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キュクスの叫び  作者: おかのん
第4章
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『まだふた月というところだが』との書き出しの手紙

『彼女の復活を行うわ。詳しい事は再会してから話しましょう』


 もう随分世の中も落ち着き、皆、新しい隣人と関係を深め合っていた頃。

 ピニオンに届いた手紙に、そう書かれていた。

 

 差出人は、サリア=ハサハ。


 ついでのように入っていたもう一枚は、ラトが添えたものだった。


『まだふた月というところだが、久しぶりのような気もするし、つい昨日のようにも感じる。

 息災かな? ピニオン。

 君に外交の手助けが出来るとも思えないが、リアルト将軍の遺志について、ディグニット王子と言葉を交わせるのも、意見を言う資格があるのも君だけだろう。ならばむしろ、君はそこにいなければならない存在だ。そばにいてあげて欲しい。


 とはいえ、君には君の人生がある。

 特に、コハクの事となれば、君に無断で進めるわけにも行くまい。


 グウィン先輩の助言もあって、彼女の復活は目処が立った。

 けど、彼女は数百年単位で封印されていたので、復活したところでめでたしめでたし、というわけにはいかない。

 彼女の知り合いが生きているかどうかも微妙な話だし、もし誰一人生きていないとなれば、彼女は一人ぼっちになってしまう。勿論僕らも手助けは出来るが、彼女と寄り添って生きていく事が出来るわけじゃない。冷たい言い方に聞こえるかもしれないけど、僕らにとってみれば、今回のことはあくまで、数多扱ってきた遺産(ロストマギカ)の一例でしかないんだ。彼女のことも含めてね。


 彼女がどう生きていくのかも含めて、僕らは君に丸投げする予定だ。

 それは君も望むところだろう?

 僕だってサリア姉の事は、誰にも譲る気はないんで、分かるつもりだよ。

 ただ、コハクちゃんが遺産(ロストマギカ)関係の生きた重要資料という事もあって、復活の事や、今まで色々な便宜をはかったこと、君達の国とのもろもろの事を含めて、協力してくれるとありがたいなあとは思う。勿論客員であり研究員であるという立場になってもらった上で、拘束するだけの給料は出るだろう。まあ、選択肢の一つとして、ここに来るまでの道中悩んでくれ。

 

 とりあえずこの冬を無事乗り切る事は出来そうだという事は、ここカーリュッフまで伝わってきている。ディグニット王子が、君がそばにいなくても大丈夫そうなら、こちらに来る事を許して貰って、近日中にカーリマンズ学院の門を叩いてくれ。


 追伸

 土産に、いいカルダモンがあったら持ってきてくれ。サリア姉が好きなんだ』


 ・・・・・・・・・・・・


 ピニオンは常々思う。

 『サリアさんはラトさんと出会ってよかったなあ』と。


 コハクとは、この先どんな関係になるのだろう。そんな事を想像せずにはいられなかった。

 夢うつつにあの『告白』は聞いているので、好かれている事は間違いないだろう。

 けれど、それはコハクにとって、森の中でずっと眠っていてなん百年ぶりかに心を交わした相手がピニオンであった事が、全く関係していないとは言い切れない。だから、もっと広い世界を知って、現在の世の中を見て、いろんな人と出会った時、彼女の『一番好きな人』が、いつまでもピニオンである保証はどこにもないのである。

 大切にしさえすれば、嫌われる事はないだろうと思う。だけど、家族愛のようなものに変わってしまうという事もあり得るし、恋愛感情を抱ききれないと言われるかもしれない。もしそうなれば、それを不満に思う気持ちも伝わってしまうとなれば、彼女とどんな顔をして会えばいいのかがまず分からなくなりそうだ。

 

 あれから、コハクはまた『波動』しか出さなくなってしまった。

 その時、サリアが『ピニオン。理由は言えないけど、カーリュッフに・・・・・・ カーリマンズ学院にしばらく任せてもらえないかしら? 貴方にはやるべき事が出来たはずだし、そう長い間の事にはしないから』と言ってきた。

 最初は嫌だった。でも、コハクからその時発せられていたのは、引き裂かれる事をヒステリックに嫌がるものではなく、むしろ、そういう形にしてくれと頼んだのが彼女本人であるのが感じられるような、穏やかな甘えのような派動だった。

 

 勿論、リアルトの遺志を継いで、この戦いを、もう誰も悲しまなくていい形で決着をつけたい、その手伝いをしたいという思いはあった。

 それでも、彼女と離ればなれになる事は嫌だったのに。

 ピニオンが募らせているほどには、コハクがピニオンに抱く思いは強くないのだろうか。そんな邪推もしてしまう。

 

「・・・・・・分かりました」


 どちらにしても、彼女がそうしたいのなら、ピニオンがゴネても仕方がない。

 そんな寂しい思いさえ彼女には届いてしまい、焦燥の含まれたような切ない波動が来る。

 『誤解なの。そんな風に思わないで』とでも言うように。

 でも、汲み取れない部分がある以上、納得も出来なかった。

 そして結局、『彼女がそうしたがっている』部分で、心を押さえつけるようにして、彼女との短い別れが始まった。


 ・


 ・・・・・・そして現在。


 ピニオンが手にした、『まだふた月というところだが』との書き出しの手紙の消印が二週間前。

 カーリマンズ学院にピニオンがたどり着いた時には、大晦日。

 

「う・・・・・・わぁ・・・・・・」


 まるで、お城のような学校である。いや、学院か。

 ここで、彼女の・・・・・・コハクの復活が行われる。

 彼女と離れてから、約3ヶ月が経とうとしていた。

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