第52話 草薙の剣
(よくしゃべるタコ頭ね)
私はゲーフボウイの様子を眺めている。
「喰う前に——ひ……」
ゲーフボウイの不快な独言が続く——
その時!
「雌ですって!」
「このセクハラ坊主!」
レイナは叫ぶと横に飛ぶ。
そして——
シュー、シュー、シューーーッ
弓三連をゲーフボウイに叩き込んだ。
「話は最後まで聞かんかっ!小娘がっ!」
ゲーフボウイから触手が伸びてくる。
カン、カン、カンッ
触手は弓矢を払いのけるとそのまま加速してレイナの胴に巻き付いた。
「きゃああああああ」
レイナの甲高い悲鳴。
触手はレイナを釣り上げた。
「なかなか心地よい悲鳴よ」
ゲーフボウイは目を細める。
ゲーフボウイの腹が上下に割れて、数十の牙が見えた。
ボタッ、ボタッ
腹の口から緑色の体液が垂れ下がる。
「レイナ!」
レイナはゲーフボウイの腹へ向かっていく。
「まずは一匹」
「黒ノ一式・エア!」
ナターシャの高速詠唱。
真空の刃を宙に出現させるや、ゲーフボウイの触手へ向けて飛ばした。
ヴゥゥゥゥーーン! スパンッ!
レイナを捕らえた触手が切断される。
触手から黒赤色の体液が飛散する。
ナターシャはグラビティロッドをレイナに向ける。
「黒ノ古式・グラビティ!」
地面に叩きつけられる寸前、レイナの体は浮き上がった。
ナターシャはグラビティロッドに念を込める。
レイナは、ナターシャのもとへ——
「きゃ!」
ナターシャはレイナを抱きとめた。
「ふう、危なかったのさ」
「ごめんなさい」
レイナは小さな声で謝った。
「今は戦闘に集中しましょう」
私はレイナの肩を叩いた。
◆ ◆ ◆
「ほぉ」
ゲーフボウイは不気味に微笑んだ。
「俺のロス(足)をカットするとはな」
「だが、一式魔法は何度も撃てまい」
「たかが一本、俺のロス(足)はまだ99本もあるぞ」
ナターシャが苦笑する。
「確かに奴の言う通りさ」
「あの触手は一式以上でないと切れない——」
私はナターシャの肩を叩いた。
「ゲーフボウイは硬いわね」
「おそらく草薙の剣でしか斬れない」
「だから、私がやります」
「ヴィヴィ、みんなを守ってください」
「守りは任せて!」
ヴィヴィは親指を立てた。
私は一歩前に出る。
「自ら進んで贄に志願するとは」
ゲーフボウイは私を見て嘲笑した。
私は草薙の剣を抜いた。
扶桑最強の剣。
刀身から神々しき青白いオーラが放たれる。
私は剣を構え、ゲーフボウイと対峙する。
そして静かに語りかけた。
「はじめまして、ゲーフボウイさん」
「私はミサカと申します」
「あなたは損が大好きなようなので——」
「私があなたをこの世界から損切させていただきますわ」
ゲーフボウイは私を睨みつける。
「身の程をわきまえず大言を吐くか、女よ」
「損切とは俺のような強者にしかできん行いよ」
ゲーフボウイは高笑いをする。
「まずはお前を食らって利を得るとしよう」
そういうとゲーフボウイは体が真っ赤になり変異していく。
ボゴッボゴッボゴーー おぞましい変異。
そして——
ゲーフボウイは99本の足がある大タコになった。
続く




