第67話 帰還、そして
7月15日早朝——
大和は無事に航海を終えリヴィエラに戻ってきた。
大和後部甲板から飛行ドローンに乗り込み、武蔵御殿の後部甲板に着陸した。
「おかえりなの、ミサカ」
ファムが私の肩に乗ってきた。
「おかえりなさーい」
ティアが手を振る。
ティアはレイナに駆け寄り肩を組んだ。
「ただいま、ティア」
レイナが微笑む。
「お姉ちゃん」
ティティがヴィヴィに抱きついた。
「ティティは甘え坊さんなのさ」
ナターシャはティティの頭を撫でた。
「お帰りなさい、ミサカさん」
ムサシヒメが微笑んだ。
「ただいま、ムサシヒメ」
私はムサシヒメの頭を撫でた。
後部甲板では久しぶりの再会に温かい声が響き渡った。
◆ ◆ ◆
私は素早く朝食を終えて、王都へ向かった。
宰相執務室——
私、ボンノー宰相、ヤマトヒメと三人が机を囲んでいた。
私はノートパソコンを開き、報告を開始した。
ボンノーは両手を組み静かに報告を聞いていた。
「——以上で報告を終わります」
大和の浮揚実験の報告、資源回収の経緯、未確認飛行物体ユゥとの交戦の話を終えた。
ボンノーは静かに口を開いた。
「なるほど、大和は歩兵と同じ速さで陸上を移動できるものと推測します。これはリヴィエラにとって大きな戦力になります」
「次に、回収した資源からアスファルトとコンクリートの試製品の作成をミサカさんにお願いしたい。成功すればこの国にとって大きな転機となります」
「最大の問題は…」
「北方にはまだ未確認の脅威が存在する可能性がある——」
「ユゥなるものをルミナス魔導国が差し向けたものか、あるいは別の勢力のものか…」
ボンノーは顎を手で触りながら思案している。
「北から来た好戦的な飛行物体としか今のところ分かりません」
私は静かに答えた。
私は扶桑茶を手に取り一口飲んだ。
ズズズ…
私のお茶をすする音だけ聞こえていた。
しばらくして、ボンノーは顔を上げた。
「来月、ルミナス魔導国には正式な使節団を派遣することにしましょう」
「八月中旬までには使節団を派遣できるように努めます」
「使節団をサロス経由でルミナスへ送った後、大和とプリティームーンのみなさんには北方海域の調査をお願いすることになると思います」
「そのときはどうかよろしくお願いします」
ボンノーは頭を下げた。
「承知しました。ボンノーさん、頭を上げてください」
ボンノーはしばらくして頭を上げた。
「私もこのリヴィエラのため力の限り頑張ります」
私は力強く宣言した。
「ミサカさん、ありがとうございます」
「大一大万大吉です」
私は得意げに胸を張った。
「それは、海洋国家の礎を築いた三成公の旗ですね」
「一人が万民のために、万民は一人のために尽くせば、天下は太平(大吉)になる」
「いい言葉です」
ボンノーは微笑んだ。
「もし、関ケ原で家康が勝っていたらどうなっていたと思います、ボンノーさん」
「そうですねぇ。自分の予測ですが扶桑は開国しなかったのではないかなと——」
私は扶桑のことが分かる人がいることが嬉しかった。
しばらく扶桑の話をしたあと、私は宰相執務室を退出した。
◆ ◆ ◆
私は、王城を出て街中を歩き始めた。
開店準備している私のお店を久しぶりに見ておきたい。
「あれはミサカさま」
「きゃーミサカさまだわ」
私を見るや否や黄色い声援が聞こえてくる。少し恥ずかしい。
「ヒヒーン」
「こら、ロシナンテ!大人しくしないか!」
馬専売所で葦毛の馬が暴れていた。
「このじゃじゃ馬娘が!」
男が馬の制止に悪戦苦闘していた。
その時——
私とロシナンテの目が合った。
ロシナンテが男の制止を振り切り一目散に私のところへ駆けてきた。
「ちょっと待って」
私はとっさに回避の体勢をとる。
ロシナンテは私のところへ駆けてくると止まった。
「ヒーン」
と甘い声で鳴いた。
男が駆けてきた。
「ぜぇぜぇ」
男は私に気づいた。
「これはミサカさま、このじゃじゃ馬娘が失礼しました!」
男はロシナンテの手綱を握り引き返そうとするが、ロシナンテは動こうとしない。
「ちょっと待ってください」
私は男に話しかけた。
ロシナンテは再び甘い声で鳴いた。
「ミサカさま、申し訳ありません」
男は頭を下げた。
「すぐ退かせます」
男は手綱を懸命に引っ張るもののロシナンテは動こうとしない。
「待ってください。この娘、私になにか言いたそうだわ」
「え?」
私はロシナンテを優しく撫でてみた。
「ヒィン」と鳴くと地面に低く座った。
男は驚く。
「ロシナンテが、大人しくしているだと…」
男は少し考え、口を開いた。
「ひょっとすると、ロシナンテはミサカさまに主人になってもらいたいのかも——」
「ミサカさま、手綱をもって馬専売所まで来てくれますか」
「わかったわ」
私は手綱を持つ。
「ブルルルッ」
するとロシナンテは立ち上がった。そして大人しく私についてくる。
「あのロシナンテがよりによってミサカさまに懐くとは!」
男は少し思案した後、私に話しかけてきた。
「ミサカさま、ぜひロシナンテのご主人様になってもらえないでしょうか?」
「金貨一枚でかまいません」
男は手を揉んだ。
「買います」
私は即答する。
「ありがとうございます。ミサカさま」
「鞍などの付属品はサービスさせていただきます」
こうして、私はロシナンテと出会った。
「ヒィーン」
ロシナンテの鳴き声が街中に響いた。
続く
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