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異世界を助けに行ったら草薙の剣と戦艦大和があったので私TUEEEします ~ミサカさまがいく~  作者: wok
プリティームーン結成

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第4話 論功行賞

王国歴300年2月14日——


リヴィエラ王国建国記念日。


王宮・大広間。


リヴィエラの貴族、市民の代表が集まっていた。


今日は去年の戦いの論功行賞が行われる日だ。


私——ミサカは、クレア陛下の御前で跪いている。


陛下のお腹が、少し膨らんでいた。


妊娠して四ヶ月目。


(ボンノーさん、リアジューだわ)


クレア陛下が凛とした声で告げる。


「まず、ヨコマール枢機卿に組していた者たちの処遇について——」

「裁定を下す」


一同が息を呑む。


「余とてヨコマールが化物であるとは思っていなかった」

「そなたらも化物と知らずに親交を深めていたのであろう」

「よって今回は、不問とする」

「今後ともリヴィエラに尽くすように」


どよめきが広がる。


ヨコマール派は貴族の大半を占める。


処罰すれば、内乱は避けられない。


苦渋の——しかし現実的な判断だ。


クレア陛下の視線が鋭くなる。


「では、論功行賞にはいる」


クレア陛下が私に視線を向けた。


「プリティームーンリーダー、ミサカ」


「はっ!」


私は姿勢を正す。


「貴殿は、ヨコマール及びヤツマタノオロチ討伐において多大なる功績をあげた」

「そして、古代竜ドルラーガを倒し、その財宝を我が国に寄付し——」


クレア陛下が一拍置く。


「国家財政をも救った」


静寂。


「ゆえに、余はミサカにリヴィエラ爵位・子爵を与える」


「!?」


「セレスティア州ローレシア群に所領を与える」


「金貨五千枚を与える」


「以上である」


破格の報酬にどよめきが広がる。


(子爵で所領持ち……億り人って!)


でも表情は崩さない。


艦長の威厳は大事だ。


「謹んでお受けいたします、陛下」


私は深々と頭を下げた。


どよめきが室内に満ちる。


「やったぁ! ミサカさん、子爵だよ!」


ヴィヴィが飛び跳ねている。


「おめでとうなのさ、ミサカ」


ナターシャが微笑む。


「流石は、うちのお姉さまなのじゃ!」


カルラも嬉しそうだ。


「ミサカは貴族様にゃ」


ミケケの尻尾が揺れている。


(みんな、喜んでくれてる……)


私は温かい気持ちになった。


◆ ◆ ◆


その中で——


一人、冷たい視線を向ける男がいた。


モルグレン公爵。


小太りで、下品なほど装飾された服を着ている。

五十代の男だ。


(どこの馬の骨か分からぬものが)

公爵は内心で毒づく。


(国を救ったという理由だけで王配・宰相をしておる)

(しかも教皇まで妻にしているというではないか)


視線がミサカに向く。


(さらに、冒険者風情に爵位を与えるとは)

(小娘も好き勝手にこの国を動かしておる)


公爵の口元が歪む。


(もうリヴィエラ王朝もここまでのようだな)


隣の貴族に小声で囁く。


「我らに与する貴族は国王派の三倍」

「国王派は先ほどの戦いで消耗しておる」

「それに対して我々は無傷——」

「兵力差も三倍、いや——もっと開いておるはずじゃ」


公爵が冷笑する。


(小娘を始末して、次の王はわしだ)

(あとは——いつやるか、じゃが)


「次」


クレア陛下の声が響く。


「エルンスト卿」


論功行賞は続いていく。


(冷たい視線を感じた——気のせいかしら)


◆ ◆ ◆


論功行賞が終わり——


私は控室で休んでいた。


「ミサカさん」


ボンノーが声をかけてくる。


「はい、なんでしょうか、閣下」


「少し、お話があります」


彼は真剣な表情だ。


「あとで一人で宰相執務室に来ていただけますか」


「……わかりました」


宰相執務室。


扉をノックする。


「宰相閣下、ミサカです」


「お入りください」


室内に入る。


ボンノーの執務机。

横にヤマトヒメの秘書机がL字で並ぶ。


部屋には、ボンノーとヤマトヒメがいる。


「まず、おかけください」


ボンノーがソファを勧める。


「失礼します」


私は座った。


ヤマトヒメが扶桑茶を淹れてくれる。


「どうぞ、ミサカさん」


「ありがとう、ヤマトヒメ」


湯気が立ち上る。


懐かしい扶桑の香り。


ボンノーが深々と頭を下げた。


「本当に、ありがとうございました」


「頭を上げてください、閣下」


「いえ——」


彼は頭を上げず、続けた。


「あなたのおかげで、この国は救われました」


◆ ◆ ◆


「ドルラーガの財宝を寄付してくださったおかげで——」


「この国の財政は蘇りました」


「……」


ボンノーが顔を上げる。


「そして——」


ボンノーは静かに告白した。


「妻にも言えなかったことがあります」


「戦後、財政状態を調べたのです」


ボンノーが深く息を吐く。


「ドルラーガの財宝がなければ……」


「この国は、三年以内に破綻していました」


「!」


私は息を呑む。


(国を救ったのに、救った国が財政破綻寸前だったなんて——)

(ボンノーさんは顔には出さなかったけど苦しかったんでしょうね)

(朝、リアジューだなんて思ってごめんなさい)


「それを——」


彼が俯く。


「即位したばかりで、妊娠までした妻には言えなかった」


「自分は、宰相として失格です」


「そんなことありません」


私は強く言った。


「閣下は、国を救ったんです」


「そして——」


私は拳を握る。


「クレア陛下を心配させまいと、一人で抱え込んでいた」

「それは、失格なんかじゃありません」


ボンノーの目が見開かれる。


「私も、この国を守ります」


私は真っ直ぐに彼を見た。


「協力させてください」


「ミサカさん……」


ボンノーが穏やかに微笑む。


「ありがとうございます……」


ボンノーもヤマトヒメも頭を下げた。


静寂。


ボンノーがお茶を一口飲む。


「実は、お話ししたいことが三つありまして……」


「はい」


私は姿勢を正した。


「まず——この国の現状についてです」


ボンノーが地図を広げる。


リヴィエラ王国とその周辺国。


「ヨコマールやヤツマタノオロチを退けました」

「しかし、この国は依然として安定していません」


彼の指が地図を指す。


「ヨコマールに与していた反国王派の貴族——」

「彼らは、国王派の三倍はおります」


「三倍……!」


私は驚いた。


「そして——」


ボンノーの指が東へ移動する。


「隣国のラルザス帝国」


「長年、我が国ともめております」


「ラルザスは皇帝の独裁が進み、軍備を拡大している」


「……」


私は地図を見つめる。


内憂外患。


まさにそんな状況だ。


「自分は——」


ボンノーが拳を握る。


「妻が生まれ、愛したこの国を守りたい」


その言葉に——


私の胸が、熱くなった。


「ミサカさん」


ボンノーが再び頭を下げる。


「……顔を上げてください」


私は答えた。


「私も、守ります」

「必ず」


ボンノーが微笑む。


「ありがとうございます」


◆ ◆ ◆


「二つ目は——内政の手伝いです」


ボンノーが別の地図を広げた。


セレスティア近郊の地図だ。


「ミサカさんの所領は、西の岬付近を中心とした約十ヘクタールです」


指が西の岬を指す。


「ここには大鳥居と転移陣があります」


「はい」


大和と武蔵へのアクセス拠点だ。


「整備してほしいのです」


「整備……ですか」


「ええ。周囲を壁で囲み、領主屋敷を建設してください」


「転移陣と地底湖の存在を秘しておきたいのも理由の一つです」


「確かに」


(大和と武蔵は、この国の最後の切り札)

(その存在を隠すのは当然ね)


ボンノーが真剣な表情で続ける。


「そして——」


「整備にあたっては、貧民街からの人間を重点的に雇用してほしいのです」


「貧民街から……?」


「ええ。金貨五千枚は、そういう意味合いも込めています」


ボンノーが微笑んだ。


「民が金を持てば、経済が回ります」

「よろしくお願いします」


「……なるほど」


私は頷いた。


「わかりました。そのように進めます」


◆ ◆ ◆


「三つ目は——」


ボンノーが少し照れくさそうに笑う。


「個人的な質問なのですが」


「はい、なんでしょう」


「ミサカさんは、扶桑ではどこに住まわれていたのですか」


「和泉です」


私は答えた。


「美多木神社の娘でした」


「そうでしたか……」


ボンノーが目を細める。


「閣下はどこに?」


「自分は、大煩寺で和尚をしておりました」


「!」


私は驚いて顔を上げる。


「明光池の畔にある大煩寺……ですか!?」


「ええ、ご存知でしたか」


「幼少の時、友達とよく遊びに行きました!」

私は興奮気味に言った。


「明光池で遊んで、大煩寺にも入って……」


そこで——記憶が蘇る。


(あの時、高齢の和尚がいた)

(穏やかな笑顔で、子供たちを見ていた)

(まさか……)


ボンノーが穏やかに微笑む。


「ミサカさんは、大煩寺近くの美多木神社の娘さんだった」

「そして、自分の兵学校時代の竹中教官のひ孫でもある」


「竹中教官……?」


「ええ。武蔵の前艦長です」


「!」


ボンノーが静かに言った。


「縁とは、分からないものですね」


「……本当に」


私は頷く。


(すごいめぐりあわせだわ)


明光池。

大煩寺。

老僧の優しい笑顔。


(あの人が……)


でも——


顔も年齢も違う。

確信は持てない。


それでも——


(運命的な、何かを感じるわ)


ヤマトヒメが微笑んだ。


「縁は不思議なものです」


「……そうですね」


私は小さく頷いた。


◆ ◆ ◆


宰相執務室を出る。


廊下を歩きながら、私は思う。


ボンノーさんとの縁。


そして、この国を守る使命。


拳を握る。


私は——異世界で生きていく。


この国を、必ず守る。


決意を、新たにした。


◆ ◆ ◆


武蔵御殿——


いつしか、"御殿"と呼ばれるようになった。


地上の転移陣から武蔵の前方甲板に転移する。


「おかえりなさい、ミサカさん」


ムサシヒメが出迎えてくれた。


「ただいま、ムサシヒメ」


私は微笑む。


「みんなは?」


「お風呂です」


「そう。私も行くわ」


大浴場へ向かう。


湯気が立ち込める中——


「ミサカー! おかえりー!」


ヴィヴィが手を振る。


「おかえりなのさ、子爵様」


ナターシャがニヤリと笑った。


「子爵様呼びはやめて……」


私は苦笑いする。


「お姉さま、お疲れ様なのじゃ」


カルラが湯船でぷかぷか浮いている。


「おかえりにゃ」


ミケケの耳が揺れた。


私は服を脱ぎ、湯船に浸かる。


「ふぅ……」


温かい。


この日常を守る。


この仲間たちを守る。


そして——ボンノーさんが愛する国を守る。


私は静かに目を閉じた。



続く

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