第57話 micot
6月18日——
領主館での書類仕事を終え、武蔵へ戻った。
◆ ◆ ◆
武蔵医療区画・夜。
私は海洋調査で得た試料の分析を行っていた。
まず、超重質石油を分析にかけた。
ピピピッ
『分析完了』
『天然ガス:微小』
『ガソリン:微小』
『灯油:微小』
『軽油:微小』
『重油:微小』
『アスファルテン類似成分:極大』
『毒性:ほぼ皆無』
『推奨される用途:道路舗装用アスファルト』
「アスファルトですって」
私は思わず声をあげた。
「micot、道路舗装用アスファルトのレシピを私のノートパソコンに転送してください」
『了解しました。転送を開始します』
(今は大雨が降ると道がぬかるみ幹線道路が使えなくなるけど……)
(アスファルトが実用化できれば、この国の物流は一新するわ)
私は少し考えた。
(海洋調査で見つけたのは火山島と石灰島)
(そこにあるもののといえば大量の火山灰と石灰石よね)
「micot、火山灰と石灰石で何か作れないかしら?」
ピピピッ
『ローマ式コンクリートの作成が可能です』
「!」
「micot、詳細を」
『古代ローマ時代の建築技術です』
『適切に配合すれば、数千年の耐久性を持ちます』
(数千年!?)
(実用化できたら建築技術が飛躍的に発展するわ)
「micot、ローマ式コンクリートのレシピも転送して!」
『了解しました。転送を開始します』
(このふたつを実用化できればこの国のインフラは激変するわ)
次に、石灰島で回収した光り輝く欠片を分析にかけた。
ピピピッ
『分析完了』
『徹甲神弾の金属と同一』
『オリハルコンです』
「オリハルコン!?」
私は息を呑んだ。
(あの石灰島で掘られていたのはオリハルコンだったのかもしれないわ)
◆ ◆ ◆
私は目を閉じ、この国の未来に思いを馳せた。
アスファルトで舗装された道路。
道路の外側にコンクリート製の排水溝が並ぶ。
これならば、雨が降ってもぬかるまないわ。
主要幹線道路は上下二本の道。
中央には鉄道を敷設できれば最高じゃないかしら。
幹線道路には一定間隔で休憩施設や特産品市場を開くのも悪くないわ。
(その頃の私はどうなっているかな?)
私は少し微笑んだ。
私も疲労が溜まっているのかしら、少し眠たくなってきたわ。
少し、休憩をとりましょう。
私は机に突っ伏した。
この国の未来の姿を想像しながら——
そして、そのまま朝まで眠りについた。
続く




