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アポカリプス

作者: さゆ

ヨハネの黙示録を題材にしたアクション小説です!

第1章 戦争と支配


静寂が、遠くで響く銃声に切り裂かれた。埃にまみれた廃墟の中で、男は一人立っていた。コードネーム「戦争」。特殊部隊「四騎士」の元リーダーであり、かつては無敵と呼ばれた男だ。


彼の目の前には、かつての仲間であり、今は敵となった「支配」が立っている。二人の間に流れる重苦しい沈黙。それを破ったのは、「支配」の冷笑だった。


「お前はまだ理想に縋っているのか?戦争の英雄として人々を救えると信じているのか?」


「支配」の言葉は鋭い刃のようだったが、「戦争」は眉一つ動かさなかった。


「理想を捨てたお前にはわからないだろうな。だが俺は、父の教えを守るために戦い続ける」


10年前――


父は英雄だった。軍人として数々の戦場を駆け抜け、その名を轟かせた。少年だった彼にとって、父は誇りであり、目標だった。しかし、ある日帰らぬ人となった父の遺品から、一枚の写真を見つけた。


それは父が戦地で救った子供たちと共に微笑む写真だった。背後には焼け野原が広がり、戦争の悲惨さが刻まれていたが、その中で父の瞳は決して消えない光を宿していた。


「戦争は人を壊す。だが、それでも守れるものがある」


父の遺言が、彼を戦場へと駆り立てた。英雄の名を継ぎ、戦争の悲劇を終わらせるために。


だが、特殊部隊に入った彼は、そこで“あの事件”を目撃することになる。


現在――


「お前の信念がどれだけの命を奪ったか、考えたことはあるか?」


「支配」の言葉に、「戦争」は一瞬顔を歪めた。だが次の瞬間、彼は銃を構えた。


「俺が背負うのは、犠牲になった全ての命だ。お前のように逃げることはしない」


その時だった。廃墟の奥から、低い声が響いた。


「懐かしいな。こんなところで再会するなんてな」


二人が声の方向を見ると、そこには「飢餓」の姿があった。痩せた身体に黒い装備を纏い、その手にはナイフが握られている。


「“死”も来ている。お前らが揃うとろくなことがない」


「飢餓」の声は皮肉に満ちていたが、その眼光は冷たく鋭かった。


「死が?」


「戦争」は眉をひそめた。もし「死」がこの場にいるならば、事態はさらに複雑になる。彼は仲間の背後に隠された真実を知っている。そして、それが再び彼らの運命を狂わせることも。


「俺たち四人が揃うとき、それが世界の終わりだって言われていたよな」


「飢餓」は苦笑を浮かべ、ナイフを手の中で回した。


「その言葉が正しかったかどうか、試してみるか?」


「戦争」と「支配」は互いに視線を交わしながら、銃と策を手に取り再び戦闘態勢を整える。そして、遠くから聞こえる足音。


「死」が近づいてくる。


――戦いの舞台は、再び動き出す。それぞれの信念、憎悪、そして隠された真実が、四騎士を終末へと導いていく。


第2章 四騎士の再会


廃墟の中、冷たい風が吹き抜ける。銃声は一瞬の静寂を破り、戦いを再開させたかのようだった。だが、それ以上に緊張感を生むのは、四人目の足音の主。「死」が現れる気配だ。


「飢餓」、そして「支配」。視線を交わす「戦争」は、今この場が単なる偶然ではないことを理解していた。誰かがこの場を用意した――おそらく「死」だ。


「飢餓」の過去


「飢餓」がナイフを構えたまま笑みを浮かべた。


「お前ら、まだそんなに真面目に戦争ごっこをしているとはな。俺はもう飢えに苦しむのはごめんだ」


「戦争」は、過去を思い出した。特殊部隊の訓練中、「飢餓」がしばしば口にしていた言葉。


「人間は、何よりも食べ物を欲する。正義や信念なんて、腹が減れば全部無意味になるんだよ」


彼の言葉は、過去の壮絶な飢えの中で培われた信念だった。彼は幼少期、戦場の難民キャンプで家族を失い、飢餓と絶望の中で生き延びた。その経験が「飢餓」を作り上げたのだ。


だが、「飢餓」はただ生き残るために戦うのではなかった。彼はより大きな目標を持つようになった。それは、「支配」が築き上げようとする新世界秩序を壊すこと。


「死」の到着


遠くから足音が徐々に近づく。足音が止まった瞬間、影のように現れたのは「死」だった。彼の瞳は深い闇を宿し、どこか哀しみに満ちている。


「まだ争っているのか。くだらないな」


その声には、冷たさと諦めが混じっていた。「死」はかつて、特殊部隊の中で最も冷静で冷酷な存在だった。だが、その冷酷さの裏には、深い喪失感が隠されている。


「死」の過去


「戦争」は、「死」との過去の任務を思い出した。一人の女性。彼が愛していた人。だがその女性は、部隊の任務中に命を落とした。


「死」がその日以来、感情を押し殺し、敵を排除するだけの存在となったのは明らかだった。彼にとって、死は解放であり、安らぎだった。


だが、その「死」が今ここにいるということは、彼にもまた目的があるということだ。


対立の激化


「死」は静かに場を見渡し、呟いた。


「四人揃ったな。終末を迎える準備はできたか?」


「支配」は冷笑しながら答えた。


「終末かどうかは、俺たち次第だ。だが、俺の計画を邪魔するなら、容赦はしない」


「飢餓」がナイフを回しながら笑った。


「計画、ね。その計画にどれだけの人間が飢え死にするか、考えたことはあるか?」


「戦争」は銃を構えながら、冷静に二人のやり取りを見ていた。この状況で最も危険なのは、「死」の意図だった。


「死」は微笑みを浮かべたまま、手を広げた。


「どちらにせよ、全てが死に還る。それが俺の役目だ」



第3章 終末の序曲


四騎士が揃った瞬間、廃墟を包む空気が変わった。四人の視線が交錯し、それぞれの思惑が隠されていることを誰もが感じ取っていた。だが、彼らの意識を引き裂くように、地面が微かに震えた。


「これは……?」


「支配」が地面の揺れに気づき、周囲を見渡す。その時、廃墟の奥深くから巨大なモニターが浮かび上がった。そこに映し出されたのは、彼らをかつて特殊部隊として集めた「プロジェクト・アポカリプス」の真の目的だった。

モニターに映るのは、一人の科学者だった。声は平坦で感情を欠いていたが、その内容は四騎士を震撼させた。


「ようこそ、四騎士の皆さん。あなたたちの存在そのものが、世界の終焉を意味します。そして、それは計画されたものです」


科学者は続けた。四人が選ばれた理由は、彼らの過去と信念、そしてそれぞれが抱える絶望が、特定の条件を満たしていたからだという。


「戦争」:戦争を終わらせるという理想が皮肉にもさらなる戦乱を引き起こす鍵となる。


「支配」:世界を完全に支配しようとするその野心が、崩壊の引き金となる。


「飢餓」:飢餓を終わらせるための行動が、資源を奪い合う争いを激化させる。


「死」:すべての命を平等に「死」へ導こうとするその冷酷な信念が、全てを滅ぼす象徴となる。



「あなたたちが揃うことで、世界は滅びます。そして、その滅びが新たな世界の創造を可能にするのです。あなたたちは“終末”の具現化そのものです」


四人の顔に、驚愕と怒りが入り混じった表情が浮かぶ。「戦争」は拳を握りしめ、叫んだ。


「俺たちを駒として使い、世界を滅ぼそうというのか!」


「その通りだ」と科学者は冷たく言い放つ。「だが、選択肢は君たちに委ねる。君たちが戦い続ければ、滅びの連鎖が続く。それを止めたいのなら……全員が死ぬしかない」



四人の間に再び沈黙が訪れる。だが、その静寂はすぐに「支配」の冷たい声によって破られた。


「世界が滅びようが関係ない。この混沌を統制できるのは俺だけだ」


「飢餓」は笑い声を上げた。


「統制?お前が支配する世界なんて誰が望む?俺たちはただ、奪い合うだけだ」


「戦争」は銃を構え、二人を睨みつける。


「俺の理想を貶めるなら、容赦はしない。だが……もしお前らを止めることで世界が救えるなら、俺はその道を選ぶ」


その時、「死」が静かに歩み出た。その目には、まるで全てを諦めたような虚無感が漂っていた。


「どちらにせよ、全てが死に帰る。それが自然の摂理だ。だが、お前らが望むなら、俺はその終わりを加速させてやる」





最終章 滅びの舞台


四人が向き合うその場が、突如として不気味な振動に包まれる。モニターに映る科学者の顔が歪み、警告音が鳴り響いた。


「選択は、すでに始まっているようだな……」科学者の声がノイズ混じりに響き渡る。「最初の試練を突破できなければ、何も変えられない。」


その言葉を合図に、周囲の壁が機械仕掛けの音を立てて開き、無数の機械兵が現れた。赤く輝く目が四人をロックオンし、一斉に武器を構える。


「来やがったな……」

「戦争」は銃を握り直し、唇を噛んだ。その目には燃え上がるような闘志が宿る。


「見せてやるよ、俺たちの戦い方を!」


嵐のような交戦


最初に動いたのは「支配」だった。彼が振り上げた手から放たれる黒いオーラが機械兵たちを絡め取る。空中で止まった兵士たちが次々と爆発し、火花が四方に散る。


「俺がこの混沌を導く!」


「飢餓」はニヤリと笑い、瞬く間に姿を消す。その影が敵陣を駆け抜けたかと思うと、機械兵の部品が次々と切り刻まれて地面に落ちた。


「お前ら、動きが鈍いぜ。もっと俺を楽しませろ!」


「戦争」は戦場の中心に突進し、銃弾を雨のように撒き散らす。撃ち抜かれた機械兵が次々と倒れる中、彼の怒号が響き渡る。


「俺の戦いは、無駄にはしない!」


その後ろから「死」が静かに進む。彼が放つ漆黒の気配に触れた機械兵たちは、一瞬の間に動きを止め、崩れ落ちる。


「死からは逃れられない……すべての命が辿り着く場所だ」


連携の覚醒


敵が波のように押し寄せる中、四人は互いの能力を補完し合い、完璧な連携を見せ始めた。「戦争」が正面で敵の動きを引きつけ、「飢餓」がその隙に敵の後方を崩壊させる。「支配」が戦場を制御し、「死」がとどめを刺す。


彼らが共闘することで、圧倒的な戦力差を覆していく様は、まるで嵐の中に静けさが宿るようだった。


「これが、俺たちの力だ!」

「戦争」の叫びと共に、最後の機械兵が爆発音とともに地面に崩れ落ちた。


次の試練への扉


全てが静寂に包まれる。煙の向こうに現れたのは、巨大な扉。そこには異様な光を放つ紋章が刻まれていた。


「次は何だ……?」

「支配」が一歩前に進み、扉を見上げる。その冷徹な瞳にも、わずかな緊張が走る。


「行くしかないだろう。俺たちの運命を確かめるためにな」

「戦争」が銃を肩に担ぎ、先頭を切るように歩き出した。


四人の影が光の中に消えていく。その背後には、彼らが打ち破った戦場が静かに広がっていた――滅びと創造の狭間で、運命の歯車が音を立てて動き始める。


扉を抜けた先には、禍々しい光を放つ巨大な装置と、その前に立つ科学者がいた。彼の背後には無数のケーブルが絡み合い、装置が異常な唸りを上げている。


「お前がすべての元凶か!」

「戦争」が銃を向けるが、科学者は薄笑いを浮かべたまま動じない。


「元凶だと?違うな、私は創造主だ。これが『プロジェクト・アポカリプス』、人類をリセットし新たな世界を生むための装置だ」


「リセットだと!?」

「飢餓」が歯をむき出しにして叫ぶ。


「この腐った世界を終わらせる。それが唯一の希望だ」と科学者は冷たく言い放つ。「ただし、お前たち四人の力を一点に収束しなければ、このプロジェクトは完成しない」


科学者が装置に手を伸ばした瞬間、「死」が一歩前に出た。その瞳には深い覚悟が宿っていた。


「その必要はない。俺たちは最初から分かっていた。四騎士の存在理由を……そして、この結末を」


四騎士、真実を語る


「死」がゆっくりと振り返り、「戦争」の目を真っ直ぐ見据える。


「お前が信じていた理想、その本当の価値を試す時だ。俺たち三人が残れば、滅びは避けられない。だが、お前一人なら……希望は繋がる」


「飢餓」が不敵な笑みを浮かべる。


「奪い合いなんてもういい。俺が見たのは、餓えた者たちの救済じゃない。お前の中にある純粋な力だ、それを信じるぜ、弟よ」


「支配」が静かに口を開く。


「支配とは孤独だ。俺はその道を選んだけど、お前には違う未来がある。お前なら、世界を変えられる」


「戦争」は驚愕の表情で三人を見回す。


「待て!そんなの納得できない……!」


「死」が微笑み、軽く肩を叩いた。


「心配するな。お前の信念は、俺たちが見届けている。だから行け、『戦争』……お前だけが、この結末を超えられる」


三人が「戦争」に背を向け、科学者に向かう。その背中に、彼の目には涙が浮かんだ。


「兄さんたち……!」


最後の戦い


「飢餓」が高速で科学者に突進し、その刃が火花を散らす。だが科学者は装置の力を借り、黒いエネルギーの盾でそれを弾く。


「やるじゃねぇか!」


続けて「支配」が手をかざし、科学者を空中に固定する。


「動けるうちに試してみろ。私が抑えているうちに」


「死」が冷静に歩み寄り、黒いオーラをまといながら科学者に向かう。


「お前の命も、死の一部に過ぎない」


科学者が激しく抵抗し、装置が暴走を始める。だが三人は限界を超えた力を引き出し、装置を停止させる寸前まで追い詰めた。


「これで終わりだ!」


「戦争」が駆け寄り、兄たちの力を受け取るように叫ぶ。三人の身体が光に包まれ、その力が「戦争」に収束する。


「頼んだぞ、弟よ……!」


決着


科学者と「戦争」が激突する。銃弾とエネルギーが交錯し、空間が歪む中、最後の一撃が科学者を貫いた。


「これが俺の戦いだ!」


科学者が崩れ落ち、装置も停止する。四騎士の名のもと、滅びではなく希望の光が世界に差し込んだ。


エピローグ


瓦礫の中、「戦争」は青空を見上げる。兄たちの言葉が心に響く中、彼は静かに立ち上がった。


「俺が守るよ、兄さんたちの願いを……そして、この世界を」


平和の兆しが見える中、彼は新たな道を歩き始めた彼一人の「戦い」として。








「戦争」はその後幸せな家庭を持ち世界を救った英雄として後世に語り継ぐだろう…

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― 新着の感想 ―
とても面白く文章も読みやすかったです。これからも作品を楽しみにしてます。
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