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キュクスの叫び  作者: おかのん
第2章
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リアルト=ストーウィック

 『鏡』というのは、『遠見の鏡』の略。俗称である。魔導ギルドや国家レベルで使われる連絡手段の一つだ。

 お互いに特定の鏡の前に立ち、相手を意識しないと連絡が取れない。

 微妙に不便だが、定時連絡や、『用があったら何時に鏡の前に立つ』と決めておき、片方がその時間に毎日鏡の前に立てば、直接会話が出来るメリットがある。

 カーリマンズ学院のカルファト教授の研究室では、正午に連絡を取ることを決めていた。

 つまり、昼過ぎにキュクスに到着したため、翌日まで連絡は取れなかった。


 一応、3人は客人として招かれた。遺物(ロストマギカ)関係の研究者であるからか、融通もきくらしい。

 数千人単位の人員を要している以上、食糧は豊富だった。とりあえず当面の心配はない。

 ラトとサリアは、コハクに呼びかける作業を続けるという。

「あなたは自由にしてていいわ」

 集中力のいる作業ということなので、邪魔にしかならないだろう。それでもコハクのそばにいたかったが、我が侭を行っても始まらない。

 地形を把握するのは、猟師の癖みたいなものだ。ピニオンもその例にもれず、散策を始めた。


 キュクスは突き出した半円形の城壁。さらにその後ろにその倍ほどもある、壁そのものといった城壁が続く。

 巨人の椅子が置いてあるように見える。

 長い間、二つの国を隔ててきた、まさに壁そのもの。

「・・・・・・・・・・・・」

 その、椅子の背もたれのてっぺんから見て思った。

 ここまでの拒絶って、そもそもなんであるんだろう。

 いや・・・・・・

 逆に、お互いに拒絶し続けて、それが当たり前で、そのままなんとかやってきたのに、それを壊して、戦争を初めて・・・・・・

 何が目的なんだろう?

 国はいつだって良い土地を求めてる。

 でも、ここを落とすのは本当に大変なはずだ。

 それでも攻めて来るだけの何かがあるんだろうか。


 ふと。

 コハクのことを思い出した。

 彼女は、もしかして・・・・・・

 彼らにとって、何か重大な意味があるとか?

 彼らが独自に彼女のことを知って、何か、ハルツ側では思いつきもしないような利用法があるとか・・・・・・

 

 ラトとサリアの言ってることはあくまで彼らの視点での考えだ。

 そういう機関が他に秘密裏にあってもおかしくない。

 自分の国の遺跡は自分達で調べたいだろうし、ほかの国で見つけても、自分の国にこっそり持ち帰って使いたいってのは普通だろう。

 

 ・・・・・・だめだ。

 想像が悪い方へ悪い方へと行ってしまう。

 一人でいるのは、やっぱり良くない。


「一人か」


 声に振り向くと、さっきの『責任者』の人がいた。

 確か・・・・・・『リアルト』さんだ。


「ご迷惑かけます」

「何、迷惑をかけてるのはこっちという見方もある。国同士の関係を良好に保てれば、向こうに通して終いでよかったんだからな」

「まるで王様のセリフですね」

「ディグニットへのイヤミさ」


 ・・・・・・ディグニット?


「ディグニットって・・・・・・王子様ですか?」

「ああ。明日ここに来る」

「そうなんですか・・・・・・じゃなくて。なんで王子様呼び捨ててるんです?」

「個人的に知り合いでな。公の場以外は呼び捨てさせてもらっている」


 そんないい加減な。


「リアルトさんて、えと・・・・・・ 家名は『ストーウィック』ですよね」


 リアルトの方が、ピニオンの考えを察した。


「聞き覚えがないだろう? そりゃあそうだ。俺は家なんかない。流れ者だ」


 それならばますますおかしい。国境の警備は重要度次第で任される人間は違ってくるが、国同士の境目で、責任者が貴族以外というのはありえないだろう。

 ましてや流れ者だなどと。

 

「東方面軍の将軍を無理矢理押し付けられたからな。愚痴を言う権利くらいある」


 思い出した。

 祖父がなくなる少し前くらいだ。

 ラシィ・・・・・・ブラッシカが、『今度のここいらの将軍様は、旅の聖騎士様だって話よ』と話していた。

 聖騎士ともなれば通常領土持ちだ。ずいぶん矛盾しているし、旅の・・・・・・ということはよそ者だ。

 いいのだろうか・・・・・・と思った覚えがある。

 

 この人か。


 東方面軍の将軍。

 確かにここの責任者のようなものだ。

 東方面一帯の、という意味で。


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