第2話
「さて、まずはお主の名前を聞こう」
異世界に召喚された俺は現在、謁見の間に連れて来られていた。何故か後ろ手に手錠をかけられた状態で。この場には地下にいた時と同じメンツと、王妃と思われる、美しいドレスときらびやかな宝石で身を飾った醜いおばさんが揃っている。
俺の名前は風間遅歩だ。
「風間遅歩……か。ふっ、ひどい名前だな」
「ほんと、なんて響きの悪い名前でございましょうか。おーほっほっほ」
俺は言葉という鈍器にボコボコにされているような感覚を得た。
俺の友人には「女の子みたいな名前だ」と言われたことはあったが、ここまでひどく言われたことはなかった。すっかり沈み込んだ俺にとどめを刺すように、さらなる衝撃発言が振り下ろされる。
「お父様、名前は酷いですが、容姿はお父様ほどではないにしろ、そこそこ整っておりますわ。ですから私が彼と結婚して、私たち――ユブン王族に引き入れたいですわ」
脂ぎったあのおっさんより容姿が悪いと思われていることが霞むほど、結婚させられそうになる事実は、俺に人生最大のピンチをもたらした。
「そうだな、それがいい。おい、名前は忘れたが儂よりかっこ悪いお前、我が娘の婿となれ」
どれだけ相手が偉かろうと俺の返答は決まっている。
断るっ!!
1分間の読書ありがとうございました。
また明日の18時に会えることを願っています。