第22話 ウェスタル鉱山VI
私たちは武蔵御殿へ帰還した。
夕食を終え、入浴を済ませ——
午後7時。
会議室に集まる。
ここは艦隊司令部として使われていた部屋。
今はプリティームーンの会議室だ。
「お待たせなのさ」
藍色の浴衣を着たナターシャが入ってきた。
濡れた髪が首筋に張り付いている。
プラチナ色の髪と藍色の浴衣が——美しい。
(ナターシャ、すごく魅力的だわ……)
視線に気づいたナターシャが私を見つめる。
「あたいに惚れたのかい、ミサカ」
「ほ、惚れていません!」
私は慌てて否定する。
顔が熱い。
プリティームーン全員が揃った。
ムサシヒメが扶桑茶を淹れてくれる。
「ありがとう、ムサシヒメ」
私は礼を述べる。
「皆さん、頑張ってください」
ムサシヒメはお辞儀をして去っていった。
◆ ◆ ◆
「では、作戦会議を始めます」
私は宣言した。
全員の表情が——引き締まる。
ミケケが手を上げる。
「ミケケさん、どうぞ」
ミケケは耳をピコっと立てて話し始める。
「あの形状や火魔法が効いたこと、攻撃してこなかったことから推測したにゃ」
「今日のあの塊は草食性スライムの変異体だと思うにゃ」
どよめきが広がる。
「確かに」
ナターシャが頷く。
「あたいは思うのさ。あの塊は産むことに快楽を感じているように思えたのさ」
「あの喘ぎ声を聞けばわかるのさ」
(喘ぎ声で分かるって!)
私は少し顔を赤らめる。
ナターシャは私を見てニヤリと微笑んだ。
「そうにゃ」
ミケケが続ける。
「あの塊は産むことにしか興味はない」
「攻撃しなければ何もしないにゃ」
「あの塊自体は無害にゃ」
「でも、産み続けるとそれがやがてスタンピードになるんだよ」
ヴィヴィが言う。
「ヴィヴィの言う通りにゃ」
ミケケが頷く。
「自分の快楽で他人の命を奪っておる、あの塊はやっぱり悪いのじゃ」
カルラが拳を握る。
「自覚無き悪意さね」
ナターシャが静かに言った。
◆ ◆ ◆
私はしばし考え——決断した。
「あの塊を討ちます」
全員が私を見る。
「人の命を奪っている以上、放置はできません」
「ミサカさん……」
ヴィヴィが呟く。
「わかったのさ」
ナターシャが頷く。
「流石はお姉さまなのじゃ!」
カルラが拳を突き上げた。
「吾輩もミサカに賛成にゃ」
ミケケの尻尾が揺れる。
「だけど、どうやって倒すのさ」
ナターシャが眉をひそめる。
「あたいの魔力をすべて使っても一割しか駆除できなかったのさ」
「火が弱点なのは分かっているにゃ」
ミケケが耳を立てる。
「姐さんが十人いればいいんだけどね」
ヴィヴィが苦笑する。
「宮廷魔術師なんて十人もいないわよね……」
私は呟いた。
静寂。
その時——
カルラが目をまん丸にして、私を見つめていた。
「……カルラ?」
私は首を傾げる。
カルラがゆっくりと立ち上がる。
「お姉さま」
真剣な顔。
「うちがおるのじゃ」
「!」
一同が息を呑む。
「あの大空洞であれば、竜化しても問題ないのじゃ」
カルラが胸を張る。
「うちのブレスで——消し炭にしてやるのじゃ!」
「にゃ~、ドラゴンブレス……!」
ミケケの耳がピンと立つ。
「いける……!」
ヴィヴィが目を輝かせた。
「これは、明日楽しみなのさ」
ナターシャがニヤリと笑う。
◆ ◆ ◆
「そのためには、お姉さま」
少し照れくさそうに言う。
「いっぱい肉を食べたいのじゃ」
「竜のブレスは、たくさんの力がいるのじゃ」
私は微笑んだ。
「わかったわ、カルラ」
「今から用意しましょう」
その夜——
武蔵御殿の食堂では、特別な宴が開かれた。
テーブルには大量の肉料理。
ローストボア、ビーフステーキ、鳥の姿焼き——
「いただくのじゃー!」
カルラが豪快に食べ始める。
「カルラ、すごい食べるね」
ヴィヴィが目を丸くした。
「明日のために、力を蓄えるのじゃ!」
「頼もしいのさ」
ナターシャが微笑む。
私はヴィヴィを見た。
彼女は——少し複雑な表情をしている。
「ヴィヴィ」
「……うん」
ヴィヴィが顔を上げる。
「あの塊には——」
私は静かに言う。
「悪意はない」
「でも、放置すれば多くの命が奪われる」
ヴィヴィが頷く。
「わかってる」
拳を握る。
「父さんと兄さんの仇——とは違うけど」
「あたしは、もう誰も失いたくないんだ」
「だから——」
ヴィヴィが私を見つめる。
「あたし、必ずやり遂げる」
私は頷いた。
「ええ」
「明日、必ず決着をつけます」
明日——
ウェスタル鉱山、最終決戦。
続く




