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巫女と悪魔が交わした約束  作者: 水地翼
第6章:ミズキ前編〜孤独と秘密と本気の恋〜
55/101

55.友達以上


 あれから俺たちは、ファミレス経由の居酒屋コースが復活した。


「それで母さんに一目惚れした父さんが、毎日のように家の隣の公園に通ってずっと見てたらしい」

「すごい! 純愛だね!」

「いや、不審者でしょ。そこからどう転んだら結婚まで行くわけって思わない?」


 俺たちは流れで自分の両親の馴れ初めを語り合っていた。


「ご両親、仲がいいんだね!」

「未だに熱愛中だから」

「そっか! だからミズキくんも情熱的なんだね?」

「それもう恥ずかしいから止めてくんない?」


 特にぎこちない様子もなく、普通に会話できている。

 ただ、ちょっといじられ気味かもしれない。

 これが惚れた弱みってやつ?


「ねぇ、恥ずかしついでにデートしよ?」


 もうこうなったらヤケだ。

 それに俺たちはデートというものをした事がなかったから。


「いいね〜! どこ行く?」


 サユリは俺の提案に乗ってくれた。


「行きたいところある?」

「いっぱいあるけど初デートだからなぁ〜後でメッセージで送ってもいい?」

「うん。わかった」


 こうしてデートの約束を取りつけた。



 そこそこの時間で店を出て、駅までサユリを送ることにした。


「ミズキくん、超紳士だね!」

「当たり前でしょ」


 俺はサユリに手を差し出した。

 サユリは俺の手と顔を何往復か見比べた後、笑顔でこの手を取ってくれた。




 その日の夜、サユリからデートの行き先についてのメッセージが来た。


 "ハイキングに行きたい!"

 そう書いてあった。


 


 次の休日、俺たちはハイキングコースの入口に立っていた。

 季節は春。天気は快晴。絶好のハイキング日和だ。

 

 サユリは黒のレギンスに黒のショートパンツ、上着は蛍光ピンクとネイビーのバイカラーの薄手のものを羽織っていた。

 立ち姿からしてベテラン勢の雰囲気が漂っている。


 一方、俺はハイキングなんていつぶりだろう。

 たぶん、最後は中学生?

 まぁ、ここは子供でも登れるみたいだから大丈夫でしょ。

 さっきから俺たちの横を、幼稚園児位の子どもを連れた家族が何組か通り過ぎている。

 しかし後に、この子たちはコースの序盤にあるアスレチックに向かっただけだと気付くことになる。



「じゃあ、行こー!」


 サユリの掛け声を合図に俺たちは歩き出した。



「修学旅行の時、飯盒炊爨(はんごうすいさん)でカレーを作ることになったんだけど、私がお肉を包丁の背で叩いてたらさ〜トンカツじゃないんだから!って言われちゃって〜」

「薄い肉には⋯⋯要らないかもね⋯⋯」


「バーベキューの時は焼きマシュマロ作ろうと思って、マシュマロを一袋持って行ったんだけど、クラスで私しか持ってきてなくて、みんなが欲しがったから、私はひと粒しか食べれなかったの! 家に帰ってリベンジで、コンロで焼こうとしたら、めっちゃくちゃお母さんに怒られた!」

「焦がしたら⋯⋯危ないから⋯⋯」


 なに、この子⋯⋯どんな肺活量してんの?

 サユリは坂道を登りながらずっとこの調子で、休むことなく話し続けている。

 対して俺は、歩く速度にはついて行けているものの、相槌を打つのにも休み休みだ。


 いやいや、ダサすぎでしょ。

 これ以上カッコ悪い所を見せたくなくて、俺は必死にサユリについて行った。



「ついた! 最高〜!」


 サユリは笑顔で両手を広げて深呼吸している。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 俺は息を整えるのに精一杯だ。

 

 俺たちは、今日のコースの見所のひとつ、滝まで辿りついた。

 滝の目の前に並ぶベンチに二人で腰かける。


 はぁ〜きつかった。

 けどなんか、いい汗かいたかも。


 落差約30メートルの滝が流れ落ちる姿は、迫力があると同時に爽快に感じた。

 たぶんマイナスイオンが出てるんだろうな。

 こうやって見ると森の緑ってきれいだし、癒される。

  

 そのままぼーっとしていると、いつの間にかサユリが俺を見ていた。


「その表情は⋯⋯意外と最高な感じ?」


 サユリは笑顔で聞いてきた。


「うん。意外と最高な感じ」


 俺もつられて自然と笑顔になった。


 それからしばらく滝を見ながら休憩して、近くにあった屋台で食べ物を買った。


「それ、野生の人が食べるやつじゃん」


 サユリが買ったのは串に刺さった魚の丸焼きだった。


「今の私たちは野生の人だからね!」


 サユリは俺にも一本分けてくれた。

 思いきってかぶりついてみると、想像以上に美味しかった。

 疲れた身体はタンパク質とこういう塩味を欲していたみたいだ。

 それに、目の前の光景ともマッチして雰囲気も出てるし、悪くないや。


 その後、お団子を食べたり水を飲んだり、たっぷり休憩したあと、再び歩き出した。


 今度はゆっくりと会話しながら。


 

「今のリスじゃない!?」

「え? どこ?」

「ほらほら! そこ! 揺れてる!」

「⋯⋯まじのやつだ」


「ミズキくん! そこ! 虫!」

「げっ! 顔に当たるところだった。ありがとう」

「いえいえ!」

「ねぇ、あんな高いところからぶら下がってんの?」


 そうこうしている内に展望台に辿りついた。



「いい眺め〜! 最高〜!」


 サユリは笑顔で両手を空に向かって伸ばしている。

 

「ほんと。最高」


 展望台からは360°見渡す限り青い空が、遠くの山が、街並みがよく見渡せた。

 熱くなった身体にあたる風が心地いい。


「ねぇ、あっちで写真撮ろう?」


 サユリは俺の手を引いてフォトスポットまで移動した。

 

 近くにいたカップルにお願いして、ツーショットを撮ってもらう。

 

「うん! いい感じ! ミズキくん、いい顔してるね!」


 満面の笑みを浮かべるサユリのスマホを覗き込むと、 写真の中の俺は自分でも信じられないくらい、満足そうな顔をしていた。


「どう? また一緒に来てくれる?」


 サユリは俺の腕に自分の肩を軽くぶつけてきた。


「うん。サユリちゃんと一緒ならね」


 俺はお返しに、サユリの肩に自分の腕を軽くぶつけた。


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