第55話 リヴィエラへ
六月九日——
サロス村。
「プリティームーンが帰ってきたぞ!」
「本当だ、プリティームーンだ!」
瞬く間に人が集まってきた。
私は周囲を見渡し軽く手を振った。
「みなさん、おはようございます」
周囲の目が私に集中する。
「昨日、私達はリザーギンの本拠地を攻撃し、リザーギンをすべて駆逐しました」
歓声があがる。
「そして、その元凶たる首魁ゲーフボウイを討伐しました!」
「ゲーフボウイ?」
村民たちは初めて聞く言葉に動揺している。
「ゲーフボウイは、千年に渡り人を食らい続けていたタコの魔物です」
「リザーギンを使役し人を拉致していました」
ざわざわ…
「そんな悪魔が近くにいたなんて」
「千年も人を食らっていた化物って」
村民たちはただ私を見つめていた。
そして、沈黙が場を支配する。
◆ ◆ ◆
テツの声が沈黙を破った。
「つまりじゃ、お前さんたちはこのサロスや周辺の村を襲っていたリザーギンの脅威を排除したと?」
「そうじゃ、リザーギンはすべて駆除したのじゃ!」
カルラは胸を張った。
「おぉぉぉぉぉぉ」
「これからは、俺達は安心して漁に出られるのか」
「姉ちゃんたち、すげぇやー!」
マルは目を輝かせている。
大きな歓声が上がった。
私達のもとに一人の杖をついた老人が近づいてきた。
「私はこの村の村長をしているクルです」
クルは挨拶をした。
「この度はありがとうございました」
「これで皆、安心して仕事ができます」
「プリティームーンは村の救世主です」
サロス村の村長は深々と頭をさげた。
その日の夜は村あげての歓迎会が行われた。
◆ ◆ ◆
六月十日——
大和・第一艦橋
「あたいは、ルミナス魔導国という国に行ってみたかったけど、飛行ドローンの電池残量がほぼないからね。今回はあきらめるのさ」
ナターシャは肩をすくめた。
「食料はともかく、水の残量にも問題があります」
ヤマトヒメより報告が上がる。
私はみんなを見渡した。
みんなどことなく疲労していた。
「今回はここまでのようね」
「リヴィエラへ帰りましょう」
「ヤマトヒメ、お願いできるかしら」
「畏まりました。艦長!」
大和から汽笛が轟く。
ゆっくりと回頭しリヴィエラに向けて航行し始めた。
◆ ◆ ◆
「みなさん、お疲れ様でした」
「今回はいろんな発見がありました」
「その成果を胸にリヴィエラへ帰還しましょう」
一同から笑みがこぼれる。
私は話を続けた。
「リーダーとして一つだけしなければならないことがあります」
私はレイナに目を向ける。
「レイナ、ナターシャの機転がなければ——」
「あなたは死んでいるところでした」
「ごめんなさい」
レイナは俯く。
「誰にだって失敗はあるよ、ミサカさん」
ヴィヴィがレイナを擁護する。
「お姉さま、レイナを許してあげるのじゃ」
カルラが懇願する。
「私も昔はよく失敗しました」
「失敗は悪いことではない。反省し、それを糧に成長すればよいのです」
「ですが、今回は命にかかわるもの——」
「ゆえに、私はレイナに罰を与えます」
レイナの目が潤む。そして、私を見つめる。
一同が静まり返る。
私は目を閉じ考えた。
(扶桑であれば懲罰房にいれるのが決まりだけど)
(そんなことはできないわ)
そして、私は口を開いた。
「レイナには、みんなへマッサージの奉仕活動を命じます」
「まず、最初に私がマッサージを受けます」
一同がざわめく。
「お姉さま、それってば……ムググッ」
ミケケがカルラの口をふさぐ。
「黙っていることもレディの務めにゃ」
「分かりました。ミサカさま!」
レイナの瞳は輝いた。
続く




