第42話 未踏破領域へ
六月四日——
ドルラーガ島を通過。
「針路000」
私は指示を出す。
「針路000、了解!」
ヤマトヒメより凛とした復唱が返ってくる。
(いよいよ、未踏破領域——)
大和は、北へ進んでいく。
青い海がどこまでも続く。
◆ ◆ ◆
三時間後。
「ミサカさま、海に黒い筋があります」
窓を眺めていたレイナが報告した。
カルラが窓に駆け寄る。
「確かに黒いのじゃ」
青い海に黒い筋が混じり始めた。
(まさか、石油?)
(可燃物だとしたら危険だわ!)
「針路300。取り舵20」
私は回避の指示を出す。
ヤマトヒメより復唱が返ってくる。
「どうしたのさ、ミサカ?」
ナターシャが艦橋へ上がってきた。
「大したことないわ」
「万が一に備えて回避したのよ」
「あの黒い筋はなんなのさ?」
「推測だけど石油かもしれないわ」
「石油?」
「そうね、初めて見るものだったわね」
私は少し考える。
「燃える液体というところかしら」
「燃える液体?」
ナターシャは顎に手を当てて考えている。
「なるほど——」
「だから回避したの」
私は答える。
「敵じゃなくてよかったのさ」
「今、ヴィヴィは二日酔い、ミケケは食いすぎで寝込んでいるからね」
ナターシャは苦笑いをした。
「で、ミサカ。どうするのさ?」
ナターシャは私を見つめた。
「調査するわ」
「黒い液体の採取と源泉の確認をね」
◆ ◆ ◆
後部甲板。
「またミサカの新しい魔道具なのさ?」
ナターシャは調査ドローンを見つめる。
ヴィーン——
「いきます」
私は調査ドローンを飛ばした。
「かわいい魔道具が飛んで行ったのじゃ」
カルラは喜ぶ。
「ミサカさまの魔道具はどれも素敵です」
レイナはドローンを見つめている。
「さ、艦橋に戻りましょう」
「操作はそこでするわ」
私たちは艦橋へ戻った。
◆ ◆ ◆
第一艦橋。
私はパソコンを開きドローンを操作する。
「魔道具に景色が映っておるのじゃ」
カルラは興味深々にのぞき込む。
「この魔道具もすごいです」
レイナはパソコンを見つめた。
「黒い筋が太くなっているのさ」
ナターシャは私の後ろから声をかけた。
「島が見えるわ」
私はモニターを指さす。
黒い筋は太くなり、やがて島が見えてきた。
「なにもないのさ」
その島は地面が露出しており動植物の姿はなかった。
ドローンは源泉を目指して進む。
「黒い水たまりがあるのじゃ」
そこには黒い湖があった。
ボコッ ボコッ ボコッ
泡がゆっくりと湧き出ている。
「こんな風景、初めて見ます」
レイナは食い入るようにモニターを見つめた。
私はドローンに分析の指示をだした。
データが表示される。
『大気ニ微小ナ有害物質ヲ確認』
『人体ヘノ影響。ホボ無シ』
(石油ならば毒性が高いはず——なのに?)
私は首を傾げる。
私はドローンに黒い液体の採取を指示した。
ドローンより細い管が排出され採取は完了した。
調査を終えたドローンに帰還指示をだした。
◆ ◆ ◆
私は採取した検体を携帯調査キットにかけてみる。
『毒性微小』
『超重質石油ト酷似』
と表示された。
「詳しくは帰ってからね」
私は島を黒油島と命名した。
未踏領域での最初の発見——それは黒い湖だった。
大和は再び北へ針路を取る。
この先に、何が待っているのか。
続く
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