日本とは違う世界
俺はこの喋れるドラゴンに話を聞いた。
「他の奴には話が通じないのになんであんたとは話せるんだ?」
『俺がお前の頭の中に話かけて、心を読んでいるからだ。』
心を読めると聞いて閃いた!!
「今からさ、ここまで来た経緯を頭の中で浮かべるから心を読んでくれないか?」
ドラゴンは口の端を上げて
『良かろう…退屈だった所だ。俺と話す奴なぞここにはいないからな…付き合ってやろう。』
俺はドラゴンに心を読んでもらった。
この世界とは別世界から多分来た事と、森で会った出来事への疑問を。
『ふむ…にわかには信じ難いが小僧の服装、言語からしてこの国の者では無さそうだな。』
「なぁ、あんたここが何処だかわかるか?それと、俺は小僧っていうのは止してくれ。もう20歳にもなるからよ…俺は藤堂龍希っていうんだ。」
そう聞くと
『俺からしてみれば皆小僧だがな…しかし良かろう。それと気軽に名乗らん方がいいぞ?相手に自分の名を教えるというのは心臓を差し出すに等しい行為だ、覚えとけタツキとやら。』
「忠告は受けとっとくよ。俺は知っての通りこの世界の事がまるっきりわからないから教えて欲しいんだ。たのむよお爺ちゃん?」
『ハハハ!!年寄り呼ばわりか!!悪くないな!!ここはミルドという大国だ。何処の国でもそうだがこいつら人間は人間以外を認めない、人間以外を悪しき者と考える"人間絶対主義"を貫いて生きている。だから俺は捕まってこの檻に入っていて、お前の会った無実の魔族の娘は殺されたのだ。』
「はぁぁ!?人間絶対主義だと!?」
『そうだ。魔族は生きていることすら罪。狩る事が人類にとって繁栄と安全を確保する唯一の手段だそうだ。奴らにとっては害が有ろうが無かろうが、魔族だったら狩る。ここはそんな世界さタツキ。』
「そんなん…間違ってるだろ…何が人間絶対主義だ…反吐が出る!!」
『ほう…そんな事を言う人間は久しぶりに聞いたな、実に気分が良い。』
ドラゴンはそういうと笑ったように見えた。
「こんな吐き気がするような国なんていられねぇな…色々話を聞かせてくれてありがとうな。名前を聞いても良いかな?」
『ハハハ!タツキよ!この世界では相手に名前を名乗るのは自殺行為だと教えたはずだ。好意で聞いているのはわかるが、名前は仲間にしか教えない主義だ。すまぬなタツキ。』
「ずるいな…まぁ近い内にまた会おうぜ!!」
『達者でな。俺も二日後には処刑される。処刑を待つ間、檻の中はつまらんからまた来いタツキ。』
そうドラゴンは言って頭を地に付け目を閉じた。
絶対アイツの名前を聞き出してやる。
その思いで頭がいっぱいだった。
アイツは俺の名前を知ってるが俺はアイツの名前を知らない。
フェアじゃない。
ぐだぐだ言っているが一言で言えば気に入ってしまったのだあのドラゴンが。
だから俺はー
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深夜遅く誰も出歩かないような時間に、俺はドラゴンの本にやってきた。
ドラゴンは寝ているようだ。
ドラゴンが入ってる檻は何だか変な模様が入っているが木製のようだ。
『ん…誰かと思えばタツキか?』
眠そうにそういうドラゴン。
「なぁ…あんたは何でここから出られないんだ?」
『簡単な事だ。この檻が力を吸い取る檻だからだ。何度か試してみたが、無駄だった。』
そういって笑うドラゴン。「なぁ…俺があんたをここから出せたら名前を教えてくれるかい?」
『あぁ…タツキにそれが出来るのならな。もっともこの檻を壊そうというのなら魔法が使えんと無理だがな。もし出れたら…』
カチカチ!!シュボ!!
パチ…パチパチ…パチ…
乾燥してるからか意外と直ぐ燃えた。
そして燃えてみすぼらしくなった檻を 蹴り壊して俺は言った。
「あんたの名前を教えてくれないか?」
『ドラグ=グロアだ。お前には負けたよタツキ。』
とドラグは口の端を上げながら言った。