第9話
お、おぉ~……。
「私の名前はエリス。さっきまではヨイツ帝国特殊部隊第四班のリーダーを務めていたわ。見ての通り種族はエルフよ」
さらりと背中まで届く髪の毛を耳にかける。そこには長い耳が存在し、日本ファンタジーにおけるエルフが俺の目の前に存在していた。
えぇ~っと、俺の名前は風間遅歩。改めてよろしくお願いします。
「よろしくね、遅歩ちゃん」
……ふざけてんのか。
「あら、女の子じゃなかったの? ち~ほちゃん」
くそっ。
自己紹介の時から既にからかわれているが、そのおかげ俺の緊張感はだいぶ薄れた。彼女なりに気を使っていたのだろうか。
「あなたには戦争でビシバシ働いてもらうわよ。具体的には相手がどんな魔法を放ってくるのかを判断するのはもちろん。最悪の場合、肉の盾となって死んでもらいます」
うお~い! こんなか弱い男の子をゴミ扱いするのか!
「あら、残念ながら貴方より強い奴隷たちも肉の盾となって死んでいってるわ。……最悪の場合は私だって肉の盾よ」
エリスはそう言いながら襟首を引っ張る。
ちょちょっと!
エリスが来ている服の襟首を引っ張るごとに露わに僅かな膨らみ。だが、そこにあるのはそれだけではなかった。
……隷属の……呪文。
「えぇ、そうよ。私たち亜人であるエルフはもちろん、獣人やドワーフたちも皆、こんなふうに隷属の呪文で縛られているの。一見自由に見える私だけど、それは実力があるから。まぁ実力があればあるほど、強力な呪文がかけられているんだけどね」
この世界は亜人差別が当たり前のようにある世界だった。俺が地球で妄想していた、亜人も人間も皆平等な平和な世界は、実際には大変難しいことだった。
1分間の読書、ありがとうございました。
また明日の18時に会えることを願っています。