そこは監獄でした
じゃらんと重い鎖の音が暗く、小さな部屋に響いた
それ以外に聞こえるのは自分の呼吸と心臓の音だけ
部屋の上の方にある小さな鉄格子から月明かりが微かに入って真っ暗だった部屋を少しだけ照らした
誰もいない、小さな部屋
あるのは少しの水と自分をここに繋ぎとめておく数本の鎖
逃げられはしないのだ
この監獄からは............
気付いたらここにいた
暗くて薄汚い監獄
そこには5歳位から15にいくかいかないかの少年少女達が10人ほど集められていた
父さんや母さんは?
どれだけ見回しても大人という大人はいなくて泣いている子もいた
程なくしてどこからか知らない大人が入ってきた 黒いスーツの男の人
子供ながらに私は背筋が凍った
何か、嫌な予感がしたから
「やぁ、はじめまして諸君。私の名前はルイス。君達の主人だ。」
ニコリとルイスと名乗る男はいった
金髪の髪が薄暗い証明でもキラキラと輝いていて身なりも良くどこかの貴族だった
だが、そんなことは幼く彼から遠く離れていた私は気付かなかったしどうでも良かった
今自分がどういう状況なのか、これからどうなのるかそれだけが重要だった
「今、君たちは戸惑っているだろう。どうしてこんなところにいるのかと思っているんじゃないのか?理由は簡単。売られたのさ!」
売られた?
突然そんなことを言われてもすぐに受け入れられるわけがない
「は?ちょっとあんた!あたし達が売られたですって!?そんなことを信じられるわけないでしょ!」
ルイスという謎の男に向かって甲高い女の声がした
声のした方へ視線を向けた
この中で年齢が高い部類に入るであろうまだ15くらいの気の強そうな短髪の女の子がキッとルイスを睨んでいた
「ほほう。君は自分が売られた自覚がないと、そう言う事だね?」
「そうよ!今まで普通に暮らしていたのに、お父さんやお母さんがあたしを売った?あんたたちがあたし達を攫ったの間違いじゃないの!?」
周りが静かな為彼女の荒い息が私のところまで聞こえてくる
「くっくくく。はっはっははははは!」
彼は笑った
とても愉快そうに............
「自分が売られたなんて自覚してる訳もないか。なんせ眠ってるうちに連れてこられたんだ。まぁ、運んでいるうちに起きて泣き叫ぶ奴もいたがな。おっと、本題に入らねばね。私は忙しいのだよ。」
ぴったりと笑いをやめ、気持ち悪い笑みを浮かべた
醜悪な笑顔にゾクリと鳥肌が立ち震えが止まらない
私は、どうなるの?
「先程もいったが私は君達のご主人様だ。そして、君達は私の"奴隷"だ。これからは私の命令には絶対服従してもらう。背けば死刑、つまりは死んで貰うから覚悟してくれ。」
「は?何言って.......そんなの嫌に決まってるで」
先程の女の子が反論したがそれは最後まで言うことが出来なかった
彼がどこからか出したのか小さなナイフを彼女へと投げつけたのだ
それは彼女の脇腹へと命中した
彼女は最初何が起こったのか分からなかったようだった
恐る恐る下をみてお腹に刺さっているナイフをみた途端彼女は発狂した
「いっ、いやあああああ!痛いぃぃ!痛いぃぃぃい!」
泣き叫ぶ彼女は我を忘れナイフを脇腹から無理矢理抜いた
抜くときに更に痛みが増したようで先程よりも大きな悲鳴が響く
抜いた衝撃で血が飛び出し、着ていた服を赤黒く染めた
「きゃあああああ!」
周りにいたものはそれに恐怖し、彼女からいち早く逃げ始めた
私はただ、傍観していた
いや、動けなかったのだ
足がガクガクと震え動けないのだ
怯えるながら、ルイスの方を向いた
「っ!!!?」
彼は笑っていた
彼女が、のたうちまわる姿をみて笑っていた
楽しんでいるのだ
私達をいたぶる事を
「これでわかったろう?クズどもが。今回は見せしめとして殺しはしないが、次は容赦しない。明日になったらもう一度ここに来る。それまで待っているんだな。」
それだけいうと、ルイスはくるりと踵を返して隠し扉らしきところから出ていった
彼が出ていった途端に周りがまたざわつき、冷静になった者たちは服の切れ端や布で刺された彼女の手当をできる限り始めた
まだ、小さな子達はほぼ泣いている
私も、いつの間にかほほを涙がつたい泣き声をあげていた
奴隷
奴隷と言う言葉をここにいる皆は知っているようだった
無論私も............
奴隷になったということはわたし達に自由はないのだ
解放されることがない限り、これからずっと............
どれくらいたっただろうか
既にみんな疲れ果てていてぐったりとしていた
その中で一人の少年が立ち上がった
「みんな、聞いてくれ。混乱しているのはわかる。だが、いつまでもこのままでは行けない。とりあえず自己紹介を始めよう。お互いをある程度わかったら現状を整理してみないか?俺はセイヤ。15歳だ。」
漆黒の髪と瞳、端正な顔立ちの少年だった
15歳だとういうセイヤはとてもしっかりしていた
彼に触発され、次々と自己紹介を始めた
「シュナよ。わたしも15歳。」
「僕はイリマ。10歳」
「ヒデリです。13歳なの」
私も立ち上がってビクビクしながらも自己紹介をした
「わ、わたしはフィオ.......。7歳です」
ペコリとお辞儀してその場に座った
そのほかにメル(♀)、ノリ(♂)の双子が最年少の5歳でミヤ(♂)は9歳
にケイ(♂)が14歳
ルイスに歯向かっていた女の子も落ち着きを取り戻し、
「マアヤ、12歳」
とか細く言った
ここにいるのは計10人
女の子5人、男の子5人だった
年齢もほぼバラバラ
「よし、じゃあまず皆はここに連れてこられた時のことは覚えているか?」
そんなの、覚えていない
気がついたらここにいたのだから
「さっき、あの金髪は数人は連れてこられる最中に騒いだ奴にがいると言った。この中にいるか?」
ふるふると横に首を振る
誰一人としてここには騒いだ者はいないらしい
「殺されたんだ............」
小さく放たれた言葉にびくりと肩が跳ね上がった
すく真横で、聞こえた
先程ミヤと名乗った男の子だ
「殺されたんだよ。あいつに、ルイスに!じゃなかったら今ここにいるはずだろ!?」
「そうと決まった訳じゃ」
「さっきのを見ただろ!あいつ、そこの女に戸惑いもなくナイフをぶん投げたんだぞ!?」
密閉された空間でミヤの声は大きく反響した
あまりの大きさに思わずビクリと体が震えた
「ちょ、うるさ!もう少し静かに言えないの!?ほら!ちっちゃい子が震えてんじゃん!」
「チッ」
ギロリと隣にいた私はミヤに睨まれ、それでまたすくみ上がってしまった
「と、とりあえず今、俺達が共通し、わかっている事は
①ここに来るまでの記憶はない
②貴族の男に連れてこられた
③売られて奴隷になった
こんなかな?」
「あ、ちょっとまって!」
ケイと名乗った男の子がセイヤに静止をかけた
ケイは少し考える素振りをしたあとセイヤに言った
「今、あのルイスとかいう貴族の男はさ俺達が奴隷になったって言ったけど、奴隷って本来国で禁止されてるんじゃなかった?あ、ごめん。皆が同じ国出身じゃないかもしれないのに。」
まだ、幼い組は法を理解できてるかと言われればできていないので首を傾げるだけだったがある程度大きい組はハッと顔をあげた
「確かにそうだ!なあ!皆はどこの国出身だ?」
「ディスパニア国よ」
「僕も」
「私も」
皆、同じディスパニアの出身だ
そして、ディスパニア国の法で奴隷制度はなく、奴隷を使用している場合罰せられるはずだ
「つまり、ここはディスパニア国ではないの?」
「その可能性はある」
ドクンと私の心臓は脈打った
ディスパニアではない?
ここは私の知らない国なのか?
ぐるぐると頭の中で疑問が浮かび上がっては消え、浮かび上がっては消えてを繰り返した
薄暗い部屋だ今や誰も声を発しない
私達はこの時はまるでわかっていなかった
これから始まる地獄の日々を
よろしくお願いいたします(〃・д・) -д-))ペコリン