第47話 新大陸
後部甲板。
「今からあんたたちの船を引き上げるのさ」
ナターシャが呼びかける。
「引き上げるじゃと?」
白髪の老人は唖然としている。
「じいちゃん、この船すごいよぉ」
少年の瞳は輝き、食い入るように大和を見ていた。
「しっかりつかまっているのさ」
ナターシャは重力魔法で船を浮かせる。
「船が浮いとる——」
「わあ、ほんとに浮いている!」
二人を乗せた小船は短艇の格納庫にゆっくりと収納された。
短艇格納庫。
「うちはカルラじゃ」
カルラは偉そうに言った。
「はじめまして、私はレイナです」
レイナは礼儀正しくお辞儀をした。
「僕はマル、よろしくね」
栗毛の少年が手を振った。
「マルというのか、よろしくなのじゃ」
カルラは手を差し伸ばす。マルはその手を握り握手をした。
その様子を微笑ましく見ていた老人が口を開いた。
「わしの名は、テツという。マルはわしの孫じゃ」
「若い娘さんたちじゃのぉ。ところでこの船に船長はおられるのか?」
テツは質問する。
「若いじゃと、うちは4000年生きておるのじゃ!」
カルラは自慢げに話す。
「4000年じゃと?」
テツは苦笑いをする。本気にはしていないようだ。
「では、皆さんを艦長のところへご案内します」
レイナは微笑む。
◆ ◆ ◆
第二艦橋会議室。
「失礼します」
扉越しにレイナの声が聞こえる。
「どうぞ」
私は言った。
扉が開く。
「はじめまして、私はミサカです」
「この艦の艦長をしております」
「はじめまして、僕はマル。よろしくね」
「わしはテツじゃ」
一同は挨拶を交わした。そして、着席する。
ヤマトヒメがお茶を配っている。
◆ ◆ ◆
「あんたたちに助けられた。感謝じゃ!」
テツは頭を下げた。
「マル、お前も下げんかい!」
マルも慌てて頭を下げる。
「頭を上げてください」
私は言った。
彼らは頭を上げた。
「まず、あなたたちのことを聞かせてもらえませんか?」
私は優しく尋ねた。
テツは咳払いをしたあと、ゆっくりと話し始めた。
「わしはサロス村で漁師をやっておる」
「運悪くリザーギンに見つかってしまってのぉ」
「追われておった」
「お前さんたちが来なければ——」
「攫われてピラーラの餌になっていた……」
「感謝じゃ」
テツは再び礼を述べた。
「吾輩、魚は大好きにゃ」
「だけど、ピラーラだけはまずくて大嫌いにゃ!」
ミケケの耳が下がる。
マルは興味津々な目で周りを見ている。
「マル、落ち着かんか!」
「じいちゃん、この船、見たくて仕方ないんだ!」
マルの目が輝く。
(どこの世界でも男の子はこういうものが好きなのね)
「ヴィヴィ、カルラ、レイナ。マルさんにこの船を案内してあげて!」
「わかりました。ミサカさま」
「マルさん、こっちだよ」
ヴィヴィは手招きする。
「やったー!」
マルは喜ぶ。
そして、ヴィヴィたちと艦内冒険に出かけていった。
◆ ◆ ◆
「わしもお前さんたちのことが聞きたい」
「お前さんたちは何者じゃ?」
「私達はプリティームーンという冒険者パーティーです」
「海の向こうリヴィエラという国からやってきました」
私は丁寧に答える。
「ほぅ、海の向こうに人が住んでいたとはのぉ」
テツは顎に手を当てる。
「この巨大な船はなんじゃ?」
「この船は大和と言います。故あって、リヴィエラ海軍に所属しております」
「大和か。いい名じゃな」
テツは静かな声でいった。
「テツさん、サロス村について聞かせてもらえませんか?」
私は落ち着いた声で尋ねた。
「サロスは小さな漁村じゃ」
「ここから北東に行ったところにある」
「私達もサロス村へお邪魔してもかまいませんか?」
「命を救ってくれたのじゃ、あんたたちなら大歓迎じゃ」
「サロスに来てくれ、わしも恩に報いたい」
「ありがとう、テツさん」
私は微笑む。
「サロス以外にも町や村はありますか?」
「ある。サロスと同じような漁村、内陸部には町……」
「そして、サロスから北東に進むとルミナス魔導国がある」
「ルミナス魔導国とは?」
「魔女が統治しておる。わしはこの目で見たことはないがのぉ」
「魔女? あたいはルミナスってところに興味が出てきたのさ」
ナターシャが関心を示す。
テツと話は続いた。リザーギンについては目新しい情報はなかった。
「では、テツさんたちをサロスまで送り届けます」
「私達も後でお邪魔します」
「わかった。待っとるよ」
テツは頷いた。
「ヤマトヒメ、針路の設定お願いできるかしら?」
「お任せください、艦長」
ヤマトヒメは第一艦橋へ駆けて行った。
◆ ◆ ◆
夕方。
「艦長、大陸が見えます!」
大陸が見える。
「あれがサロスじゃ」
テツは指さした。
「ついに新大陸を発見したわ!」
私は思わず声をあげてしまう。
艦橋の中は歓喜に包まれた。
「ヤマトヒメ、リヴィエラからの距離は?」
「2186kmです」
後部甲板。
サロスの沖合でテツたちの船を降ろす。
「明日、お伺いします」
私は声をかけた。
「待っておる」
「待ってるよ、姉ちゃんたち」
月が昇り始めていた。
波の音が静かに聞こえていた。
明日、私達は新大陸に上陸する。
続く
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