イケメン有罪~記念写真~
休日のデートスポットはどこも混み合っているものだ
こういう時には、マイナーな史跡巡りもいいだろう。
もちろん、下調べは万全だ。
その建物や土地に伝わる由来などの豆知識はもちろん、
時代時代の悲恋、熱愛そこに生きた人々の様々な思いも
よりロマンチックに仕上げられてるものを選び抜いた。
時を経た建物の重厚な佇まいに感嘆し
そして、そこにまつわる恋の話は
二人の間をより深く、
はるか昔から続く縁のごとく
夢物語の主人公の様な気持ちにさせてくれることだろう。
ロミオとジュリエットの様なとめどなくこみ上げる思い
はたまた。心の内に秘めたる忍ぶ恋
そのすべてを一度に体験できる
デートコースの選び方、これぞまさしく
俺、イケメン!
彼女も悲しい恋物語に瞳を潤ませ、
燃えるような恋に心を躍らせ、
そろそろ疲れてきたころだろう。
眺めの良い所で少し休憩をとるか。
マイナーな場所とは言っても歴史的建造物、
ある程度は観光客がうろうろしているものだ。
ここは建物全体が見渡せるとあって
記念に写真を撮る人が後を絶たない、
ここはひとつ彼女と並んで写真でも撮るか。
二人で並ぶとなると誰かに撮影をお願いしないといけないな。
「あの~、写真よろしいですか?」
丁度いいところに、
記念写真撮影のお願いが来たものだ。
撮影を快くOKし、
お返しに俺たちの分も撮ってもらうことにしよう。
俺は、さわやかな笑顔で
「もちろん、かまいませんよ」
と言いつつカメラを受け取ろうと手を差し伸べる。
なぜだ?
俺が前に出るとカメラを持った女性が後ずさる。
そのカメラを受け取らないことにはと
さらに前に出ようとした俺は
両脇から二人の女性にしがみつかれる。
状況が呑み込めず慌てる俺をよそに、
にこやかにカメラを構え構図を選んでいる。
俺が映るのか、俺は撮られるほうなのか。
良しいいだろう、
イケメンはカメラを向けられれば期待に応えねばならん
望み通り、あらん限りのポーズで撮られてやろう。
さぁ存分に撮影するがよい。
それからは、
3人組の女性が代わる代わるカメラ係を交代しながらの
撮影会が始まった。
よくわからない謎のポーズのリクエストをこなしながら
3巡目ほどは撮ったことだろう。
もう満足した頃じゃないかな、
そろそろ、俺と彼女の写真も撮ってもらうか。
俺は笑顔で彼女を呼び写真を・・・
彼女がいない。
慌てて、周りを見渡すと
かなり遠くを歩き去っていく彼女の後姿が。
俺は謝りながら全速力で追いかける、
走り去る後姿を写真に撮られながら。