第36話 領主の仕事IV
王国歴300年5月11日——
朝。
今日はナターシャがレイナを訓練している。
「レイナ、そこまでなのさ」
「ありがとうございます。ナターシャさま」
レイナはお辞儀をする。
「お疲れ様、レイナ」
「ありがとうございます、ミサカさま」
レイナは顔を赤らめる。
「レイナ、そろそろ行くよ」
遠くからティアが声をかける。
「今行きます」
そういうとレイナは駆けていった。
「あの子たちにお店を任せたんだ」
側にいたナターシャが私に聞いた。
「まだ、準備中だけどあの子たちなら大丈夫よ」
「ナターシャはどう思っているの?」
「ミサカの人を見る目は確かなのさ」
「あの子たちは華がある。あたいもいいと思っているのさ」
「そ、そうねぇ」
ナターシャに褒められたことに私は少し動揺する。
「みんなに伝えておいて、今日は各自自由にって」
「わかったのさ、ミサカ」
そういうとナターシャは武蔵御殿に帰っていった。
◆ ◆ ◆
「さてと——」
私はノートパソコンと測定器をもって内壁の外へ出た。
私は黒いロープを外堀予定地の内側に縄張りしていく。
夕方。
「よし」
黒いロープが四方に綺麗に張られている。
(いい感じだわ)
◆ ◆ ◆
王国歴300年5月12日——
王都、貧民街。
「あれは、ミサカさまだ!」
「ミサカさまぁ~素敵―」
私は微笑み、手を振る。
しばらくすると私の前に人だかりができた。
私は声を張り上げる。
「また、仕事の依頼で来ました」
「仕事内容は土を掘る仕事です」
「給金は一日銀貨二枚です」
「ぉぉぉ~」
どよめきが走る。
「働きたいと思う方は明日ローレシア群の領主館前に集まってください」
「皆さん、どうかお力をお貸しください!」
そして、私は頭を下げる。
「また、ミサカさまが俺達に頭を下げた——」
「俺たちみたいな与太者に頭を下げないでください、ミサカさま」
私は頭を上げる。
歓声が巻き起こった。
「おいらは絶対行きます」
「あたしも行くわ!」
「ミサカさまのためなら死んでもかまわねー!」
「では、皆さんローレシア群の領主館でお待ちしております」
「明日は掘って掘って掘りまくりましょう!」
私は拳を突き上げた。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
威勢の良い声が貧民街一帯に響き渡った。
◆ ◆ ◆
王国歴300年5月13日——
領主館前。朝。
早くも人があふれていた。
「わぁ、すごいのじゃ」
「ミサカの魅力はリヴィエラ一なのさ」
「ミサカ詣でにゃ」
昨日、全員に説明した。
今日から私たちの総力をあげて事業を行うわ。
私は一同に指示を飛ばす。
「ミケケ、労働者の皆さんに黄色いワッカを付けて回って」
「ヴィヴィはアルテ村へ向かって、現地でナターシャを補助」
「ナターシャは待機。あとで土砂の運搬をお願いします」
「ティア、レイナ、ファム、ムサシヒメはお昼ご飯の準備」
「カルラは私についてきて」
「ガロン、労働者たちの監督を頼むわ」
一同、了解し行動を開始した。
◆ ◆ ◆
「野郎ども行くぞ!」
ガロンが声を轟かせる。労働者とミサカ組をつれて東側の掘削地点へ向かう。
「カルラ、行きましょう」
「今日はお姉さまと二人きりで作業なのじゃ」
カルラは嬉しそうに微笑んだ。
私とカルラは西側の掘削地点へ向かう。
◆ ◆ ◆
午前九時。
両側で作業が開始された。
「掘って掘って掘りまくれ!」
威勢の良い声が東側から聞こえる。
◆ ◆ ◆
一方、西側の採掘地点。
「カルラ、作業が終わったら肉肉しい夕食よ」
カルラは目を輝かせる。
「頑張るのじゃ」
そういうとカルラは竜化した。
「カルラ、足で地面を掘ってみて」
私はカルラを見上げる。
「分かったのじゃ」
カルラは足を振り上げ地面を抉った。
ズシャァァァ
「えっ?」
私は唖然とする。
そこには、大量の土砂と穴が出来ていた。
(一度でこれほどの穴を掘れるなんて!)
「お姉さま、どうしたのじゃ?」
カルラは私に顔を寄せる。
「ぇえ、なんでもないわ。続けてカルラ」
「変なお姉さまなのじゃ」
カルラはガンガン掘る。瞬く間に外堀が出来ていく。
◆ ◆ ◆
ナターシャは土砂の塊をグラビティロッドで操作する。
土砂の塊は浮き上がる。
「ぉぉぉ、流石は宮廷魔術師さまだ」
歓声が上がる。
ナターシャはニヤリと笑う。
そして、グラビティロッドに跨ると土砂の塊とともにアルテ村へ飛んで行った。
◆ ◆ ◆
昼。
東側作業現場。
「ど、どうぞ」
レイナは顔を赤らめながら労働者に食事を配っている。
「こんなかわいいエルフの娘さんに食事をもらえるなんておら幸せだ」
「レイナちゃんのはにかむ表情かわいいわ」
「どうぞ!」
ティアは元気な声で食事を配っている。
「こっちの娘さんは元気があるねぇ。あたしも元気を分けてもらえそうだよ」
「ティアちゃんの笑顔はみんなを元気にさせるぞな」
ファムは労働者の間を飛んで踊りを披露している。
「妖精をこの目で見ることができるなんて夢みたいだ」
「ファムちゃん、かわいいわ」
「昼食をお持ちしました」
ムサシヒメも食事を配っている。
「あの男の子は落ち着いているねぇ」
「大きくなったらうちの娘を嫁にもらってくれないかしらね」
東側では楽しい昼食のひとときが過ぎていく。
◆ ◆ ◆
同時刻。
西側作業現場。
人型に戻ったカルラと私はお弁当を食べていた。
「お姉さまと二人きりなのじゃ」
カルラは口を空ける。
「しょうがないわね」
私は箸をとりカルラの口にから揚げをいれてあげた。
「はわわ、うまいのじゃ」
カルラの頬は緩む。
こちらも至福のひとときがゆっくりと過ぎていく。
◆ ◆ ◆
夕方。
今日の作業が終わる。
進捗状況は八分の一ほど。
ミケケは労働者から黄色いワッカを回収して、給金を渡していた。
ナターシャがヴィヴィをグラビティロッドに乗せて帰ってきた。
「お疲れ様なのさ」
「お疲れ様、ヴィヴィ、ナターシャ」
「アルテ村の進捗状況はどう?」
「ヴィヴィの指示とアルテ村の人たちのおかげで順調さ」
労働者は帰っていった。
「みんな、お疲れ様。お風呂入って肉肉しい夕食にしましょう!」
一同は頷き、転移陣へ向かっていった。
続く




