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巫女と悪魔が交わした約束  作者: 水地翼
第5章:サクラ編〜悩める巫女と静かな愛〜
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46.第5章 エピローグ


 あれからしばらくして、私はアカマツ病院を退職し、実家を出た。

 今はとある田舎町でリラクゼーションサロンを開き、トウキと二人で経営している。

 表向きは私たち二人は夫婦だ。



 二人で生活をしながら、力を守る方法について、試行錯誤してきた。

 残念ながら私の結界とトウキのオオカミは相性が良いものではなさそうだった。

 なぜなら、私の結界の能力は結界の内側にいないとその恩恵を受けることができない。

 だから近接攻撃を行うオオカミでは保護と回復はもちろん、力の増幅もされないのが難点だった。

 

 それでも私たちは協力してこの力を守らなくてはいけない。

 現在は、悪魔姿のトウキが威圧の能力を使うのが最適という結論に至っているものの、せっかくの変化の能力を上手く活用できないか模索中だ。


 私たちは力の守り方を決めてから、力の使い方を決めるということを徹底している。




「いや〜トウキくんのマッサージを受けるようになってから、胃腸の調子まで良くなってね〜」


 このお客さんは毎週のように、お店に通ってくれている。

 もともとは肩こりと疲れがひどいと言ってここに来られたけど、消化不良を繰り返していたのも良くなったと喜んでくれている。

 それは、私がお客さんにこっそりと回復の力を使っているからだ。



 お客さんが来られたら、まずは症状を聞き取り、それにあったアロマを焚きながら、マッサージを受けてもらう。

 そして、眠りについたお客さんには回復の力を使う。


 他にも、足のむくみが気になるお客さんが頭痛も治ったと喜んでくれたり、夜眠れないお客さんが関節の動きが良くなったと言ってくれている。


 ちょっとしたご利益程度の範囲だから、お客さんにもありがたがってもらえるし、自分たちに危険が及ぶ可能性は低いと思っている。


 本当はもっと重い病気の治療にも力を使うべきかもしれない。

 けれども私たちは話し合った結果、まずはここから始めようと言うことになった。


 

 もともとは、もみほぐしも私がやっていたのだけど、力仕事だからと今はトウキが代わってくれている。


「ありがとうね〜」


 お客さんは笑顔で帰って行った。

 私はこの笑顔を見るのが好きだ。



「サクラ、片付けは俺がやるから。座っていないと」


 トウキは私の肩に手を置いて、椅子に座らせてくれた。


「ありがとう」


 今、私のお腹の中には新しい命が宿っている。

 人間の姿のトウキとの間に授かった子だ。

 妊婦健診でも今のところは異常は見当たらず、見た目は人間の胎児らしかった。



 悪魔との共同生活は難しいこともある。

 文化の違いや考え方の違い、まだまだ人間の世界のことだって知らないことも多い。

 

 それに、私たちの子どもにはどんな力が引き継がれるのか、トウキの正体をいつ伝えたらいいのか⋯⋯⋯⋯

 考えないといけないことはたくさんある。

 それでも今の暮らしは、誰に命令されたわけでもなく、二人で選択した結果だ。


 

 

 

 それから1か月後


「サクラ。完成したから見に来てくれ」


 トウキに呼ばれた私は庭に出た。


「すごい! きれい!」


 トウキはここに引っ越して来てから、ガーデニングの趣味を始めた。

 毎日花の世話をして、休日にはコツコツと植え替え作業をし、花壇を飾っていた。

 完成した花壇には色とりどりの花が植えられている。


 庭の端にはオリーブの木が植えられていた。

 "平和"や"夫婦円満"を象徴すると言われているからと、この木選んだそうだ。



「俺からサクラへの贈り物だ。全てサクラのものだ」


 トウキは優しい目で私を見つめていた。


「ありがとう。ずっと宝物にする」


 いつか私がこの世界からいなくなっても、きっとトウキはこの庭を手入れしてくれるだろう。

 いつまでもきれいに咲いていて欲しい。実っていて欲しい。



「俺が必ず守るから」


 トウキは私を後ろから抱きしめて、お腹に優しく手を当てた。

 私はその温かい手に自分の手を重ねた。


「ありがとう。ずっと守って。この子のことも、そのずっと先に生まれてくるみんなの事も」


 トウキは静かにうなづいてくれた。

 


 二人一緒なら、なんだって乗り越えられる。

 この悪魔になら、全てを任せられる。

 私は頼もしいその腕に身を預け、静かに目を閉じた。




 【サクラ編完結】

 


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