第76話 激突
バーミリオ平原——8月14日
夏の陽光が低草を照らしていた。
朝にもかかわらずむわっとした熱気が漂う。
風が草の匂いを運んでくる。
両軍はバーミリオ平原の街道にて南北に対峙していた。
街道の西側には深い森が、東側には川が流れていた。
王国軍は反乱軍の王都行を阻止すべく、多数の馬防柵を構築していた。
南側にある三つの高台の一角にモルグレンの本営があった。
モルグレンは本営から戦場を見渡した。
「ボンノーとやらは国を救ったそうだが怪しいものよ」
「この兵力差にもかかわらず野戦を選ぶとは愚か者である証左よ」
「戦う前に勝敗は決しておるわ、ふはははは」
モルグレンは低い声で笑った。
横に控えるダルモットが報告を上げる。
「陛下、奸賊どもの後方に巨大な魔道具が控えていると斥候より報告が上がっております」
「巨大な魔道具じゃと」
「はい、奸賊どもは大和と称しているようです」
「攻撃用の魔道具ならなぜ前線に出てこぬのだ?」
モルグレンはしばし考えた。
「して、魔道具との距離は?」
「約30kmほどかと」
「距離から考えるに魔道具とやらが前線に出てくるのは三日後だ」
「その頃には、我らは10万の大軍となっておる」
「大軍で囲み破壊すればよい」
「斥候を増やせ」
「はっ、直ちに手配いたします。陛下」
ダルモットは一礼すると退出した。
◆ ◆ ◆
午前八時——
「おおおおおおお」
反乱軍より鬨の声が上がる。
反乱軍側の重装歩兵が盾衾を並べて進撃してきた。
「放てー!」
黒鉄鋼で強化された重バリスタから数百の黒鉄矢が発射された。
ヴォォォォォォォォン
盾衾に激突。
「ぐわぁぁぁぁ」
盾衾を貫いて歩兵が串刺しになりながら吹っ飛ばされる。
「第二射、放て―!」
反乱軍側の盾衾が次々と崩壊していく。
「やった、やったぞー!」
王国軍から歓声が上がる。
午前十時——
「引け―、後退だ!」
反乱軍側の重装歩兵が後退していく。その後、両軍のにらみ合いが続いた。
◆ ◆ ◆
モルグレンの本営——
「あのバリスタは厄介だな」
「馬防柵を破壊しなければ騎兵は使えぬ」
「攻城用投石機を出せ」
モルグレンはダルモットに指示をだした。
「はっ直ちに」
ダルモットは一礼し足早に退出した。
◆ ◆ ◆
午後二時——
ヴォーーーーン、ヴォーーーーン
反乱軍側の投石機から多数の巨石が発射された。
「ぎゃあああああ」
重バリスタに当たり破壊される。兵の血しぶきが飛ぶ。
「放て―!」
重バリスタから投石機に向けて黒鉄矢が発射される。
数十が投石機に当たり破壊される。反乱軍側の兵は黒鉄矢に無残にも貫かれる。
投石機と重バリスタの砲撃の応酬が続く。消耗戦が繰り広げられる。
午後五時——
反乱軍側は投石機を後退させた。それ以降、夜までにらみ合いが続いた。
王国側は半数の重バリスタが破壊され、五百名の死傷者を出した。
王国側に重い空気が立ち込める。
◆ ◆ ◆
モルグレンの本営——
「消耗戦になった時点で我が方の勝ちだ」
「奸賊どもの命は明日刈り取るとしようぞ」
モルグレンは不敵に笑った。
明日が自身の最期の日となるとも知れずに————
続く




