表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キュクスの叫び  作者: おかのん
第2章
18/50

偵察任務の食糧事情

 あれから4日。

 リアルトとピニオンは、エスハーン帝国領内を走っていた。

 二人が互いに抱いた感想は、似通っていた。

 

((さすがだ))


 これに尽きた。


(現役の猟師というだけはある・・・・・・ということか。体力も持久力も、新兵と比べれば十分以上に実戦レベルと言える。忍耐力や持続集中力はそこらの騎士でもかなうまい。加えて弓の腕は神業級だ。性格がどうにも争い事向きではないようだが、そこに目を瞑れるなら是非とも欲しい人材だ)


(旅をしていたというだけあって、警戒の仕方や目を向けるポイントが違うよね。将軍っていうのは事実偉くて、その上で『偉そうに振る舞える』事と『先を見ている』事を醸し出しているべきなんだもんな。前者は無理してそうしてるっぽいけど、そんなことしなくてもわりと先天的に偉そうだ。少なくとも、立ち居振る舞いがどこか綺麗っていうか洗練されているっていうか・・・・・・)


 森の中を、二つの影が迷いなくつっきってゆく。

 足運びは互いに性質が違うが、どちらも危なげがない。


(欲がなさそうなので扱いにくい面があるかもしれん。だが、我が弱い部分もある。想像力と親切心を持っている。ストレートに力を借りたいと押したり、お前の力は誰かを救えると囁けば、それだけで取り込めるかもしれん。大事なのは、餌をやり続ける事だろう。自分が評価されていないと思えば、それならばそれでいいとばかりにこちらにも興味を失うだろう)


(背筋を伸ばすのが日常になってるっていうか、かっこいいのが当たり前っていうか・・・・・・ 理想の自分っていうのが常に今の自分に近いとか、もしくは、そうなるのが当然とでも思ってるような、常に前を見てる雰囲気だ。ああ、かっこいいな。じいちゃんに少し似てる。リアルトさんの方が果てしなく上品にふるまってるけど、この人についていけば怖くないなって思わせるとことかそっくりだ)


 あの日から二週間後に開戦・・・・・・ということは、そろそろエスハーン軍と接触するはずだった。

 かなりのスピードで走っている。行軍の速度を考えればこのあたりだ。


(彼自身は、自分一人で生きていけるだけの裁量がある。だから人に対する依存がない。しかし一人きりで寂しさを感じないわけではないはずだ。むしろだからこそ、思いをぶつける事のできる、琥珀の少女に入れ込んでいるのだ。自分が全力で力を注ぐ何かを求めている。良い友人や尊敬できる上司に出会えれば、それはこの上ない生きがいになる。酒や美食、女にそれほど強い思いのない人間だからこそ、そういうものに対して心を動かした時、酔う。琥珀の少女に全てをあずけてしまう前に・・・・・・)


(どんな風に生きてきたんだろう。旅の中でどんなものを見てきたんだろう。いきなり将軍になったのはどうしてなのかな。やらせろって言ってなれるものじゃないし、頼まれたっていったって、一筋縄でいくことじゃないよね。王子様を呼び捨てにしてた時に、無理矢理どうこう言ってたけど、きちんと勤めている以上、やるだけの理由があったはずだよ。していた事を変えるってことは、仕事としてそれをするってことは・・・・・・ やっぱり、自分の人生の価値を、それに賭けることになるんだもの)


 既に日は傾いている。

 

「今日はここで足を止める」

「はい。じゃあ何かとってきます」

「頼む」


 4日目となればおなじみの風景になる。野宿の準備が始まった。


 ( ・ )


 猟師というのは、数日かけて危険な獣を退治することもある。旅はそもそも野宿の連続だ。

 二人は初日から手馴れていて、何の問題もなかった。

 森の中であれば、ピニオンはほぼ確実に獲物をとってくる。野草などにも詳しい。果実もだ。

 さすがに器具が限られるので豪華ディナーとはいかないが、毎食がうまいと思える偵察行動というのはリアルトも未経験であった。


「・・・・・・このウサギ肉のソースは?」

「野生の大蒜やローズマリーがあったので、一緒に炒めて、昨日農家で毛皮と交換で譲ってもらったトマトと食べようかと」


 見てくれを気にしなければ、普段よりいい物を食えてる気もした。

 ピニオンはピニオンで、祖父がいなくなってからは、誰かに食べてもらうことが少なくなったため、こういう時間は楽しかった。サリアは質より量がまず問題なので、また少し違う。もちろん質を落とせば嫌がるが、量を確保できなければというのがどうしても優先される。


(コハクが復活したら、僕の料理を食べてもらえるかな。それとも、彼女のほうが得意だろうか)


(・・・・・・使えるな。色々な意味で。さて、どうおとすか)


 かぶりついた足の肉は付け焼きにして一本ずつ。焦げたブラウンソースとオレンジリキュールがほの甘く香ばしい。

 毛皮はまた通りがかりの農家で野菜や果物に変わるだろう。

 ザクロのシロップづけは美味かった。風味付けの香草を聞いておきたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ