第3話 委員会決めと運命の体育祭前夜
鈴本さんに話しかけることができてから、二週間が経った。
今では鈴本さんと、たまに話すくらいには関わりを持つことができている。何もできなかったあの頃に比べれば、これはかなりの成長だと思う。
四月が終わろうとしていた頃、クラスでは委員会決めをすることになった。
「鈴本さんは何か委員会に入るの?」
僕がそう聞くと、鈴本さんは少し考えてから答えた。
「んー、色々忙しいし私はパスかな」
「そーなんだ」
どうやら鈴本さんは委員会には入らないらしい。鈴本さんが入らないなら、同じ委員会で活動することもできない。
正直、入るメリットはあまりない。
でも僕は一応、一年の頃からずっと保健委員会に入っていた。だから今年もその流れで入ろうと思う。委員会は男女一名ずつなので、僕ともう一人の女子が一緒に担当することになる。
そして見事、僕は保健委員になることができた。
女子の方は、水原陽奈という人に決まった。水原とは去年同じクラスで、委員会も一緒だったので、それなりに仲はいい。
委員会が決まって一週間後。
いきなり委員会の集まりがあったので、僕は水原と一緒に活動する教室に入り、席についた。
すると水原が突然こんなことを言ってきた。
「高村って鈴本のこと好きなんだよね?」
あまりに突然すぎて、僕は一瞬時間が止まった。
……なんで水原が知ってるんだ?
「べ、別にす、す、好きじゃないし」
「動揺しすぎだろ。その様子見てると図星だね」
確かに、ちょっと動揺しすぎたかもしれない。
ここまでバレてしまったら、もう隠しようがない。僕は小さく、縦に首を振った。
「やっぱりね。あんなに鈴本のこと見てたら誰でもわかるよ。あ、でもお前の親友は鈍いから気づいてないか」
「まぁね……。今のところ水原しか知らないんだから、誰にも言うなよ!」
「りょー」
……なんかめちゃくちゃ不安だ。
こんな軽い「りょー」で信用していいのだろうか。
「本当に言うなよ!」
「わかってるって。こう見えて私、口は硬いからさ!」
水原は自慢げに言ってきた。
正直、完全には信用できない。でも信用するしかないので、しょうがない。
「私は応援するから。頑張れよ!」
「りょー」
「あ、今私の真似した!」
「ごめんごめん」
僕たちはクスッと笑った。
……ああ。鈴本さんとも、このくらい自然に話せたらいいのにな。
あの会話から数日。
僕が鈴本さんに存分にアピールできる、学校の神イベント――体育祭まで残り三週間を切っていた。
なぜ存分にアピールできるのかって?
それは僕が、生まれつき足が速いからだ。
この武器を最大限に活かせるイベントといったら、体育祭しかないだろう。
そしてクラスでは、体育祭の縦割りリレーの代表を決めることになった。
縦割りリレーは、クラスで一番足の速い男女が代表になり、一年・二年・三年の同じ組でチームを組んで走る競技だ。
つまりこれは――僕のためにあるような競技である。
さっそく学級委員が言った。
「縦割りリレーの代表を決めようと思います」
「男子はもう高村でいいんじゃね?」
クラスの男子が何人も僕を推してくる。
……まじでナイスだ。
「じゃあ男子は、高村がOKなら高村で決定でいい?」
「大丈夫だよ」
みんなありがとう。声には出さないが、心の中で感謝した。
「さすがに男子は高村さんだよね!」
鈴本さんが僕に言った。
「あ、え? わかってたの?」
「それはそうだよ! だって一昨年と去年も縦割りリレーでダントツで速かったじゃん!」
「知ってたんだ! 今年も任せてね!」
「頼むよー! 私は大きな声で応援させてもらうね!」
「本当に!? ありがとう、頑張るね!」
これは嬉しすぎる。
僕のことを一年の頃から知ってくれていたなんて。
しかも鈴本さんが応援してくれるなら、いつもの何倍も速く走れる気がする。
しかも三年なので、僕はアンカーでバトンを受け取ることになる。
もしここで一位を取ることができたら――
きっと鈴本さんも、僕のことを意識してくれるはずだ。
……うん。完璧だ。
そして体育祭当日。
今日のリレーは、僕の中学生活で一番大事な瞬間になる。




