第68話 ロシナンテ
トントントン、カツン
内装工事の音が聞こえる。
私はロシナンテを連れて店の前までやってきた。
「こんにちは」
私は声をかけた。
奥からティア、ファム、レイナ、ガロンが一斉に振り向いた。
一同は少し驚いた様子で私を見つめた。
「姐さん、ご無沙汰しています」
ガロンは頭を下げた。
「ミサカ、来てくれたの」
ファムが私の肩に乗る。
「ミサカさま、どうかされたのですか?」
ティアとレイナが駆け寄ってきた。
「久しぶりにお店の様子を見ておこうと思ってね」
「ガロン、進捗状況はどうかしら?」
「八月上旬には完成できそうです」
ガロンは頭を上げて答えた。
「よろしくお願いするわ、ガロン」
「任せてください、姐さん」
ガロンは胸を叩いた。
「ミサカさま、その馬は?」
レイナはロシナンテに気づく。
「この馬はロシナンテっていうのよ」
「懐かれちゃってね、あはは」
「成り行きで買ってしまいました」
私は苦笑いをする。
「ミサカさまは、動物にも愛されるのですね」
レイナは微笑んだ。
「ミサカさま、今日はロシナンテに乗って帰られるんですか?」
「私、馬に乗ったことないからどうしようか迷っているのよ」
私は頭を抱える。
「レイナ、ここは私とファムとガロンさんでやっておくから、ミサカさまに馬の乗り方を教えてあげなさいよ」
ティアがレイナの背中を叩く。
「ティア、いいの?」
「いいって、いいって」
ティアはにこやかに微笑む。
「ミサカさま、差し支えなければ私が馬の乗り方を教えましょうか?」
「いいの?」
レイナは頷いた。
「ありがとう、レイナ」
私は微笑んだ。
「では、ミサカさま。城外へ向かいましょう」
私はロシナンテの手綱を握ってレイナと共に城門の方へ向かった。
◆ ◆ ◆
王都近郊の草原——
夏の日差しが草原を照らす。
草の匂いが鼻につき、汗が額から流れ落ちる。
「ミサカさま、まず鐙に足をかけて…」
レイナが説明を始めるとロシナンテが屈んだ。
「この子、ミサカさまが乗りやすいように屈んだのですか?」
レイナは驚く。
「私が手綱を持っていますので、ミサカさまはロシナンテに跨ってください」
「そ、そうね。わかったわ」
私はロシナンテに跨った。
すると、ロシナンテはゆっくりと立ち上がった。
「この子、ミサカさまのことを思って——」
レイナはロシナンテの目を見つめた。
「ヒィン」
ロシナンテが甘い鳴き声で応える。
手綱を持ちながらレイナは私を見て言った。
「ミサカさま、今は乗ることに集中してください」
「えぇ、そうするわ」
私は乗ることに意識を集中した。
(初めて馬に乗ったけど——こんなに簡単に乗れるものかしら?)
(いえ——ロシナンテは私のために乗りやすくしてくれているんだわ)
「では、このままローレシアの領主館まで帰りましょう」
パカパカパカパカ
私はロシナンテに跨って、ゆっくりと領主館へ向かった。
続く




