第50話 艦砲射撃
日が沈んだ。今日は月が出ていない。
暗闇が海を覆っている。
大和・第一艦橋。
「ここなのさ!」
ナターシャは水晶球のある一点を指さした。
「サロスから西南西約200kmというところかしら?」
「針路246、速力半速」
「了解しました。艦長」
大和は左に回頭し、やがて前進を始めた。
◆ ◆ ◆
六月八日——
時計の針は12時を指している。
「距離40000に島を発見しました」
「うちにはなにも見えぬのじゃ」
カルラは窓に顔を押し付ける。
大和の照明だけが周りを照らしていた。
「距離20000まで接近してください」
「了解しました。艦長」
大和は波を切り分け島に接近していた——
「距離21000!」
「距離20000!」
ナターシャが水晶球の海図に指差す。
「ここに大和をとめるのさ」
私は指示する。
「面舵一杯、針路335、速力微速」
大和が右に回頭を開始、島と水平になる位置に艦首を向けた。
「第一副砲に照明弾を装填!」
「全主砲に三式弾<桜花>を装填!」
ヤマトヒメより凛とした復唱が返ってくる。
ガチ、ゴゴゴゴコゴゴォ
「いよいよにゃ」
ミケケは左舷に回頭する主砲を眺めている。
「射撃諸元、入力完了」
「自動追尾装置、良好」
「誤差修正マイナス1度」
「艦長、発射準備完了です」
◆ ◆ ◆
私は号令した。
「照明弾、撃て」
ズギューーーン
照明弾が飛んでいく。
数秒後、島全体が真昼のように照らされた。
島には数百のミノムシ船、得体のしれない構築物が照らし出された。
「真昼のように見えたのじゃ」
カルラはずっと窓に顔を押し付けている。
水晶球には島の様子が映し出されていた。
「ミノムシ船がこんなにたくさん……」
レイナの顔が少し青くなる。
「なにあれ、気持ち悪いよ」
ヴィヴィが構築物を指さした。
「目標、ミノムシ船」
「全主砲、三式弾<桜花>撃て!」
ズギュ——
ガ、ガガガカガーーーン
主砲より、三式弾が発射された。
数秒後、三式弾が爆散し、花びらのような破片が舞い散る。
ヒューーーーゥゥゥ、ズシャン
ミノムシ船群から火の手が上がる。
「第二射、撃て!」
ミノムシ船群の延焼範囲が広がる。
「第三射、撃て!」
今度は地上構築物に対して三式弾が撃ちこまれる。
構築物が炎上を始めた。
「照明弾、第二射撃て!」
ズギューーーン
再び、島全体が真昼のように照らされた。
私は命じる。
「島の周囲を回りながら三式弾を撃ちこみます!」
「了解しました。艦長」
大和はゆっくりと島を周回し始めた。三式弾が放たれる。
ズギュ——
ガ、ガガガカガーーーン
主砲を撃つたびに大和が揺れる。
地上の炎上範囲が広がっていく。
一周回るころには、島全体が炎に包まれていた。
「撃ち方止め!」
「しばらく様子を見ます」
私は指示をだした。
◆ ◆ ◆
朝。
朝日が大和を照らし始めた。
「朝日と大和、美しいのさ」
ナターシャが陽光で輝く主砲を眺めている。
私は島を眺める。
各所で煙が上がっている。
黒焦げの大地。
もはや、なにもなかった。
私は軍帽を深く被り直し目を閉じた。
(三式弾、扶桑が生み出した恐るべき兵器——)
(その使用には細心の注意が必要ですね)
私は目を開ける。
「リザーギンは駆除できたようね?」
私はヤマトヒメに尋ねる。
「はい、リザーギンの生命反応はありません」
「ですが——」
「ですが?」
私はヤマトヒメを見つめる。
「これは戦女神として感じるのです」
「この島の奥になにかいると——」
ヤマトヒメは水晶球に映像を映し出す。
「!」
そこには、禍々しい社があった。
私は命じた。
「第一主砲、一門に徹甲魔弾を装填——」
「目標、社!」
第一主砲が旋回し、社に照準を合わせた。
「撃て」
私は静かに言った。
第一主砲から徹甲魔弾一発が発射された!
続く
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