最後の神官~砂漠の薔薇<サンドローザ>
すべての世界を創りしミーゲンヴェルド神は、世界を作りて、のちに世界の中に人を作った。
世界の中心に神殿を作り、のちに人々を管理する存在となっていくものがいた。
始めに光と右上<さかみ>を見据える男人<なびと>、次に闇と左下<さし>を司りし女人<めひと>
番の神官である彼等は千年生き、死を迎える。
肉体という腕<かいな>から魂がこぼれ、のち大気を巡りゆく。
それらを何度も繰り返したのち、新たに生まれた番の神官は死ななくなった。
魔力の存在する上世界に生まれたサンドルマ。
存在しない下世界に生まれ落ちたローゼリンデ。
彼等は番であるにもかかわらず。中心から外れた場で存在を構成されてしまった。
神官らが1000年ごとに死を迎えるのは、神官の寿命が尽きるからではないからだ。
それまでの神官らは欠けたものを互いに補いあいながら、世界のバランスをとっていた。
かわりゆく時代それに適応するには、足りない力があった。
千刻のリセットは区切り、神官の死は番であるがゆえ。
その前提を、サンドルマとローザリンデは、互いに預かりしらぬ場にて、覆す。
サンドルマは眼前の魔を極め、ローザリンデは果てなき宇宙に漕がれた。
互いに見えぬところで、反発し、噛み合わぬ歯車はいつしか世界の綻びを引き起こしていた。
それは世界の崩壊と再生にかかわるほんの一部に過ぎない。
なぜ神は番の生まれる場所を違えたか。
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「なぜ人間は生まれたのだろう。私はなぜ死ねない?」
少女は宇宙なるものがしばしば興味のあるきらいがあった。
「そうだ。宇宙の謎を解き明かす機関を作ろう。そうすればきっと、この謎が解けるはずだ」
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「つまらない。雑魚しかいないのかこの町は」
少年は長い時を変わらぬ姿で生き、いつしか偉大なる魔導師と称えられる。
備わっていた魔力に、金に困ることもなく、ただただ退屈な日々を送ってきたのであった。
彼の力を恐れるものも少なくなかったし、同時に彼に群がる蛆蝿<にんげん>もわらわらといた。
「ふん……愚かなことだ」
彼は足らぬ何かを生めるため、閉ざされた世界を生きていく。
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少女は神より授けられし力で、多くの者に宇宙を研究させた。
そうして暫く日が経ちゆくと、あるとき一瞬の奇跡が起きた。
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少年が立ち寄った場に、異なる場に通ずる歪みがあった。
完全にそちらへは行けぬ、姿はみえぬけれど向こう側の人間とは言葉でのみ意思疏通が可能だった。
―――――――
「初めまして、貴方が宇宙人さんですか?」
少女はそこにいるであろう向こう側の人間へ問うた。
「……宇宙人という名詞は頂けない。魔界人ということにして頂きたい」
少年は声の主に、何かを想ふ。少女も何かを確証した。
「私たちは、きっと出会う運命であったのですね」
彼等は互いの住まう世界が違うことを、いつしか疑念を持つ。
「なぜ我々は違う世界にいるのだろう」
「そうだわ、壁を取り払い、世界の融合を初めましょう」
のちに、それが地球を初めとする宇宙の崩壊であった。
彼等は死を迎えるため、全ての時空を融合させた。
しかし、彼等が臨む死は、未だ与えられない。