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キュクスの叫び  作者: おかのん
終章
50/50

二人でいるなら

「どど、どうしようヴァイス。お、お化け・・・・・・」

「・・・・・・お化け?」


 (その発想はなかった。透き通ってるわけでもなし・・・・・・ まあ、神秘的なところがあるのは認めるけれど)


 ティーガーの言う事はいつまでたってもヴァイスの想像の中にない。


「この前、おばあちゃんの大事にしていたツボに悪戯したら、夜になって裏庭に出てきたんだ。雰囲気が違うけど、同じ顔してる・・・・・・!」

「あー・・・・・・」


 祖母の、瑠璃を使ったツボに水面の模様を描いたバカがいた。


(ティーガー以外にいないと思っていたがやはりそうだったか)

 

 祖母は、二人よりも若干背が低いくらい。ローブと帽子とを深くかぶり、顔には御簾を付けていて、どんな顔かどころか肌さえ見せない。声は年相応のしわがれ声で、しかし腰や背中は全く曲がっていない。

 ものすごく強いとかではけっしてないし、すごい魔法を使う所を見たわけでもないけれど、なぜか逆らえない迫力を感じる人。

 ちなみにヴァイスは、祖母の事は結構好きである。

 話を聞いて欲しい時や、そばに誰かいて欲しいと思う時に、なんとなく声をかけてくれる不思議な人なのだ。


「・・・・・・大丈夫だよ。怖い感じとか、しない。し」


 ティーガーが怖がっているのを意に介さず、ヴァイスは琥珀を手にとった。


「もらっていい・・・・・・んだよね?」


 一応確認すると、どうぞお一つ、とでも言うように一山すくって差し出してくれた。

 ティーガーもうながされて、ヴァイスの背に隠れながらおずおずと一つ手に取る。

 ティーガーはとにかく大きいのを。ヴァイスは色の良いものを手にとった。


 これで、この儀式、この冒険は終わりだ。



「は、早く行こうヴァイス・・・・・・!!」

「う、うん」


 

 二人は慌てて降りていった。ヴァイスの方は名残惜しそうだったが、ヴァイス自身屋敷で何度か会っているために、ティーガーについて行った。









「やれやれ、この『儀式』も、マンネリかな?」



 二人が見えなくなってから、女の子に声がかかる。

 初老の男性だ。足腰はしっかりしていて、年を感じさせない。


 女の子はふるふると首を振る。それなりに楽しかったようだ。



 (・)



「まあね。僕もまだまだ君のそばにいるつもりだよ。君とは寿命が違うから、いつまでもってわけにはいかないのは知ってるからこそ、ね」


 もうピニオンもおじいちゃんである。

 それでも見た目の変わらない嫁、コハクのためか、気持ちどころか体もまだ全然若々しい。


 翼人(フェザーフォルク)の寿命はエルフの半分。約500年である。

 だから、ピニオンはまず、家族を作ることに精一杯になった。

 自分が居なくなっても、寂しくないように。寂しくないのは無理でも、その先が寂しいだけのものになってしまわぬように。


 一族はそれなりに大きくなった。


 いつまでも若いままではおかしいので、コハクは皆の前では一切肌さえ見せなくなった。

 

 知っているのはピニオンだけでもないが。



 そして。


 

 結局声帯は元通りにはならず、少ししわがれた声になってしまった。


 『悟り』は少しだけ戻り、『悟られ』はうまく戻らなかった。


 二人にとっては、あまり関係がない事かもしれない。『いられるだけ一緒にいたい』その気持ちは、変わってなどいないのだから。


「さて。もうこれで孫や娘達はかたがついたし、長めの旅行にでも行こうか。

 とりあえずアーフィリア大陸にある隠れ里にでもいってさ、そこでのんびりして、リアントラントに飛び乗ろうよ」


 コハクお気に入りの浮遊大陸満喫コースだ。極上の笑顔のまま首肯を繰り返すコハク。 

 そこに着くまでのルートにカーリュッフは当然入る。また懐かしい顔にあってこよう。そして、浮遊大陸は、今度はどこで降りようか。アムエルイア大陸のルヴァーノス王国はまだ降りたことがない。


 

 さあ、世界を満喫しに行こう。

 準備は出来ている。


 二人でいるなら、どうとでも。



 ~FIN~

これにて完結です。

読んでいただいた方、ありがとうございました!


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