第56話 レイナマッサージ
トントンッ
「どうぞ」
「失礼します」
パタン
扉が閉まる。
レイナが私の部屋へ入ってきた。
「ミサカさま、マッサージをさせていただきます」
「お願いするわ、レイナ」
「はい!」
レイナは妙に気合の入った声で答えた。
レイナの小さな手が私の肩をつかんだ。
モミ、モミ。モミ、モミ。
トン、トン、トン、トン。
気持ちいい。
椅子に座りながらレイナのマッサージを受けた。
「では、ミサカさま——」
レイナの顔が少し赤い。
「?」
外で物音がしたような?気のせいね。
「ベットでうつ伏せになってください」
「えぇ…」
私はベットにうつ伏せになる。
「失礼します」
そういうとレイナは私に跨った。
(私、ミサカさまに跨っている!)
レイナの心臓の鼓動が早くなる。
レイナの手が肩、背骨の周りを押していく。
レイナの手が足先、ふくらはぎ、ふとももと揉んでくる。
(ミサカさまに、触り放題!)
「あのぉ、ミサカ様。お尻もほぐしてもいいでしょうか?」
「いいわよ」
「わかりました」
レイナは震える声で答えた。
レイナの手がお尻の筋肉を揉みだした。
モミ、モミ、モミ、モミ
レイナは頬を赤らめながらほぐしていく。
その時——
「あ」
極度の緊張のあまりレイナの手が滑った。
「ひぁ~ん」
私は思わず声を上げてしまった。
「ごめんなさい」
レイナは顔を真っ赤にしながら謝った。
外からクスクスと声を押し殺した笑い声が聞こえてくる。
「…」
私は起き上がり扉を開ける。
ドシャ、ドシャ、ドシャと三名がなだれ込んできた。
「これはどういうことかしら、ナターシャ」
「それに、ヴィヴィ、カルラまで」
私は腕を組んで三名を見下ろした。
「あたいは偶然通りかかっただけさ」
ナターシャは口を尖らせる。
「あたしも通りかかっただけだよ」
ヴィヴィの目が泳ぐ。
「うちはお姉さまとレイナのいちゃいちゃしてるところを見たかったのじゃ」
カルラは正直に答えた。
「カルラは正直ね」
私はカルラに微笑み頭を撫でた。
「えへへ、お姉さまに撫でられたのじゃ」
カルラは喜んだ。
「ナターシャ、ヴィヴィ、少しお話があります」
私はふたりを冷たい目に見つめた。
「あたいは用事があるんだった…のさ」
「あたしも——」
そういうと足早に二人は立ち去った。
「待ちなさい」
私は二人を追いかける。
「悪かったのさ、ミサカ」
「ごめん、ミサカさん」
「待ちなさい!」
こうして、艦内鬼ごっこが始まった。
◆ ◆ ◆
一時間後——
艦内鬼ごっこを終えて帰ってきた。
「流石は宮廷魔術師と守護神だわ」
「本気で逃げられると本当にやっかいだったわ」
私は呟いた。
そして部屋に戻った。
レイナは椅子に座って待っていた。
「ごめんなさい、ミサカさま」
「謝ることはないのよ、レイナ」
「マッサージとっても良かったわ、ありがとう」
「ほめていただき、ありがとうございます」
レイナは微笑んだ。
「扶桑には"失敗は成功のもと"という諺があります」
「だからレイナ、その体験はあなたをもっと強くする」
「だから、これからも共に頑張りましょう」
私はレイナの背中を叩いた。
「はい、ミサカさま」
レイナは元気な声で答えた。
◆ ◆ ◆
数日は何事もなく順調な航海だった。
「リヴィエラが見えてきたよ」
ヴィヴィが叫んだ。
「帰ってきたのじゃ」
カルラは陸に手を振っている。
「速力微速」
「地底湖へ向かいましょう」
「了解です、艦長」
王国歴300年6月16日、大和はリヴィエラへ帰ってきた。
続く




