第21話 ウェスタル鉱山V
第四層・大空洞。
巨大な内臓色の塊が——
大空洞の大半に張り付いていた。
ドクン、ドクン、ドクン……
脈打っている。
「ァああヴゥぅゥゥ……」
呻き声。
塊の割れ目から——
粘液にまみれたオーガが産み落とされる。
ゴボッ。
「あの塊はあたいらを認識しているだろうにさ」
ナターシャが呟く。
「攻撃してくる様子もない」
「興味すらないという感じなのさ」
ミケケが手で顎を支えながら思考する。
「おそらくは、認識すらしてないにゃ」
「ただの気持ち悪い肉の塊なのじゃ」
カルラが顔をしかめる。
(たしかに、不気味だわ)
「で、どうするのさ?ミサカ」
私は一同を見渡す。
「入り口付近で戦います」
「ナターシャは火魔法で攻撃を」
「陣形はいつもの布陣で」
全員が頷いた。
◆ ◆ ◆
ヴィヴィが前に出る。
盾を構えた。
私とカルラが中衛。
ナターシャとミケケが後衛。
「では、はじめるのさ!」
ナターシャが詠唱を始める。
「黒ノ二式・メガフレア!」
六つの火球が、空中に浮かんだ。
「肉は焼くに限るのさ!」
火球が——塊に向かって飛んでいく。
ドゴォォォォン!
火球が炸裂!
炎が塊を包んだ。
◆ ◆ ◆
「キシャアアアアアアアア!」
塊が——甲高い悲鳴を上げた。
ジュウゥゥゥ……
表面が焦げている。
煙が立ち上る。
「効いてるのじゃ!」
カルラが叫ぶ。
だが——
「全体の一割程度にゃ……」
ミケケの耳が伏せる。
その瞬間——
塊の表面に——
割れ目が増え始めた。
一つ、二つ、五つ、十——
「ァああヴゥぅゥゥ……」
「!」
「ゴボッ、ゴボッ、ゴボッ!」
割れ目から——
オーガとトロールが次々と産み落とされる。
十体、二十体、三十体、四十体、五十体——
「来るよ!」
ヴィヴィが盾を構えた。
◆ ◆ ◆
「ミサカ、いきます!」
私は駆け出した。
「黒ノ三式・エア!」
加速。
最初のオーガへ。
ズバッ!
首が飛ぶ。
次のトロールへ。
斬る。
「くらうのじゃー!」
カルラの拳が炸裂。
ドゴォン!
オーガの頭蓋が砕ける。
だが——
まだ来る。
数が増え続けている。
「きりがないのじゃ!」
カルラが叫ぶ。
「カルラ、通路まで後退!」
「わかったのじゃ」
私たちは——
通路まで後退した。
◆ ◆ ◆
ヴィヴィが前に立つ。
「神盾権能・ディバインシールド!」
蒼い障壁が展開される。
ドガァン、ドガァン!
オーガの拳が障壁に激突する。
「あたしが抑える!」
ヴィヴィの額に汗が浮かぶ。
「これは厳しいのさ……」
ナターシャが呟く。
私は少し考えて——
決断した。
「撤退します」
◆ ◆ ◆
「ヴィヴィ!」
私は叫ぶ。
「砕鳴衝波で敵の一掃を!」
「了解!」
ヴィヴィが叫ぶ。
「いくよぉぉぉ!」
「砕鳴衝波!!」
ズギォォォォォォォォンッ!!
蒼い衝撃波が放射状に広がる。
オーガ、トロール——
目の前の敵すべてが吹き飛ぶ。
ドガガガガガガッ!
ヴィヴィが盾を構え直す。
「まだ……やれる!」
「ミケケ!」
私は号令する。
「ホーリーウォールで入り口を遮断して!」
「わかったにゃ!」
ミケケが詠唱する。
「白ノ三式・ホーリーウォール!」
金色の障壁が——
通路と大空洞の間に形成された。
「ナターシャ、エスケープ!」
「了解なのさ!」
ナターシャが杖を構える。
「黒ノ二式・エスケープ!」
光が——私たちを包んだ。
◆ ◆ ◆
鉱山の入り口。
昼過ぎ。
「……」
全員が——黙り込んでいる。
私は告げた。
「今日はここまで」
「一旦、武蔵御殿へ帰還します」
「作戦を考え直しましょう」
「わかったのさ、ミサカ」
ナターシャが肩をすくめた。
一同は、飛行ドローンに乗り込む。
武蔵御殿へ——
静かに、帰還した。
続く




