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第5話 好きな人とカラオケを抜け出した日

 体育祭が終わった後の教室。


 健が僕に声をかけてきた。


「明日、大畑と花山誘って体育祭の打ち上げってことでカラオケ行かないか?」


「いいね、行こう」


 大畑と花山は、僕たちとよく遊ぶ友達だ。

 正直、体育祭の疲れもあって少し面倒くさい。でも、健が行きたいなら付き合うか。


 


 そして次の日。


 僕は集合時間の10分前に到着した。

 でも、どうやら僕が一番最後だったらしい。


「おはよう、みんな」


 挨拶すると、みんなが「おはよう」と返してくる。


 すると健がニヤニヤしながら言った。


「瑛太が最後か。じゃあ今日はお前が最初に歌えよ!」


「えー、最初は緊張するから嫌なんだけどなー」


 すると花山が笑いながら言う。


「こればっかりはしょうがねーよ。瑛太が一番遅いんだから、いつものルールに従おうぜ!」


 そう。

 カラオケに行くときは、**一番遅く来た人が最初に歌う**という謎のルールがある。


「うるせーよ!お前いつも一番最後じゃん!」


「はっはっは!今日は準備をいつもの5倍早くしたからな!」


「くっそー、油断してたわ」


 僕がそう言うと、みんなが大きな声で笑った。


 


 カラオケの部屋に入り、結局僕が一番最初に歌うことになった。


 最初は少し緊張したけど、歌い始めるとだんだん楽しくなってきた。

 そのあとも順番に歌いながら、みんなで盛り上がっていた。


 


 途中、僕はドリンクバーへ飲み物を取りに行くことにした。


 コップにジュースを注ぎ、部屋へ戻ろうとしたその時――


 


「高村さん?」


 


 後ろから声がした。


 振り向くと、そこには――


 


「鈴本さん!?」


 


 思わず声が出た。


 まさかここで鈴本さんに会うなんて思ってもいなかった。


 しかも今日は制服じゃない。

 私服だ。


 ……可愛い。


 私服の鈴本さんも、やっぱり可愛い。


 


「鈴本さんもカラオケ来てたんだ!」


「そうなんだよね。体育祭の打ち上げみたいな感じで友達と来てたの」


 鈴本さんは少し照れたように笑った。


「高村さんも同じ感じ?」


「うん、全く同じ!」


 


 すると鈴本さんは少し周りを見て、小さな声で言った。


「実はさ……私、こういうのちょっと苦手で」


「え?」


「よかったら、一緒に抜け出さない?」


 


 一瞬、頭が止まった。


 


 ……今なんて言った?


 


「えっと……もう一回言ってもらっていい?」


「いいよ」


 鈴本さんは少し笑いながら言った。


「よかったら、一緒に抜け出さない?」


 


 聞き間違いじゃなかった。


 


 一緒に抜け出す。


 


 それって……ほとんどデートみたいなものじゃないか?


 


 心臓が一気に速くなる。


 


 でも、正直に言うと僕もこういうカラオケの雰囲気は少し苦手だ。


 


「僕でよければ、一緒に抜け出そうか」


 なるべく普通に言ったつもりだけど、声が少し震えていたかもしれない。


「ほんと?よかった!」


 鈴本さんは嬉しそうに笑った。


「じゃあこのあと、出口で集合ね」


「うん、わかった。またあとで」


 


 鈴本さんはそう言って、自分の部屋の方へ戻っていった。


 


 ……これはすごいことになってしまった。


 


 2年間片思いしていた人と、まさかこんな形で二人きりになるなんて。


 


 でも鈴本さんは、男女関係なく誰とでも仲良く話せるタイプだ。

 今回も、たまたま僕だっただけかもしれない。


 


 それでも――


 


 その「たまたま」が僕だった。


 


 それだけで、少し胸が熱くなる。


 


 よし。


 


 ここで少しでも距離を縮められるように、頑張ろう。


 


 僕は深呼吸をしてから、自分の部屋へ戻った。


 


 そして数分後。


 


 僕はカラオケ店の出口へ向かっていた。


 


 そこには、すでに鈴本さんが立っていた。


 


「来たね、高村さん」


 


 鈴本さんはそう言って、優しく笑った。


 


 こうして僕は――

 体育祭の次の日、鈴本さんと二人きりで外に出ることになった。


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