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キュクスの叫び  作者: おかのん
第1章
7/50

聖域での出会い

「うわぁー!! すっごい!! ねえラトこれ凄くない!?」

「……ああ。これは凄いわ。大樹というより塔みたいだ。植物系の遺跡… 環境操作系の遺物(ロストマギカ)… いや、決め付けるのも危険か」


 ( ・ )


「! 反応あった! あの大樹の中よやっぱり!」

「…まあ上の方だろうと下の方だろうと、アレを無視して存在してるとは考えにくいしな」


 コハクのガジュマルを見つけたラトとサリアは、互いに驚いていた。

 遺跡というより忘れられた聖域といった風情のこの空間は、サリアをおおいにはしゃがせた。

 対するラトも、この雰囲気は久しぶりであった。


「ここまでの場所が、手付かずとはね」


 村で手に入った情報とは違い、明らかに狂った生態系があるにもかかわらず、割とすんなりここまで来てしまった。折り重なる木々はともかく、霧もまったく出てこなかったし、大量の毒虫も見ていない。

 日の出とともに出てきてもう夕方だが、無理すれば一日で着ける様な距離だ。秘境とは言えない。


「…『反応』は、半年前からだとグウィン先輩が言っていた。なら、その時同時に遺跡の防衛機構(セキュリティシステム)が解除されたのかもな」

「ううー、もう夕方なのが悔しいなあ。…まだ寒くもないし、いいかな? ねえラト、泳いでもいい?」

「…このステキ空間の虜になってるなサリア(ねえ)… まあいいさ。魔力は感じないんだろう? 毒がなければ俺だって入りたい。魔石(ツェナ)(キャロル)の無駄遣いもしたくないしな」

「やた♪」


 間単に作ったいかだに荷物を載せて引っ張り、向こうで着替える事にする。


「ひゃー! 気持ちい! 透明度高いし、凄いきれい。やっぱり環境操作系なのかな。だったら楽な仕事かもね。防衛機構が沈黙してるんなら、戦闘もないかも」

「油断はしないでくれよ。内部とは命令系統が違うなんてよくある話なんだから」

「でもでも、何の危険もないって判ったら、ここでしばらくバカンスとかも良くない? こんないい所だし、ね?」

「あのなあ…」

「思ったより早く終わったら、でいいよ。遺跡を見つけるのにだって、数週間かかるかもって思ってたのに一日で着いたし…」

 必要経費とお小遣いの区別のついていないダメ研究員の典型である。一人で仕事をする時や、ラト以外と組む時は模範生なのに、甘えられる相手といると途端にネジが緩む。

「ねーねー。ねぇってばあ。一週間でいいからさあー」

 言い出したら聞かないのは解っている。なぜならラトはサリアの押しに勝てた事がない。出来るのはせいぜい妥協させる事だけだ。


「…内部の調査も滞りなく終わったら、3日だけ」

「うんうん♪ それで我慢する♪」


 何日くらい休みたい? と、最初から希望を聞いたところで、サリアは『じゃあ3日』と答えたろう。ラトが、『サリアに妥協をさせた』という形だけはとりたがっているのを、サリアは知っているのだ。そして、それがばれているのもラトは知っている。

 互いに優秀ではあるが、二人そろうと並程度の実績なのにはこの辺に問題があった。

 しかし、カルファト卿の研究室に実績を持つ人間自体数えられる上、息子の希望を跳ね除けられるほど強くは出られない程度には卿自身親バカであった。



 (・)( ・ )


 空洞になっている群生大樹の内部に、いくつもの枝に支えられるようにして、中心を通る台座のような木が生えている。

 その先には、琥珀の中で、ガジュマルの枝葉に包まれているコハクの姿があった。


「「………!!!!!!」」


 二人はそろって目を丸くした。


「…何時だかのサリア(ねえ)に負けねえ神秘性だな、これは」

「…!やだもう何言ってるのよ馬鹿!」

「いやマジで。この聖域みたいな場所の中心で、琥珀の中で眠る美少女だぜ?」

「彼女の神秘性の否定はしてないわよ!!!」


 恋人の心の中でこんなきれいな物と同じ分類にされているのかと思って頭が沸騰したのだが、天然なのかからかいもしてこない。

 そばにいるだけで心臓を優しくかき回されているような気分になり、

「さ、さっさと調べちゃいましょ!!」

 仕事熱心なふりで距離を開ける。


 しかし見れば見るほど美しい。

 少し間違えると触手に絡みつかれた魔物の卵なのだが… 実際遠目に見たときはそう見えて随分警戒したが… 彼女の生命力と、波動を感じていると、邪な者ではないのがわかる。少なくとも魔石を通じて、サリアはそう感じた。『そう感じる』としか言いようがない。

 キズをつけていいのかどうか迷ったが、木からならいいだろう。


 

「…サリア(ねえ)。すまん」

「? 何…  !」


サリアが振り向くと、ラトは猟師らしき少年に捕まって、ナイフを突きつけられていた。

 

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