第35話 領主の仕事III
王国歴300年5月10日——領主館執務室。
L字型に並んだ机。
私は報告書に目を通している。
ムサシヒメは隣で暗算し結果を羊皮紙に書き込んでいる。
「カーヴェル村の件だけど——」
私はムサシヒメを見つめる。
「冒険者ギルドの反応はどう?」
ムサシヒメはペンを止めて私を見つめた。
「上手くいっています」
「ミサカさんの依頼と聞くと、喜んで受けてくれるそうです」
「そ、そう。順調ね」
私は窓を見つめた。
道路予定地の縄張りの縄が風に揺れている。
「ベルナ村の状況はどうなっているのかしら?」
「ガロンさんが隊を組織して治安維持に努めているようです」
私は微笑んだ。
「ガロン、頑張っているわね」
私は腕を組む。
「後はアルテ村ね」
「収穫量の減少は窒素不足、micotが分析していたわ」
「窒素不足は対策できる」
「収穫後、マメ科の植物を植えるように通達しておいて」
ムサシヒメは頷く。
そう言うとムサシヒメは羊皮紙を取り出しペンを動かし始めた。
「治水工事をどうするか——」
私は指で腕をトントンしながら考えている。
通達書を書き終えたムサシヒメが顔を上げる。
「僕の考えを聞いてくれますか?」
「ムサシヒメ、なにかいい考えがあるの?」
「はい」
「言ってみて」
「扶桑式堤防は土砂の確保と運搬が最大の問題です」
「ぼくはナターシャさんのグラビティロッドと……」
「カルラさんの竜の力をうまく使えば素早く作れるのではないかと考えています」
「!」
私は閃く。
ローレシア群の都市計画書の図面を広げる。
「外堀で掘った土を堤防に使えばいいんだわ!」
ムサシヒメは驚いた表情を見せた。
「流石はミサカさん、外堀も作れて堤防も作れるなんて僕には思いつかなかった!」
ムサシヒメは尊敬の眼差しを私に向ける。
私はムサシヒメの視線が嬉しかった。
私は立ち上がり、執務室を歩き始めた。今日は頭が冴える。
そして、妙案を思いつく。
私は机に座り、一心不乱に扶桑式堤防の配置図を書き始める。
数時間が経過——
夕陽が窓に差し込む。
私は配置図を書き終えた。
続く




