第39話 濃霧のち晴れ
六月二日——
海は霧で覆われていた。
「速力微速」
「周囲に警戒してください」
私は指示を出す。
「了解です。艦長」
ヤマトヒメは神力を大和に注ぎ込む。
大和の速力が徐々に低下していく。
「これじゃ、桃姫島は見えないね」
ヴィヴィは少し寂しそうな顔をする。
「この濃霧じゃ、しかたないのさ」
「あたいは部屋で魔導書でも読んでいるのさ」
ナターシャは艦橋を去っていった。
「あとは任せるにゃ」
ミケケも去っていった。
レイナは興味津々に窓の外を眺めている。
ヴィヴィとカルラは私の周りで遊んでいる。
大和はゆっくりと霧の中を北へ進んだ。
◆ ◆ ◆
六月三日——
霧が晴れる。
「水中に感あり!距離10000」
ヤマトヒメより報告が上がる。
魔導探信儀百式改が水中になにかをとらえたようだ。
「総員、警戒態勢!」
「取舵一杯!」
「針路、三〇〇!」
「戦闘速力!」
「各副砲へ徹甲推進弾装填!」
「目標、未確認水中群!」
私は号令する。
「了解しました、艦長!」
大和は速力をあげ、左に旋回。
副砲は右舷向けて旋回した。
艦橋に緊張が走る。
「敵影を水晶球に投影します」
ヤマトヒメが緊張した口調で言った——
「!」
「敵じゃないのさ」
ナターシャの表情が和らぐ。
「魚にゃ!」
ミケケの目が輝く。
ミケケが私に近寄る。
「ご馳走にゃ!はやく釣り上げるにゃ!」
ミケケの口から少し涎がこぼれている。
私はゆっくりと命じた。
「警戒態勢解除」
◆ ◆ ◆
「ミサカさん、魚釣りしようよ」
ヴィヴィが尋ねる。
「今日は魚を食べれる、のじゃ?」
カルラの首を傾げる。
「お魚いいですねぇ」
レイナは目をキラキラさせて私を見つめる。
私はしばらく考える。
そして口を開いた。
「そうね、息抜きも必要でしょう」
「ヤマトヒメ、魚群付近に針路をとってください」
「了解です、艦長」
大和は転舵した。
海には魚の影が見え始める。
「ヤマトヒメ、機関停止」
「バラストタンク注水」
私は命じる。
ゴォーーーー
バラストタンクへ注水が始まる。
甲板から海面までの距離が近づく。
「みんな、準備して前部甲板に集合!」
「今日は釣りを楽しみましょう!」
一同は了解の意を示した。
◆ ◆ ◆
前部甲板。
ヤマトヒメは割烹着に着替えて、魚をさばく準備をしている。
用意した机の上にはまな板、その横にポータブル冷蔵庫がある。
私は手を二度叩いた。
「では、今から魚釣りを始めましょう」
「ヴィヴィ、ミケケ、カルラ、レイナ」
「あなたたちは魚を釣ってください」
四名に釣り竿が渡される。
「私とナターシャは、皆さんの補助をします」
「今日の夜飯は魚料理よ!」
「釣って釣って釣りまくりましょう!」
「あたしの釣りをみせてあげる!」
ヴィヴィは竿を高く掲げる。
「魚は吾輩のものにゃ!」
「釣りまくるのじゃ!」
「やったことないけど、私、頑張ります」
そうして、釣り大会は始まった。
続く
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