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第4話 運命の体育祭 当日

 体育祭当日。朝から校庭はいつもと違う雰囲気を放っていた。

 応援の声、放送、走る足音。


 その中で僕は、ただ一つの競技のことだけを考えていた。


 ――縦割りリレー。

 しかも、僕はアンカーだ。


 


「なに緊張した顔してんだよ。珍しいな。去年のリレーは全然緊張してなかったのに」


 健がニヤニヤしながら言う。


「まぁ最後の体育祭で、しかもアンカーだしな」


 嘘である。

 本当は、最後の体育祭だから緊張しているわけじゃない。


 ――鈴本さんにダサいところを見せられない。


 そのプレッシャーのせいだ。


 


「次の種目、縦割りリレーに出場する方は入場ゲートにお集まりください」


 アナウンスが校庭に響いた。


 僕が入場ゲートへ向かおうとした、その時。


「高村さん、頑張ってね!」


 後ろから声がした。


 振り向くと、そこには鈴本さんが立っていた。


「もちろんだよ! 応援よろしくね!」


「うん! 任せて!」


 その笑顔を見た瞬間、少しだけ緊張がほぐれた。


 


「続いては最後の種目、縦割りリレーです」


 アナウンスが流れる。


 ついに始まる。

 運命のリレーが。


 


 最初のランナーが位置につく。


「位置について――」


 一瞬の静寂。


「よーい——」


 


 パンッ!


 


 スタートのピストルが鳴り響いた瞬間、選手たちは一斉に走り出した。

 同時に、校庭の歓声も一気に大きくなる。


 僕はこの雰囲気が好きだ。

 歓声の中で、全力で走るあの感覚がたまらない。


 


 ランナーたちは次々とバトンを繋いでいく。


 そしてついに、アンカー前のランナーにバトンが渡った。


「今のところ1位が3組!2位が1組!3位が2組!そして少し離されている4位が4組です!」


 実況の声が響く。


 僕のクラスは4組。


 つまり――今はビリだ。


 


 差はなかなか縮まらない。


 そしてついに、アンカーの元へとバトンが渡っていく。


 


 最後に、僕の番だ。


 


 バトンが僕の手に渡る。


 歓声のボルテージが一気に上がった。


 ――ここからが勝負だ。


 


 僕は一気に加速する。


 まず、3位の2組を抜いた。


 そのまま2位の1組も抜き去る。


 


 残るは、1位の3組だけ。


 


「4組のアンカー速い!速すぎる!このまま1位まで抜き去ることはできるのか!?」


 


 さらに加速する。


 残り30メートル。


 差は――約1メートル。


 すぐ目の前だ。


 でも、相手のアンカーも速い。


 もう無理かもしれない。


 そう思った、その時。


 


「高村さーーん!!頑張れーーー!!」


 


 鈴本さんの声だ。


 


 その声を聞いた瞬間、体に力が戻った。


 僕は最後の力を振り絞る。


 目の前の背中を、必死で追いかけた。


 


 そして――


 


「ゴーーール!!」


 


「1位と2位はほぼ同着だー!これはどちらが勝ったかわからないぞー!」


 


 僕はほぼ同時にフィニッシュした。


 結果は――


 


「判定の結果、1位は……4組です!」


 


 歓声が上がる。


 僕は、見事1位を取ることができた。


 これで少しは……鈴本さんに振り向いてもらえるだろうか。


 


 一方その頃、観客席では。


 


「高村さん速かったね!」


 鈴本さんが言った。


「そうだね。あいつは本当にすごいよ」


 健が答える。


「鈴本さん、応援すごかったね」


「高村さんと、応援頑張るねって約束したから。内村さんも応援すごかったね!」


「まぁ親友だからね。勝ってもらわないと困るよ」


 健は笑った。


「それに、あんな可愛い子に応援されたら負けられないよな」


 


 鈴本さんは、少し照れたように笑った。


「ふふ、ありがとう。高村さんが帰ってきたらお祝いだね!」


「そうだね。久しぶりにあいつを褒めてやるか」


 二人は小さく笑い合った。


 


 僕が観客席に戻ると、クラスのあちこちから声が飛んできた。


「高村ナイスラン!」


「すげーじゃん!」


 


 その中で鈴本さんが言った。


「高村さんお疲れ様!かっこよかったよ!」


 


 その言葉に、僕は思わず顔を赤くする。


「ありがとう!鈴本さんの応援のおかげだよ!」


「私の応援、届いたならよかった!」


 


 この日のために努力してきてよかった。


 やっぱり努力は裏切らない。


 


「お疲れ、瑛太。お前ほんとすげーよ!」


 健が笑う。


「ありがとう。健がそんなに褒めてくれるなんて久しぶりだな」


「今日はほんとにかっこよかったからな!」


 


 二人で笑い合う。


 


「これで鈴本さんとの距離も縮められたね」


 水原が言った。


「ちょっと声でけーよ!」


「ごめんごめん、つい」


「気をつけろよ。水原しか俺の事情知らないんだから」


「りょー」


「また信用できないりょーきた」


「信用してくれよー。まぁそんなことより、まだ油断するなよ」


「うん、わかってる。アドバイスありがとうな」


 


 こうして僕は――


 自分の未来が少し明るくなった気がした、最高のリレーを走り終えた。


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