っていた。
折れた手足も怪我などなかったかのようだ。
今、ハクは死んだ時と同じ格好をしている。
白いフード付きパーカーにジーンズというラフな格好だ。
ふと、ポケットに手を伸ばして気づく。
「あれ?タバコねぇ、財布も、、携帯も?なんもねぇじゃんか。てか、ここどこよ?」
「ホッホッホ、目覚めたかのぅ?ここは、まぁこの世とあの世の境ってとこかのう?宮崎 一よ」
いきなり声をかけられ、名前を呼ばれ驚いて振り返るとそこには老人が立っていた。
「おっちゃん誰よ?あと、その説明じゃいまいちよくわからんよ、なんでこんなとこおるのよ俺?死んだんじゃないの?」
「安心せい。ちゃんと死んどるぞ?ホッホッホ」
「いやホッホッホじゃないでしょが」
呆れたような顔をするハク。
「まぁちゃんと説明するから安心せい。まず、お主は死んだ。若すぎる気もするがあの状況じゃ仕方なかったかの?お主の身体能力ならあの後からでも避けれそうなもんじゃったがの?」
「うるさいよ」
そう、実は避けようと思えばハクは避けれたかもしれないのだ。ハクは武道全般に通じているが剣道においては育った家が古流剣術を代々継いでいる特殊な家庭環境にあったため、身体能力、反射神経共に一般人とは一線を画していた。しかし突き飛ばした2人を気にかけていたら反応が遅れてしまったのである。ハクは色々疑問に思った。
「あんた誰よ?なんで俺の名前知ってんの?この場所、あの世とこの世の境?だっけ?から察すると神様かなんかとか?」
「まぁそこはまだ置いておこうかのぅ、実はな?儂はお主の才能、2人を救った時に見せた勇気、身体能力などをみて惜しいと思ったのじゃ。他にも思うところがあったのじゃがな。で、お主異世界に渡る気はないかの?」
「断る」
「ホホ、即断とはおもしろい。して、なぜ断る?」
「異世界ってとこがめんどい、元の世界に生き返るってんなら考えなくもなかったけどね〜。まぁ、死んだ俺が生きてるのも変だし。じじぃとおばあちゃんに別れ言えなかった事くらいしか後悔はないよ。昌樹も美桜ちゃんも無事だったしね。」
「めんどいか!ハッハッハっゲホっゲホっゲホっグェっ」
「おいおい歳考えろよじいちゃん」
「年寄り扱いするんじゃないわい!まだ10000年は生きるわ!」
「じいちゃんいくつよ、そんなに生きたら退屈で死んじまうわ」
今度こそ呆れるハクである。
「退屈のぅ。それがお主の本音かの?元の世界に退屈感じておったのかの?まぁ、なんでも出来ちまうお主にはあの世界は退屈じゃったかもしれんな?」
図星を突かれて決まり悪そうにするハク。
じいちゃんはニヤリと笑い続ける。
「これから行く世界は退屈とは無縁ぞ?」
「その保証は?」
「儂が保証しよう、創世神であるこの儂が、な?」
「へぇ、なんか神々しいと思ってたらすげぇ神様なのね、身分証とかある?」
「お主相手だとやりづらいのぅ、普通は信じるとこじゃぞい?」
「生憎神様は信じてないんだわ」
「可愛げのない小僧じゃて。まぁ良い。話を進めるぞ?お主がこれから行く世界は基本的には剣の世界じゃ、魔法は極一部の連中しか使えん。種族による種族特性の魔法か、魔器、神器、と呼ばれる少女、総称してディーバと言うんじゃがな?彼女らを従えるものだけが彼女らに封じられた魔法を使うことができる。」
「それ突っ込み待ちか?女の子従えて戦うってことなん?」
「お主がディーバを見つけることが出来ればそうなる。ディーバは主人と共に戦う時、己の身を武器へと変えて力になるのじゃよ。見つけることができなければ己の力のみで戦うことになるのぅ。じゃが、ディーバ使いは強力じゃ。もはや国と国の戦争はいかにディーバを確保し、使役するかの勝負になっておるようにな。」
「なんかファンタジーな世界なのね。あんまりさ、バタバタ過ごすの好きじゃないのよね。雲を見ながらのほほ〜んと過ごせる世界じゃないわけ?」
「それこそ退屈ではないのかの」
「そうだ!これから行く世界にタバコはないの?タバコない生活考えらんないのけど」
「ないぞ」
ハクは膝から崩れ落ちた。
「あぁ、俺は禁断症状を抑えられる自信がない、、、」
創世神はアゴに手を当て考える。
「ふむ、なら儂からプレゼントしてやろう。お主には3つのプレゼントを考えておったが1つはそれでいいじゃろ。ほれ」
ハクの前にメタリックなケースが出現する。
「俺、タバコはソフトケース派なんだけど」
「持ってみぃ、固そうなに見えるが柔らかく、そして硬いぞ。」
「矛盾してないかい?」
そう言いながら手に持つとふにゃっと形が崩れる。しかし質感は金属であり原理がわからない。
「これなに?」
「ホホ、神界の液体金属とでも言うのかの。お主の元いた世界にも水銀があるじゃろ?それのすごいバージョンじゃな。特殊な加工をしてあるでの。破壊不能属性になっとる。」
「無駄にすごいのね。他にはなんかないの?」
「ケースには20本入るようになっとる。それより少ない本数しかない場合、1時間に一本再生するように作ってある。」
「神様ありがとう!」
「現金なやつめ。無駄に技術を使ったわい。して2つめのプレゼントはお主の体じゃな。元の体はスプラッタじゃからの。」
「今の体はだめなのか?」
「言ってなかったがこの境目は精神を具現化しとるだけじゃからの。今お主に肉体は存在しとらん。これから肉体を作りそれを容れ物としてお主の魂を注ぎ込む。理解したかの?」
「あー、ファンタジーだね、うん」
「今なら要望があれば聞けるが肉体に拘りはあるかの?」
「いきなり言われてもねぇ、まず、この白い髪は残して欲しい。大事なトレードマークだかんね。あとは、、基本的に前の体と同じスペックならいいかな?あ、もう痛いの嫌だから痛みを感じないか頑丈であるか、もしくは傷の治りが早い体が良いな。」
「そうなるとお主の種族から変えんといかなくなるな。その条件だと巨人族か獣人族、吸血鬼族があるがどれか選べ?」
「え、、まじか、1番人間に近い種族はどれよ?」
「見た目で言うなら吸血鬼族じゃな。肌の色は白く太陽に当たると消滅しかねんがどうする?」
「いや雲見たいって言ってんのに日に当たらないとかアホか。」
「ふむ、おおそうじゃ!お主の髪は白じゃったの。この世界で白い髪は天神族の特徴じゃ。いっそ混ぜて作ってしまおう。」
「よくわからんが良いのか?」
「ふむ、よくわからんがハーフってことにしとけば良いじゃろ。」
「神がよくわからんとかあっていいのかね?」
「出来たぞい。これなら日にも当たれるじゃろ。んん?種族魔法が3つもついてしもうたが、、まぁ良かろうお主はこれから《天魔族》となる。目立つだろうがまぁ白い髪の時点で目立ちまくりじゃからの。大丈夫じゃろ。」
「無駄に高スペックをあっちの世界でも言われそうだな。」
「最後じゃがどうするかの?何か欲しいものはあるか?」
「向こうは元いた世界よりもデンジャラスなんだろ?なんか武器ちょうだいな。出来ればじじぃの家にある刀なんかが良いんだけど」
「ふむ、そうじゃな。丸腰で放り出すのも問題じゃな。ではお主の武器はこれで良いか?」
そう言って手をかざすとハクの前に一振りの太刀が現れる。
「おお!じじぃの虎徹じゃねーの?」
「その虎徹のコピーじゃな。そのひょろっこい刀じゃ不安じゃったからの。虎徹をベースに改良を加えてある。ディーバの武器には劣るじゃろうがそんじょそこらの武器よりは格別の出来じゃよ?」
ハクは太刀を鞘から抜き、正眼に構え、そこから脇構えに持っていき更に腰を落とす。ハクの扱う古流剣術・天象流の構えの1つである。
「いいね。しっくりくるよ」
「滅多なことでは折れんし欠けん。普通に打ち合っていけるじゃろ。」
「打ち合うことなく平和に過ごせればいいんだけどね〜」
「まぁどう過ごすかはお主次第じゃて。さて、そろそろお主を送るとするかの。」
創世神は指を鳴らす、するとハクの前に魔法陣が浮かぶ。
「おお、ファンタジーだねぇ。これに入ればいいのか?」
「うむ、そうすればお主の魂は新たな肉体を得た上でこれから行く世界、ムンバルディエへと旅立つことになる」
「なんか覚えにくい名前だな。まぁいっか、じいちゃん!色々世話になったね。また死んだらここに呼んでな?」
「お主と話すのは疲れるから嫌じゃわい。退屈してたら考えてやるわ」
ハクは魔法陣へ向け足を踏み出す。
「んじゃま、行きますか?」
新しい世界に少し期待を抱き高揚した気分でハクは新しい人生を歩き始めた。
新しい人生、憧れますね。
色々こじつけながら書いてみました。