第20話 ウェスタル鉱山IV
王国歴300年4月5日——
ウェスタル鉱山。
私たちは一層、二層を抜け——
第三層・大広間に到着した。
「!」
私は立ち止まる。
大広間の中央に——
オーガが二匹、徘徊していた。
「昨日、全滅させたはずなのじゃ……」
カルラが首を傾げる。
ナターシャが眉をひそめた。
「やはり、下層より来ているのさ」
私は草薙の剣を抜く。
「私が駆逐してきます」
「黒ノ五式・エア!」
加速。
一体目のオーガへ。
スッ!
首が飛ぶ。
二体目へ。
ズバッ!
胴を両断。
二体のオーガが——
崩れ落ちた。
静寂。
◆ ◆ ◆
私は剣を鞘に収める。
ナターシャが近づいてきた。
「相変わらず速いね、ミサカ」
微笑む。
そして——
「昨日はぐっすり寝たのさ」
プラチナ色の髪をかき上げる。
「今日は気分が良いのさ」
「あたしも良く寝たよ」
ヴィヴィが笑顔で言う。
「今日も元気だよ」
盾を軽く叩いた。
カルラが胸を張る。
「昨日は腹一杯食べたのじゃ」
「いつでもいけるのじゃ」
角がぴょこんと動く。
「よくねたにゃ」
ミケケの尻尾が揺れる。
「魔力もたっぷりにゃ」
私は——微笑んだ。
「みんな、万全みたいね」
私はみんなを見つめる。
「では、四層へ行きます」
全員が頷いた。
◆ ◆ ◆
大広間の奥。
暗闇の中に——
四層へ続く道が続いていた。
入り口は——下層から破壊されたような跡が残っていた。
四層へと続く下り坂。
黒鉄鉱交じりの荒い斜面が続いている。
「行くよ」
ヴィヴィが一歩、踏み出す。
私たちは——
斜面を慎重に降り始めた。
コツ、コツ、コツ……
足音だけが響く。
長い下り坂。
どこまでも続いているように感じる。
「深いのじゃ……」
カルラが呟く。
「こんなに深い鉱山は初めてにゃ」
ミケケの耳が伏せている。
不安そうだ。
ナターシャが前を見つめる。
「もうすぐさね」
空気が——変わった。
生暖かい。
そして——
傾斜が終わった。
第四層。
斜面を降りきると——
一本道が続いていた。
両側には地下水脈が流れている。
チョロチョロチョロ……
水音が静かに響く。
「水脈さね……」
ナターシャが呟く。
「こんな深い場所に……」
ミケケの耳が動く。
「猫耳族が爪を立てる前の静けさにゃ……」
「落ちないように気をつけるのさ、ヴィヴィ」
ナターシャはヴィヴィの手をつかんだ。
「ありがとう、姐さん」
ヴィヴィは微笑む。
私もカルラの手をつなぐ。
「お姉さまが手を繋いでくれたのじゃ」
カルラの角がぷるぷる震える。
私たちは慎重に進んだ。
水脈は——前方へ続いている。
そして——
一本道の先に大空洞が見える。
◆ ◆ ◆
大空洞前。
ドクン、ドクン、ドクン……
心音に似た音が聞こえる。
「ァああヴゥぅゥゥ……」
呻き声とも喘ぎ声とも似て異なる声が聞こえる。
サークルライトが大空洞を照らし始める。
そこには——
「!?」
巨大な内臓色の塊が大空洞いっぱいに張り付いていた。
脈打っている。
ドクン、ドクン。
塊の割れ目から、何かが生まれている。
「ァああヴゥぅゥゥ……」
ゴボッ
粘液にまみれたオーガが割れ目より産み落とされた。
「!」
続く




